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Highlighting JAPAN

 

清流とともに走る

四万十川を縫うように走る予土線の旅は、車窓からの景色はもちろんのこと、ユニークな車両や、絶景を駆け抜けるその姿など、全方位的に魅力的である。

高知県の四万十町と愛媛県の宇和島市を結ぶ予土線(よどせん)は、1914年に開業し、76.3キロメートルの距離を約2時間15分で結ぶ。初代新幹線0系をイメージした普通列車「鉄道ホビートレイン」、車内にフィギュアを陳列した「海洋堂ホビートレイン」、1984年に全国で初めて貨車を改造して運転されたトロッコ列車「しまんトロッコ」という3つの観光列車“予土線3兄弟”が連結されて運行するなど、話題に富んだ路線としても全国に名をはせている。

予土線を満喫するには2つの方法がある。高知県から向かう場合、高知駅からJR土讃線(どさんせん)特急に約1時間乗り、「窪川駅」で下車しホームを移動すれば予土線に乗ることができる。愛媛県からの場合、松山駅を起点にJR予讃線特急で約1時間20分ほど乗車すると「宇和島駅」に到着し窪川方面行きの各駅停車に乗り換えれば、次の「北宇和島駅」から予土線の旅が始まる。

予土線は、高知県内はほぼ全区間で四万十川に沿って走る。“日本最後の清流”と呼ばれる四万十川を縫うように走る列車は、絶景を見下ろすのに最高の場所である。特に土佐大正駅から江川崎駅の間は、蛇行する四万十川を貫くように列車が走るため、トンネルを抜ける度に左右に入れ替わる川の景色を楽しむことができる。車窓から見られる風景は、まばたきもできないほど変化に富み非常にドラマチックである。春・秋の土日祝、GW、夏休み限定で運行されるトロッコ列車に乗って、爽快な風と雄大な景色をダイレクトに感じるのもいいだろう。トロッコ列車は定員40名なので、事前に予約しておく方が安心である。

沿線には個性豊かな駅が多い。高知県の土佐大正駅は、1974年に建てられた山小屋風の木造駅舎で、レトロな外観が、山々の連なるのどかな風景とマッチしている。
江川崎駅(高知県)では普通列車が時間調整のため5〜20分ほど停車する。その間、運転手士は乗客からの質問に答えたり、記念撮影に応じたりと忙しそうである。そうした運転手士の温かい対応も魅力の1つと言えるだろう。運が良ければ、予土線三兄弟のうち2車両がこの駅で揃う場面を見ることができる。駅から徒歩約10分の場所には、道の駅「よって西土佐」があり、地元の農産物を買うことができる。駅には有料のレンタサイクルもあるので、のんびりと四万十川周辺の自然を楽しむのもいいだろう。

愛媛県の松丸駅には、駅舎の2階に「森の国ぽっぽ温泉」という有料の温泉施設と、駅舎の入口に無料で利用できる足湯があり、旅の疲れを癒やすのにはぴったりである。

清流を追いかけ、追い越しながら大自然を駆け抜ける予土線の旅は、乗車中のみならず降車しても見どころが満載である。