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Highlighting JAPAN

富士山の麓を巡って

富士箱根伊豆国立公園は、富士山が視界に広がる美しく様々な自然景観のおかげで、一年を通じて壮観で楽しさにあふれている。

富士箱根伊豆国立公園は、東京都、神奈川県、山梨県、静岡県にまたがる国立公園である。この国立公園は、周辺の湖沼や高原を含め、2013年に世界遺産に登録された富士山を中心とする富士山地域、東海道の宿場町であり古くから温泉地として名高い箱根地域、天城連山と変化に富んだ海岸線とノーベル文学賞受賞作家・川端康成の『伊豆の踊子』を始め文学や文学者たちと縁の深い温泉地が魅力の伊豆半島地域、今日でも火山活動が活発な島々を含む洋上の火山島からなる伊豆諸島地域の4地域で構成される。環境省が行った調査によると、2016年には約550万人の外国人が日本全国の国立公園を訪れる中、その半数以上、約257.7万人が富士箱根伊豆国立公園に足を運んでいる。

富士箱根伊豆公園を象徴するのは、公園全体の北に位置する日本の最高峰「富士山」と言ってよい。活火山である富士山は標高3,776メートル、山麓には落葉広葉樹林帯が広がり、さらに山頂にかけて常緑針葉樹林帯・火山荒原へと山容が変化していく。富士山は、霊峰として江戸時代から信仰の対象であり、均整の取れた裾野が広く、浮世絵師達が繰り返し題材としてきた。例えば、世界的に有名な葛飾北斎(1760-1849年)の「神奈川沖浪裏」は、北斎が富士山を題材にした「富嶽三十六景」の中の一枚である。

富士山の北西山麓には、約1200年前の火山活動と溶岩流によって、約30平方キロメートルに及ぶ原生林「青木ヶ原樹海」が広がり、さらに富士五湖(山中湖・河口湖・西湖・精進湖・本栖湖)が形成された。

富士五湖の一つ河口湖は、湖面に映る逆さ富士が美しい富士山の撮影スポットであり人気が高い。20世紀に活躍した文豪谷崎潤一郎(1886-1965年)は、傑作『細雪』を河口湖畔に投宿して書き上げている。湖畔に建つ文学碑には、「細雪」の一節が谷崎の直筆で刻まれている。

河口湖から南東に向かう途中には、富士山の眺望と神秘的な水景で人気を集める「忍野八海」がある。忍野八海は富士山の伏流水を水源とする湧水池で、富士山の雪解け水が地下の溶岩を約20年の時間をかけてろ過された清らかな水を湛えている。透明な水、流れに揺れる水草に浮かぶ魚影、その先にそびえ立つ富士山を眺める景色は、絶景と言う他ない。

忍野八海のさらに東にある山中湖は、富士五湖の中で湖面の標高が最も高く、また湖面の面積も最大である。山中湖は、日没時に富士山頂に太陽が重なるダイヤモンド富士の聖地として人気を集める。他の周辺地域からもダイヤモンド富士を楽しむことができるが、山中湖からは秋から冬にかけて約4ヶ月半に渡り観測できるため多くの人々が訪れる。

山中湖からさらに南に下った先には、様々な火山地形や火山噴出物を見ることができ、「火山の博物館」と言われる箱根地域がある。火山地域ならではの風景と多くの温泉に恵まれ、約3,000年前の噴火で誕生した堰止湖「芦ノ湖」、現在も噴気現象が観測される大涌谷、湿原と美しいススキの草原で知られる仙石原など、変化に富む景色を楽しむことができる。箱根一帯は、ゴルフ場も多く、美術館や博物館の一大集積地でもあり、多様な楽しみにあふれている。

一年を通じて訪れる人々それぞれに楽しみを見つけられるのが、富士箱根伊豆国立公園の特徴である。