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Highlighting JAPAN

サンパウロに日本の「森」

日本に関する情報を共有し、日本の魅力に沸き立つ場として、ブラジルのサンパウロに初のJAPAN HOUSEが開館した。その建築デザインが真っ先に話題となっている。

2017年4月、木曽ヒノキの線材を組み合わせた印象的な外観の建物がブラジルのサンパウロ中心街、パウリスタ大通りに完成した。外務省が日本に関する情報発信拠点としてサンパウロ、ロサンゼルス、ロンドンに整備するJAPAN HOUSEの第一号である。

JAPAN HOUSEのコンセプトは「日本を知る衝撃を、世界へ」。日本を代表するデザイナーである原研哉さんが総合プロデューサーを務める(参照)。原さんは、JAPAN HOUSEの「ワンストップサービス」を通じて、日本が発信すべき新たな日本に気付いていただき、「オールジャパン」で展開していきたいとその意図を語る。

日本には圧倒的な独自性を持つ文化がある。具体的には技術であり、建築やデザインであり、そしてまた自然や食である。JAPAN HOUSEは、日本の様々な魅力に触れ、深い理解と共感を醸成する海外の新しい拠点として創出された。

JAPAN HOUSE サンパウロのデザイン監修を担当したのは世界的に著名な建築家の隈研吾さんである。隈さんは、JAPAN HOUSEへの思いを次のように語っている。

「日本のこれからの可能性と課題は、伝統的なものと非常にコンテンポラリーなものをどうコラボレーションさせるかにかかっています。それを実現すれば日本は大きくよみがえるでしょう。そういうものをJAPAN HOUSEで見せたいです」

完成したJAPAN HOUSEサンパウロはかつて銀行だった建物を改修したもので、コンクリート構造である。しかし、外観は支柱のない自立構造で、日本から運んだ木曽ヒノキの線材による枠組みは風を通し直射日光を遮る。この支柱のない自立構造体は、カーボンファイバーで補強され、あたかも都市の中に連続して広がる森が出現したような印象を与える。

ヒノキの森を越えて内部に足を運べば、和紙の空間が広がる。日本の伝統建築の特徴を象徴する障子ではなく、楮(こうぞ)で覆われたメッシュ状のアルミ製の吊り下げられた仕切りに包まれた空間が出迎える。

その仕切りは、隈さんと和紙職人の小林康生さんとのコラボレーションによって出来上がった。アルミ製の仕切りは、和紙の雲のような仕上がりで、間接的に光を取り込み、伝統と現代を同時に感じさせるようなやわらかな空間を作り上げている。

「パウリスタはサンパウロの様々な側面が見受けられる場所で、その終点に建つJAPAN HOUSEは一つの結節点となり、サンパウロの街のにぎわいや輝きに貢献できるのではないかと思います。それこそ、日本に対する予備知識のない子供たちに日本は面白い、日本で学びたいなど、日本に対する興味を抱かせ膨らませる施設にしたいですね」と隈さんは語る。

JAPAN HOUSEサンパウロには、展示スペース、シアター機能のある多目的スペース、物販、飲食、ライブラリーやカフェが設けられ、現地キュレーターらとのコラボレーションによる展示活動(参照)を始めとする様々な企画から、日本を知り体験する家族向けのワークショップやセミナーまで、日本を巡る幅広い情報発信と人々の交流活動が展開されている。

パウリスタに登場した「森」は、単なる観光的な人気スポットを超え、陽気なサンパウロっ子が静けさに浸りくつろぎを得る空間、そして新たな日本の姿を学ぶであろう空間として、オープン時は4,288人、その後も連日数千人の来館者を記録し、人気を博している。次に日本の魅力を堪能するのは、ロサンゼルス、そしてロンドンの人々である。