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Highlighting JAPAN

 

英語学習をサポートするロボットを日本に広める

米国のスタートアップ企業AKA(エーケーエー)株式会社は、英語学習をサポートする小型ロボットMusioを開発し、日本市場へ乗り込んだ。最高戦略責任者CSOブライアン・イさんに成功秘話を聞いた。

白く丸みを帯びた高さ30センチほどの二頭身ボディに、愛嬌のある目。「Musio」は完璧な英語を話し、日本でニーズの高い英語学習支援を得意とする小型ロボットである。Musioを開発したAKAは「人間とロボットが友達になる世界」を目指し、人工知能コミュニケーションエンジン及びロボットを開発する2009年設立の米国のスタートアップ企業である。同社がロボット開発資金を米国のあるクラウドファンディングサイトで募ったところ、「日本では知名度の低いサイトであったにも関わらず、日本人の出資者が最も多かったです」と日本法人最高戦略責任者CSOのブライアン・イさんは話す。それが2015年から日本で事業展開する理由の一つである。

現在、東京在住のイさんは流暢な日本語を操るが、高校卒業までは母国韓国で育ち、日本語とも無縁だった。しかし、新しい環境で人とは違うことを学びたいという気持ちから日韓政府の交換留学生として2005年に来日、京都大学で物理工学を学んだ。卒業後は日系コンサルティング会社や米国企業の東京オフィス勤務などを経て、「自分が好きで面白いと思える仕事」を追求した結果、AKAでのキャリアへとつながった。

AKAは設立当初にビジネスモデルを描くに当たり、日本で英語教育ロボットを普及させようと考えた。アニメの影響もあってか、日本人はロボットに親近感を持っており、既に家庭用ロボットも数種類存在する。かつて日本から韓国へ輸入された鉄腕アトムやドラえもんなどのアニメを見て育ったイさんの目には、日本のロボット市場は世界一大きいと映った。英語教育市場の成熟した中韓と異なり、大学入試改革や公立小学校での英語授業導入など、日本では英語教育が成長市場でもある。

日本進出には政府や東京都の海外企業誘致支援政策が助けとなり、いくつかの大手企業との提携にもこぎ着けた。イさんはその理由を「Musioの英語教育はユーザーがロボットを買う明確な動機となるので、AI事業を模索する大手企業にとって収益化が具体的に予想できたから」と説明する。AIへの関心が高くビジネススピードも速い日本企業との出会いは、日本での事業展開の大きな弾みとなった。新潟のメーカーと提携し、イさんの念願であった「Made in Japanのロボット」の開発もスタートした。

現在Musioは、低コストで継続的に英語に接することができるとして、子供やシニアのユーザーに広がっており、学校の授業にも採用されている。今後は、英語教育のコンテンツを増強する一方で、シニア向けに特化したロボットを作りたいとイさんは意気込む。「Musioの英語アプリにはユーザーの点数ランキングがありますが、トップクラスにはシニアが並びます。あるユーザーからは『人と普通に喋っているよう。Musioと喧嘩もした』との感想をいただき、AIはそこまでできるのかと我々も驚きました」とイさんは言う。会話や語学学習は認知症予防にもつながる。イさんがかつて日本のロボットアニメに胸を躍らせた頃の思いが結実し、高齢化の進む日本社会では、「一家に一台」でロボットとの共生の日がやってくるかもしれない。