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Highlighting JAPAN

日本の森林を特性に応じて守り、育て、暮らしに活かす

日本の森林率はOECD加盟国の中で2番目に高く(※)、森林面積もここ50年ほど変化はない。これは一部を資源に活用しながら、植林などで維持に努めてきたためだ。こうした森林の現状と今後を見据えた施策を林野庁の牧元幸司長官に聞いた。

日本の森林は諸外国と比べてどんな特徴があるのでしょうか。

日本の森林面積は約2,505万haで国土面積の約2/3を占めています。森林率はOECD加盟国の中で2番目に高く、しかも南北に長く標高差も大きいといった日本列島の特性により、多様な森林を有することも特徴と言えます。北海道東部には亜寒帯林があり、南西諸島にはマングローブなどの亜熱帯林が広がり、冷温帯林・暖温帯林では落葉広葉樹、照葉樹などが見られます。

このうち天然林等は約6割、伐採後に植林するなどして育てた人工林が約4割で、現在は第二次世界大戦後に植林された木々が育ち、森林資源量の目安となる森林蓄積(森林を構成する樹木の幹の体積)はこの50年間で約2.8倍に増えました。

1950年に始まった国土緑化運動による植林の動きが全国に広がったのは、それだけ日本人が森林を大事に思ってきたからでしょう。加えて天皇皇后両陛下が出席される全国植樹祭、皇太子同妃両殿下が参加される全国育樹祭の影響も大きかったと思います。そのほか多くの先人の努力のおかげで、日本の森林資源は実りの時期を迎えているのです。

ただ、近年は林業の現場でも機械化や生産性向上が不可欠となっており、森林法の一部改正で施業の集約化を容易にするなどの施策を進めています。

そうした豊かな森林資源の利用に向けて、具体的な施策はありますか。

2010年に「公共建築物等木材利用促進法」が成立し、国が整備する建築物は低層の場合は原則として木造化を図り、それ以外についても内装の木質化などの目標が定められました。このため自治体の施設や学校などにおいて木造または木質化されたものが目立っています。最近では、木の質感を生かした鉄道の駅や商業施設なども見られます。

これらはCLT(Cross Laminated Timber 板を繊維方向が直交するように積層接着したパネル)という強度に優れた建築材により、中層階の建物でも木造が可能になるなど技術の発達による部分も大きいでしょう。

また当庁では多くの人に木材を使うことの意義を広め、木材を使っていただく「木づかい運動」を進め、家庭や職場、地域などで木製品や木造施設の普及を目指しています。この中で、子どもから大人までを対象に木材や木製品とのふれあいを通じて、木を使った暮らしや文化への理解を深める教育などを行う「木育」も推進しており、多くの自治体や企業にも取組が広まっています。

森林そのものはどのように管理されるのでしょうか。

単に伐採して利用するだけでなく、森林自体の多面的な機能の活用も重要と考えています。例えば土砂災害を防止する、水を蓄えて洪水緩和や水源確保に役立つ、二酸化炭素を吸収して地球環境を保全する、生物の多様性を維持する、人々の健康や文化活動に寄与するなどです。

特に森林を観光資源として活用してもらう狙いから、当庁で「日本美しの森 お薦め国有林」を選定し、森林散策などを通じてその土地の自然や文化を感じてもらえる施策にも取り組んでいます。

そして、こうした多面的な機能を十分に生かすには、間伐や下刈りで樹木を大きく育て、土壌のぜい弱化を防ぐなど、森林の適切な管理が必要です。当庁では森林の機能と役割に応じて、世界自然遺産にも選ばれるような森林などの天然林は主に保全し、人工林の一部を針葉樹と広葉樹の混交林に変えて生物多様性や水源かん養に役立てる方針です。一方で人工林の資源となる部分は伐採して活用し、さらに植林によって次世代に貴重な森林資源を引き継ぐといった適材適所の管理を行う中で、観光から工業製品まで様々な形で活用を進め、日本の森林の魅力を最大限に生かしたいと考えています。

(※)出典:『世界森林資源評価(FRA)2015(第2版)』(2016年第2版公表 国際連合食糧農業機関)。日本の森林率は68.5%でOECD加盟国の中ではフィンランドに次ぎ2番目に高い。なお林野庁による調査では国土面積の算出根拠が異なるため森林の割合を約67%としている。