Home > Highlighting JAPAN > Highlighting Japan June 2017 > 中小企業の海外展開

Highlighting JAPAN

日東建設株式会社

北海道に拠点を置く革新的なコンクリートテスターの建設会社が海外展開を拡大している。

日東建設は、オホーツク海に面した北海道北部の小さな町、雄武町(人口約4500人)に本社を置く、資本金2000万円、従業員数約60名の建設会社だ。しかし、その社名は、同社が開発したコンクリートテスター(CTS:Concrete Test and Surveyor)という独自の製品を通じて、海外の土木関係者の間に広く知られている。同社がいかにして画期的な製品を生み出し、国内外に販路を広げていったか、代表取締役社長の久保元さんに話を聞いた。

「コンクリートテスターの開発を思い立ったのは1999年のことでした。当時、日本の建設業界は公共事業の縮小で苦境に立たされており、当社のような規模の企業はこのままでは生き残りが難しいとも感じていました。そんな折に発生したのが、山陽新幹線のトンネル内壁からコンクリート塊が落下する事故でした。そのニュース映像を見て、戦後の高度成長期に作られた膨大な数の建物や施設のコンクリートが、近い将来次々と寿命を迎え、補修のための劣化状態を調べる検査装置が必ず必要になると思ったのです」

 日本には大がかりな機械を設置してコンクリート建造物の内部を検査する装置はあったものの、その高価な装置で数多くの建造物を調査するのは時間的にもコスト的にも不可能であった。一方、欧州のメーカーが持ち運び可能な検査器具を販売していたが、劣化したコンクリートの測定精度に問題があった。さらに今も広く使われている打音法は、操作する人の熟練した技術が必要だった。

「これからは誰にでも簡単に扱えて、精度が高く、しかも安価なコンクリート検査装置が必要になる。そうひらめいたのです」と久保社長は語った。

 久保社長は母校東海大学土木工学科の先生方の協力を仰ぎ、新たな検査装置の開発に取り組んだ。着目したのは金属製ハンマーでコンクリートを叩いた時に発生する「打撃力波形」である。精密な測定は技術的に非常に困難だったが、試行錯誤の末、コンクリート表面をハンマーで軽く叩くだけで、内部の強度や表面劣化の具合、さらには表面剥離の度合いまで自動測定できる高精度の装置を完成させることに成功した。

 この新たな検査装置は、2005年4月からコンクリートテスターとして発売された。これは、加速度センサーを内蔵したハンマー部と計測器本体からなり、コンクリートを叩くと1秒以内に数値が本体ディスプレイに表示される。複数箇所を叩いて得られたデータをパソコンに入力し、測定構造物の強度分布を表示することもできるという、従来にはない画期的なコンクリート非破壊検査装置であった。総重量はわずか940gで携行可能で機動力に優れる。

「当初は日本国内だけで販売することを考えていましたが、2011年に英語のホームページを立ち上げたところ、海外から問合せの電話が急増し、対応が大変でした。」と久保社長は笑う。「そして販路を海外にまで拡大するようになりました。」

 この年、日東建設はJETRO(日本貿易振興機構)の『輸出有望案件発掘支援事業』の支援対象企業となり、専門アドバイザーからの指導・助言を受けながら急速に輸出を拡大。また、2014年3月にはJICA(国際協力機構)の『ナイジェリア国コンクリートテスター(CTS)を用いた道路付帯コンクリート建造物の点検技術の普及・実証事業』に採択され、技術系社員3名を現地に派遣し技術指導を行うようになった。現在、同社は、海外対応の専門部署を創設し、さらに社員の語学力向上に取組み、現在8カ国に海外販売店を置くなど、グローバルな事業展開に向けて積極的に社内体制強化を進めている。

 最後に久保社長はこんな話を聞かせてくれた。

「田舎町の小さな企業でも世界を相手に仕事ができるということを証明し、日本の建設業をもっと元気にしたいと思っています。そして、これからもコンクリートテスターの販売を通じて、インフラの維持管理で世界に貢献し、ひいては地元地域にも貢献できる企業を目指していきたいです。」