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Highlighting JAPAN

ふるさとへの応援

長崎県平戸市は、ふるさと納税による寄附額が多い自治体の一つである。

ふるさと納税は、2008年4月から開始された地方自治体への寄附金制度で、都市部と地方自治体の財政構造格差を是正するために創設された。人口が少なく企業誘致も難しい地方自治体では、財政的な厳しさを抱えている。ふるさと納税では、それぞれ個人が支援したい自治体を自由に選び寄附(納税)することができ、納税者には寄附額から2,000円を差し引いた全額を税額控除するという制度である。ふるさと納税を行った人は、その年の所得税の控除に加え、その人が現在住む自治体に払う翌年度の住民税の減額を受けることもできる。日本ではお世話になった人に対して、お礼の品を贈る風習があるが、ふるさと納税でも、寄付した納税者に対して、自治体から、地元の特産品などの返礼品が贈られる場合もある。また、2016年4月からは企業によるふるさと納税も開始された。

このふるさと納税の寄附額が急増して脚光を浴びているのが、九州・長崎県の北西部に位置する平戸市である。平戸市は、今から450年ほど前に日本で初めてキリスト教を布教したフランシスコ・ザビエルが拠点とした地であり、16〜17世紀には南蛮貿易で栄えたことで有名である。自然が豊かで、農業と漁業が主要産業であり、人口は2017年1月時点で約3万3000人、他の多くの地方自治体と同様に、高齢化と過疎化が進んでいる。

平戸市のふるさと納税の寄附額が急増する要因となったのは、2013年から市が全国に先駆けて導入した「カタログギフト形式」と「ポイント制度」である。納税者には、1万円以上で4,000ポイント、2万円以上で8,000ポイントというように、寄附額に応じてポイントが無期限で付与される。納税者は各自が保有するポイントの範囲内で、カタログに掲載された様々な返礼品の中から好きな物を選んで送付してもらえるのである。ポイントには有効期限はないので翌年度以降に持ち越すこともできる。また、寄付は年内に何度でも可能なので、納税を繰り返して、ポイントを加算することもできる。

市は返礼品の品揃えにも力を入れ、地元の農水産物を様々に組み合わせて、魅力的なカタログを作り上げている。同時にウェブサイトでの返礼品選びやクレジット決済も可能にした。返礼品として人気の高いのは、4000ポイントで贈られる「魚の干物の詰め合わせ」である。「平戸和牛のサーロインステーキ」、「生の地魚詰め合わせ」なども人気がある。

こうした独自の取り組みは大きな反響を呼んでマスコミでもさかんに取り上げられ、2014年度(2014年4月〜2015年3月)の平戸市への寄附額は約14億6000万円と全国1位に急浮上した。さらに2015年度には約26億円にまで達し、市税収入の約28億円に迫るまでになった。寄附件数も約4万6700件と、市民総数を大きく上回る結果となった。

「2016年からは寄附金の活用を本格的に始めました。人材の育成、観光&産業の振興、魅力的な町づくりを3つの柱に据え、ローカル線用バスの購入、情報教育の環境整備、宿泊施設のバリアフリー化、創業支援をはじめ、様々な活用事業を行っています」と平戸市財務部の松瀬一博氏は語る。「直接、市庁舎まで来られて、寄付をする方もいらっしゃいます。寄付をされる方には、本当に感謝しています」

ふるさと納税に対する国民の関心は非常に高まっており、全自治体への寄附総額は2015年度には約1,653億円と対前年比約4.3倍にまで急増した。また、寄附件数も約726万件(同約3.8倍)に達している。これは、各自治体が返礼品の種類を多くしたこと、ふるさと納税を紹介する民間企業のポータルサイトが増加したことなどが要因である。最近は、自然保護、福祉、災害からの復興など、寄付金の使い方を特定した事業に対するふるさと納税も増えている。

「ふるさと納税を通して平戸市に興味を持って頂いた方々に、是非、平戸を観光にいらして頂きたいです」と松瀬氏は語る。「そうした方々に、平戸を好きになっていただき、平戸へと移住する人を少しでも増やしていきたいです」