Home > Highlighting JAPAN > Highlighting Japan April 2017 > 日本の鉄道力

Highlighting JAPAN

東京都と名古屋市を40分で結ぶ超電導リニア

超電導リニアの時代が間もなくやってくる。

東京・大阪間の東海道新幹線が開業して50年以上が経っているが、2014年からは東京・名古屋・大阪間を結ぶ超電導リニアによる中央新幹線の建設が始まっている。東海道新幹線は太平洋岸に沿って建設されたが、中央新幹線は3都市を極力短距離で結ぶために、本州の内陸部を通るルートとなっている。

超電導リニアは、車両に搭載した超電導磁石と地上に取り付けられたコイルの間に発生する磁力によって、車両を約10cm浮上させ、走行させる仕組みとなっている。従来の鉄道のように車輪とレールの間の摩擦が生じないので、超高速での走行が可能になる。営業速度は時速500km。最速で、品川と名古屋の間[線路延長285.6km]を40分で結ぶ。また、東京都と大阪市の間は最速で67分となる予定だ(東海道新幹線の最短所要時間は東京−名古屋間が1時間34分、東京−新大阪間が2時22分)。東海旅客鉄道 (JR東海)は第一段階として建設を進める東京都・名古屋市間の開業を2027年と計画している。

中央新幹線を建設する理由の一つは、日本社会にとって極めて重要な、東京・名古屋・大阪間を結ぶ大動脈の「二重系化」によって、様々なリスクを低減することである。東海道新幹線は開業から50年以上が経過し、将来の経年劣化や大規模災害に対する抜本的な備えが必要となっている。中央新幹線の開通によって、そうした東海道新幹線の改修工事による影響を軽減することが可能になる。また、大動脈の二重系化によって、大地震などの災害リスクにも備えることができる。

さらに、中央新幹線による経済・社会への波及効果も大きいとみられる。東京を中心とする首都圏、名古屋市を中心とする中京圏、大阪市を中心とする近畿圏という日本の三大都市圏が、一つの巨大都市圏を形成する効果を生む。それにより、人々の活動が広域化し、ビジネスの進め方、余暇の過ごし方などライフタイルが大きく変化すると予想されている。

超電導リニアの研究は、1962年に開始され、1977年に宮崎で走行試験が開始された。1997年には山梨県都留市にある走行区間18.4kmの山梨リニア実験線で走行試験が開始された。2013年には走行区間が42.8kmに延伸、将来的にはここは、中央新幹線の一部としてそのまま使用される予定である。現在、山梨リニア実験線では営業線仕様の車両「L0」系の走行試験が行われている。「L0」系は先頭車両の長さが28m、空気抵抗を減らすため15mもの長い「鼻」を持つのが特徴である。2015年には有人走行で鉄道の世界最高速度である時速603kmを記録した。JR東海は今後、中央新幹線品川・名古屋間の開業に向け、既に確立している実用技術について、快適性の向上、保守の効率化等の技術のブラッシュアップに引き続き取り組むこととしている。

山梨リニア実験線沿いにある「山梨県立リニア見学センター」では、超高速で走行する超電導リニアの様子を間近で見ることができる。2003年に当時の世界最高速度、時速581kmを記録した試験車両の実物、超電導リニアの仕組みを学ぶ装置なども展示されている。また、JR東海は2014年から、抽選制で超電導リニアの体験乗車を実施、これまでに5万人以上が時速500km走行を体験している。

現在、アメリカにおいても、日本の超電導リニア技術による高速鉄道の計画が検討されている。超電導リニアは、日本、そして世界の鉄道の未来を大きく変えることが期待される。