Home > Highlighting JAPAN > Highlighting Japan July 2018 > 日本発世界へ

Highlighting JAPAN

 

 

MOTTAINAI:Reduce(ゴミ削減)、Reuse(再利用)、Recycle(再資源化)—そしてRespect(尊重)

MOTTAINAIキャンペーンは、興味深い由来を持つ日本における環境活動である。キャンペーンの名称は日本語の『もったいない』に由来し、英語では“What a waste!(なんという無駄!)”と訳されることが多い。しかし、この言葉の意味はもっとずっと奥深く、概念自体もかなり歴史がある。

『もったいない』という言葉は、威厳や重々しさを意味する仏教用語の『勿体/物体』に、否定の言葉を意味する『ない』が合わさったものです」とMOTTAINAIキャンペーン事務局長の七井辰男さんは言う。「それ故、『勿体ない』とは『その物の本来あるべき姿が失われている』という意味であり、例えば、食事の際にご飯粒を残すことを『もったいない』と言うのは、ご飯粒の本来持つ価値を無意味なものにしているという意味なのです」。 七井さんはこの言葉が約800年前から使われており、その起源や解釈については諸説あることを指摘する。

「ケニア人活動家のワンガリ・マータイさんが来日した際、彼女は「日本には“reduce, reuse, recycle(ゴミを削減する、再利用する、再資源化する)”という概念を表す言葉はあるか」と尋ねました。私たちは、日本には『もったいない』という言葉があり、その概念や文化について彼女に伝えました」とキャンペーン事務局の安保文子さんは話す。「マータイさんはとても強い関心を示しました。3Rは非常に日本的な概念で、『もったいない』の概念はさらに4つ目のR、つまりRespect(尊重)のニュアンスも含んでいるからだと思います」。

マータイさんの訪問後、毎日新聞は環境保護やゴミ削減を促進するためにMOTTAINAIキャンペーンを2005年に立ち上げた。伊藤忠商事と提携し、マータイさんともコラボレーションすることで、国内外にMOTTAINAIの概念を広めるよう取り組んだ。2005年、マータイさんは、ニューヨークの国連本部で行ったスピーチで、『MOTTAINAI』という言葉の概念を世界に向けて発信した。

このキャンペーンには4つの柱がある。1つ目はMOTTAINAIグリーンプロジェクトというケニアにおける植樹の取組である。様々な活動で得た収益で、マータイさんの母国の森林再生を支援している。次に、ウェブサイトやその他のメディアを通じて『MOTTAINAI』の概念を広げている。また、キャンペーンの概念を広めるため、フリーマーケットや手作り市等の様々なイベントも開催している。そして、4R(reduce, reuse, recycle and respect)を意識した商品を販売するウェブショップも立ち上げている。商品例としては、プラスチックボトルをリサイクルした生地で作った風呂敷などがある。再利用可能で包装のムダを削減できる一方、可愛く美しいデザインにすることで、大切に使ってもらう工夫も行っている。

マータイさんは『MOTTAINAI』の概念が単にreduce, reuse, recycleにつながるだけでなく、私たちが食べたり使ったりするモノ—私たちの毎日の生活の一部であるモノ—を尊重することにもつながると理解した。モノは、その価値に対して敬意をもって使われ、修理されるべきである。日本ではもう使うことができなくなったモノに対して“役に立ってくれてありがとう”という意味を持つ「おつかれさま」という言葉をかけることも珍しくない。その素晴らしい例として針供養が挙げられる。これは人々が古くなったり折れたりした針を厳かに“引退”させるため、柔らかい豆腐やこんにゃくに刺して労いと感謝を表す、年に1度の行事である。

キャンペーン事務局の七井さんと安保さんは『MOTTAINAI』の概念が今後もっと広まっていくことを望んでいる。例えば、日本においては、プラスチックやレジ袋の使用に関して、もっとゴミを減らすことに人々が納得するためには社会の意識を変える必要があると認めている。しかし、ここ10年間で少しずつ変化も起こっており、多くの人が再利用可能なものに賛同し、使い捨ての袋やカップを使用しなくなってきている。また、このキャンペーンでは若い世代が早いうちから『MOTTAINAI』の概念に接することができるように、子供たちだけで売り買いするキッズフリーマーケットのようなイベントを開催している。教科書発行者から『MOTTAINAI』の概念について教科書で触れたいという要望もあった。

世界にもこの概念は広まっている。インドネシアでは “MOTTAINAIダンス”が生まれ、ベトナムでは“MOTTAINAIフェスティバル”が開催されている。これらはキャンペーン事務局が働きかけたものではなく、現地の人達が自発的に取り上げ、生み出したものである。

『MOTTAINAI』という概念は古くから日本にあったが、日本における関心の高まりや世界への広がりは、もちろん、マータイさんの尽力が大きいことは言うまでもない。マータイさんは2011年に逝去したが、彼女が広めた『MOTTAINAI』の精神は、事務局の活動や彼女の心に響くメッセージを通じて、これからも世界に影響を与え続けていくだろう。

(脚注)
※ ケニア人活動家。約40年間にわたり様々な社会問題に関して取り組み、2004年には母国ケニア及び国外における持続可能な開発、民主主義、平和に関する活動に対してノーベル平和賞を受賞。