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Highlighting JAPAN

誰もが安心できる病院

北海道の病院が、増え続ける外国人観光客により良い医療サービスを提供するために、空港のデザインを参考にしている。

日本を代表する観光地の一つであり日本の北部に位置する島である北海道は、アジアを中心に外国からの観光客が増えている。北海道観光の拠点として人気の札幌市(人口約195万人)の外国人宿泊者数は2016年度に約209万人に達し、5年連続で過去最多を更新した。これに伴い、外国人観光客の急病患者も増加、札幌では外国人が安心して治療を受けられる医療施設の整備が進められている。

札幌でいち早く外国人患者受入れに取り組んできたのが札幌東徳洲会病院である。同病院は2013年に通訳が常駐する国際医療支援室を開設し、英語、ロシア語、中国語、韓国語、スペイン語など10カ国語で、外国人旅行者の急患はもちろん、治療や健康診断を目的に日本を訪れるメディカルツーリズムにも対応する体制を整えた。

2015年には空港をデザインコンセプトに、外国人の患者に配慮した病院の増築を行った。参考の一つにしたのが、北海道の新千歳空港である。同空港の国際線ターミナルビルは、6か国語による案内標識、見やすい大きなピクトグラムなど、高度なバリアフリー化の実施により、同空港は2011年に国土交通省のバリアフリー化推進功労者大臣表彰を受賞している。

「空港は多くの外国人が訪れる場所なので様々な工夫がされています。病院を増築する時に、外国人が迷わないように、空港で使われている表示や色などのデザインを参考にしました」と総務課の釜野伸吾氏は言う。

病院の正面玄関には、国際空港をイメージした車寄せが設けられ、院内は診察科目ごとに内装が色分けされ、院内案内表示やフロアマップにはピクトグラムが多用されている。多くのサインは、日本語、英語、中国語、ロシア語で表示されている。

また、通訳スタッフが待機する国際医療支援室の隣に外国人患者専用の待合室を設け、迅速な対応を可能にしている。さらに、待合室の隣にはムスリム患者用に礼拝室を開設、入院時にはハラール食を提供する体制も整えた。

2015年、同病院はこうした体制整備により、一般財団法人日本医療教育財団の「外国人患者受入れ医療機関認証制度」(厚生労働省が2011年度より推進している制度)の認証を取得している。

同病院を訪れる外国人の患者数は、2014年度は約400人、2015年度は約640人、2016年度には約1200人と急増している。

「医療は人の命に関わることなので、医師の説明を私自身が十分に理解した上で通訳し、患者に伝えるよう心掛けています。やはり母国語でのコミュニケーションが、外国人の患者の安心感につながっています」と国際医療支援室の通訳スタッフ、松村由香里氏は言う。

同病院では、医師が日本語を話せない外国人患者に治療や診察結果を説明する際、通訳スタッフが同席する。同席できない場合にはタブレット端末のテレビ電話を利用し、患者が母国語でコミュニケーションを取れるようにしている。

昨年から、1階フロアに人型ロボットの「Pepper」を配備し、日本語でフロア案内などの対応を行っているが、将来的には英語や中国語でも話す機能を付加する計画である。

「今後、病院で対応できる言語をさらに増やし、どの国の患者でも安心して治療を受けられる体制を強化していきます。この病院で培った外国人患者対応のノウハウを、北海道の他の医療機関にも広げたいと考えています」と同病院医事課の佐々木寿希氏は言う。

どの国の人であれ、人に優しいデザインは患者への優しいサービスになるのだ。