Home > Highlighting JAPAN > Highlighting Japan June 2018 > スポーツ×地域 スポーツで地域が活気づく

Highlighting JAPAN

 

 

世界初の障がい者車いす単独マラソン大会

今年38回目を迎える、大分国際車いすマラソン大会。国内外約15カ国から250名近くの選手が集まり、大会ボランティア約2,000名という、世界最大規模の大会である。

2年前のリオ・パラリンピックではアスリートたちの活躍とともに、彼らをサポートする器具の進化に目をうばわれた人も多いだろう。車いすは、生活用と競技用は全く異なり、全長約1m80cm、タイヤは3輪で幅は競輪の自転車並である。フルマラソンのタイムも、2018年1月末日現在、男子1時間20分14秒、女子1時間38分7秒まで短縮されており、どちらも「大分国際車いすマラソン大会」での記録である。

1981年、国際障害者年を記念して、世界初の車いす単独のマラソン大会が大分で開催された。提唱したのは大分中村病院院長で、“日本のパラリンピックの父”と呼ばれる故・中村裕医師。彼は英国ストーク・マンデビル病院(国立脊椎損傷センター)への留学後、スポーツが障がい者の身体機能を強化し、心理的効果もあるとリハビリにスポーツを導入し、全国に先駆け大分で身体障害者体育大会、さらに東京パラリンピックの誘致にも尽力した。

パラリンピックでも車いすマラソンの出場者は50名ほどであるが、大分では、招待選手を含め国内外約15カ国から200~250名が集まる選手の中には肘先が曲がらない、体幹が使えないなど上半身に重度の障がいがある選手も参加している。

選手を支えるのは、2,000人のボランティアである。地元の通訳ボランティア団体「Can-do」はこの大会をベースに活動し、大会期間中は海外選手の送迎、車いすの修理、病院や買い物にも付き添う。その他、周辺高校の学生たち、協賛企業から研修を兼ねた従業員など様々な人々が集結する。多くが、毎年同じ持ち場を担当して仕事にも選手対応にも慣れ、ボランティアを毎年楽しみにしている。
市民もまた、沿道のゴミを拾ったり、応援したり、様々な場面で選手を温かく迎える。コース上の道路に亀裂があると、市民から県や市に連絡が入ることもある。競技用車いす(レーサー)のタイヤが亀裂でパンクしやすい事を知っているためである。

この大会は車いすランナーの登竜門でもある。最高齢は今年37回目の出場となる92歳、他に第1回大会から連続出場のシニア選手が3人もいる。注目度も高まり一昨年から大分県で地上波、全国ではBSで全国生中継されている。さらに今夏、中村医師を描いたドラマが放映される予定である。

競技用車いすの最高速度は時速40km、トップ選手は42.195kmを1時間20分台で駆け抜ける。今年の開催は11月18日(日)に予定されている。県庁前のスタート地点でランナーが一斉に走り出す瞬間は、他にはない迫力がある。上り坂で苦戦する選手がいると沿道から声援が起こり、選手が奮起するシーンもみられる。
地元の人々が「大分の宝」と誇る車いすマラソンは、2020年に40回記念大会を迎える。障がい者スポーツの先進地で、歴史と誇りと人々のホスピタリティとともに今後も続いていく。