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Highlighting JAPAN

健康長寿社会の実現に向けて

世界でもまれに見る長寿社会を実現している日本。日本の健康寿命に対する世界的な評価、健康長寿社会の実現に向けた施策、目指すべき健康長寿社会の姿などについて、厚生労働省の鈴木康裕医務技監に伺った。

長寿社会と呼ばれる日本の現状は、世界からどう評価されていますか。

日本は平均寿命・健康寿命共に、世界で最も長い寿命を誇っています。これらは日本人の食生活や日々の運動、医療水準が可能にしたものであるとして、諸外国が日本の食やライフスタイルに注目しています。日本はOECD加盟国内で最も高齢化の進んだ国であるにも関わらず、社会保障費支出は低い。抑えた費用で高い社会保障のパフォーマンスを上げていることもまた、世界から高い評価を受けている点です。

日本は高齢化のスピードが早く、高齢者率が倍になるのに日本は戦後たった25年、欧州の4分の1の期間でした。この大きな変化の道のりには光と影があり、日本の経験から得られる知見や教訓は、同じように高齢化をたどる諸外国の良き手本として期待されています。

世界でも異例のスピードで高齢化を遂げている日本ですが、具体的な課題はありますか。

食の欧米化傾向や、和食の塩分過多、ストレスなど、現代人の不健康は否定できません。また、多世代同居から核家族へと世帯モデルが変化し、地域や民間による独居高齢者の見守りケアも課題です。これもまた、速かった高齢化の教訓の一つです。

課題の中でも大きなものは、増加する社会保障費の財源確保です。とはいえ高額になりがちな社会保障費を様々なセクターが一定程度に抑えながら総じて高パフォーマンスを実現してきたのは、日本の制度が成功したと言えるでしょう。

健康長寿社会実現に向けた具体的な施策を教えてください。

厚生労働省として幾つかの基軸を打ち出しています。まずは運動で、例えば一駅分、1日10分でも歩こうと提唱しています。次に食事で、塩分や脂肪分の吸収を妨げる野菜の摂取を奨励しています。また受動喫煙に関しても、健康増進法改正で対策が強化されました。

健康と言われる日本人ですが、三大生活習慣病と呼ばれる高脂血症・糖尿病・高血圧の率が高いのが懸念されます。多くの人に生活習慣を改め、中年期から健診を受けるよう、呼びかけています。またよく働く日本人にとっては休息も大切です。物理的な睡眠時間だけでなく、睡眠の質にも意識を向けていきたいですね。

目指すべき健康長寿社会や、個人の姿とは。

自立と自律が鍵となります。健康情報が簡単に計測され可視化されるウェアラブルデバイスなども普及しつつあり、個人の意識に変化を与えていますが、その自己コントロールを企業や社会全体でも支えていく。どこでも運動しやすく、どのレストランでもカロリー表示があるような社会が理想です。企業には従業員の健康意識向上を奨励してもらう一方、働き方改革の一環で、健康な労働時間の促進や、引退後のシニアに意欲を与える積極的な雇用を求めていきます。また、医療が発展し、例えば難病患者が入院せずに働きながら外来で治療するというケースも増えるでしょう。午前中は治療を受け、午後に出勤するような生活の実現には、企業の理解が不可欠です。このように健康長寿は社会の合意となり、健康意識がさらに深まると考えています。