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Highlighting JAPAN

パワースポット「日光」

福島、栃木、群馬の三県にまたがる日光国立公園は間違いなく、日本で最も美しい場所だろう。

豊かな木々が生い茂る山地にクマやサルが生息し、湖や渓谷、滝を満喫できる日光国立公園は、際立った自然の美しさを誇る。

奥日光周辺エリアにある中禅寺湖湖畔一帯には、日光でも有名な滝がいくつかあり、切り立った渓谷沿いに森を抜ける遊歩道から間近に見ることができる。木道などを歩いて横切ってゆく戦場ヶ原と小田代ヶ原の広範囲に及ぶ湿地帯近くの眺望は、草があずき色に変わり周囲のカラマツの森が黄金色に染まる秋にはとても素晴らしい。

ブナやミズナラやカエデといった木々が生い茂る森が日本で最も名高い紅葉に染まる時季に、日光はたくさんの訪問客でにぎわう。冬には、高くそびえる白根山の斜面がスキーヤーに人気のスポットであり、ふもとには湯元温泉や鬼怒川温泉などの温泉リゾート施設がある。また日光国立公園の北東部に広がる活火山地帯、那須塩原エリアでは、一年を通じて、山歩きと火山が織りなす多くの恩恵を満喫することができる。滝や吊り橋に通じる森に囲まれた遊歩道の散策は日光の奥深い自然美の典型と言ってよい。

日光の全ての自然の輝きの中で、公園内の数々の建造物、とりわけ美しく光り輝く東照宮は日光を訪れる人々を引き寄せる。

東照宮は1617年、日本の三英傑の一人であり、徳川幕府の創設者でもある徳川家康を偲んで建立された(1636年に造替)。華やかな色彩の漆、金箔、数千もの精巧な木彫像によって華やかに装飾された建物は、家康への畏敬の念を表現するとともに、日本の第一級の職人の技術と創造性を証明するものである。空想上の象、髭を生やした龍、「眠り猫」、そして「三賢猿」…、目に映るものは幻想的と言ってもいいほど、圧倒的な芸術性を放っている。ひざの感覚がなくなるほど高い所まで登らなければならない初代将軍の霊廟の場所の配置も明らかに意図的に造られたものである。

日光にある多くの聖地と同様、東照宮も、別名二荒山として知られる男体山のふもとにあり、その山自体、古代から神聖なものとみなされてきた。東照宮に隣接する二荒山神社は、767年に仏僧勝道上人によって創建され、「パワースポット」として有名だ。ここを訪れる人々は、胎内くぐりをしたり、運試しのために輪投げをしたり、恋愛の運気が上がるよう祈ったり、そしてまた、失われた若さを取り戻し、視力を回復させ知恵を授かるとされる湧き水を飲む。

初めて日光を「発見」した人物の一人に、英国の外交官アーネスト・メイソン・サトウ(1843~1929)がいる。彼は、1875年に日光に関する最初のガイドブックを著し、また中禅寺湖畔に別荘を建てた最初の外国人外交官の一人でもあった(彼の別荘は1896年に建てられた)。

「日本の古い歴史と神話に精通している旅行者であれば、神聖な地の中で寺院、神社など、関心の対象をつぶさに観察しながら、何日間も過ごすことができるだろう。…自然を好む旅行者なら、近隣を探索することにも同様に関心を持てるだろう。そして、どの道を進んだとしても、魅力的な場所を見つけることだろう。…それに加えて、爽やかな空気を吸えば活力が湧き、健康的になれるのだから、日本で最も心地よい保養地のひとつとして日光を挙げる理由は、これ以上いらないはずだ」と彼は綴っている。

サトウの言葉は、20世紀初頭と変わらず、今もそのままである。