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Highlighting JAPAN

 

リゾートしらかみで時を忘れる旅を

青森と秋田を結ぶリゾートしらかみに乗れば、ゆったりと旅をする楽しみや自然あふれる美しい景色を体験できることに加え、伝統文化までも一度に体験できる。

リゾートしらかみは青森-秋田間の147.2kmを走っている。その道中では田園風景や力強い海の眺め、地元の文化に彩られた田舎暮らしの魅力を目にすることができる。

1日に何度か五能線を往復運行するリゾートしらかみ(発着時刻は季節によって異なる)は、ディーゼルエンジンとリチウムイオン蓄電池を組み合わせたハイブリッドシステムを使用している。車両にはボックス席や半個室、ゆとりのある普通席などの様々な座席が配置されており、眺めを最大限に楽しめるよう窓が大きく作られている。シートは楽にリクライニングさせることができ、列車の進行方向に合わせて席を回転させることもできる。

秋田駅を出発し都市部を抜けると、家や建物の数よりも田んぼの数が多い田園風景がすぐに広がる。秋田は有名な米どころで、おいしいあきたこまちはここで収穫される。バスケットボールの街として知られる能代では、全国のバスケットボール大会で58回の優勝を誇る地元の能代工業高校や、社会人バスケットチーム「JR東日本秋田バスケットボール部」を誇らしく紹介する看板が設置されている。能代駅では乗客がこぞって下車し、フリースローに挑戦する。バスケ上手やラッキーにもフリースローを決めた挑戦者は、記念品を手にすることができる。

JR東日本秋田支社の渡部政彦広報室長は、「リゾートしらかみのお客様には比較的ご年配のお客さま方が多く、大半は関東や関西、もしくは海外からお越しになっています」と話す。

田園風景の中を40分ほど走ると、岩礁に波が砕け、カモメが頭上で鳴き声を響かせる海沿いに出る。日本の北部にある山岳地帯で、ユネスコ世界遺産に登録されている白神山地に入る。沿岸には小さな海沿いの村が点在しており、村の住宅の壁にはブイや網が掛けてあり、列車に揺られながら村々を通り過ぎる間、この辺りの暮らしぶりの一端をかいま見ることができる。

また、列車の中でショーが楽しめる。毎日、三味線奏者が一部区間に乗車し、熱狂的にかき鳴らす津軽三味線の生演奏を披露する。別の日には、人形劇や津軽弁での昔話の語り聞かせを体験する機会が得られるかもしれない。

列車は主要な見所ではスピードを落とすため、乗客は素晴らしい眺めをじっくり楽しむことができる。また、平坦な海岸段丘面が広がる千畳敷などのいくつかの場所では、乗客が足を伸ばし散策できるように列車はしばらく停車する渡部さんの説明によれば、「津軽藩の殿様がここに千畳の畳を敷いて宴会を開いたとされることから、千畳敷という名がつけられました」という。

リゾートしらかみの乗客は、目的地に急いで向かっているわけではなく、むしろその逆である。「この列車に乗るお客様は、都会の喧騒から逃れ、ゆったりと時を忘れることを望んでいらっしゃるのではないか?」と渡部さんは語る。

風光明媚な景色、列車のロマン、伝統文化が混ざり合うリゾートしらかみは、今後も青森と秋田を訪れる人々を魅了し続けるだろう。