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Highlighting JAPAN

21世紀の万国津梁

沖縄県は国際的な物流ハブとしての機能を再び構築しつつある。

日本の都道府県の中で、もっとも南に位置し、大小160の島々からなる沖縄県は、15世紀から19世紀まで琉球王国という独立国であった。琉球王国は、日本、中国、朝鮮、東南アジアなどの周辺諸国と中継貿易を行い、「万国津梁」(世界の架け橋)としての役割を担い、栄えていた。

こうした歴史を持つ沖縄県が近年、国際的な物流のハブとして発展しつつある。その中心となっているのが、沖縄県最大の島である沖縄本島にある那覇空港である。那覇空港の2008年の国際貨物取扱量は約1800トンであったが、2015年には18万トンと、100倍に増えた。これは、成田空港、関西国際空港、羽田空港に次ぐ、全国4位である。

「東アジアの経済成長にともない、この地域の物流が非常に活発化しています」と沖縄県アジア経済戦略課の本永哲氏は言う。「沖縄は東アジアの中心に位置するという大きな地理的優位性があります。東京、ソウル、台北、香港、上海など東アジアの主要都市に、4時間以内で行くことができます」

那覇空港の国際貨物取扱量が増えた大きなきっかけは、2009年に全日本空輸(ANA)が、那覇空港を起点(ハブ)として、日本とアジアの主要都市を結ぶ貨物便ネットワークを構築したことである。ANAは、那覇空港敷地内に建設した「那覇空港貨物ターミナル」において、貨物の荷下ろし、積荷、通関を行っている。ANAは、貨物専用機と旅客機を使い、国内から集めた貨物を沖縄に集め、上海、香港、バンコク、シンガポールなどアジアの主要都市へ運んでいる。また、それらのアジアからの輸入貨物も沖縄に集められ、日本各地に輸送される。国内でも数少ない24時間空港である那覇空港では、24時間通関手続きが可能な体制を整えたため、リードタイムを大幅に短縮することができる。例えば、21時頃、東京や大阪など各地を出発した貨物は、深夜0時頃に那覇空港に到着、4時間程で貨物の積み替えや通関を済ませ、5時頃に沖縄を出発し、翌朝にはアジアの各主要都市に届く。つまり、日本から1日でアジア各都市に荷物を運べるのだ。

「リードタイムの短縮は、日本産品の輸出可能性を大きく広げます」と本永氏は言う。「日本の野菜、果物、水産物を、より新鮮な状態で、アジアの各都市に届けることができ、ビジネスチャンスが広がっています」

例えば、那覇空港を経由して輸出されるイチゴの量は、2013年度の約1トンから2014年度には16トンへ急増した。各都道府県も那覇空港経由の農水産品の輸出に力を入れている。青森県は、大手運送会社のヤマト運輸と協力のもと、国際物流ハブを活用した流通サービスを構築し、香港などアジア向けに生鮮品を輸出している。特に、鮮魚や活ホタテは、香港の高級日本食レストランチェーンから鮮度や美味しさを高く評価されている。

沖縄県では、国際物流ハブの活用を促すため、コンテナ費用を助成するなどの支援を実施しており、その結果として、全国の特産品に加えて、沖縄産の豆腐、かまぼこなどの加工食品、紅芋、トマトなどの青果のほか、牛肉、マグロなどの輸出量が増加している。

また、日本全国の特産品の海外販路拡大のために、国内最大級の事前マッチング型国際食品商談会「沖縄大交易会」を開催している。2016年11月に開催された第4回目の交易会には、農林水産物・食品加工業者などのサプライヤーが約260社、国内外のバイヤーが15の国・地域から200社集まり、活発な商談が行われた。

農水産品以外にも、沖縄国際物流ハブを活用する企業も増えている。例えば、大手電機メーカーの東芝は東アジアに点在していた保守部品や消耗品の在庫拠点を、那覇空港に隣接する「国際ロジスティックセンター」に集約した。東アジアからの注文を沖縄で受け、発送することで、リードタイムの短縮や在庫の一元管理によるコスト削減につなげている。

沖縄県は今後も、国際物流ハブとしての機能強化を進めていく予定である。那覇空港では2020年度の完成を目指し、第二滑走路が建設中である。また、那覇空港に隣接する那覇港においても、海上物流の拠点として、国内外から発着する貨物の仕分けや流通、加工が可能な高機能物流支援施設「那覇港総合物流センター」が2018年度に完成予定である。これにより、海上輸送と航空輸送が連結した「シー・アンド・エアー」の実現が期待されている。

「東アジアの経済は、さらなる成長が期待されます」と本永氏は言う。「沖縄県は、東アジアの主要都市を結ぶ『リージョナル・ハブ』としての役割を果たすことで、成長著しい東アジア経済の活力を取り込み、アジア各国と共に発展していくことを目指します」