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Highlighting JAPAN

 

「体験」「学び」で惹きつける小田原城

小田原城は「東京から最も近くに建つ、一般客が入れる天守閣がある城」である。加えて忍者体験や文化、歴史なども学ぶことができ、訪日観光客の人気を集めている。

訪日観光客が日本を旅する際のゴールデンルート「東京・箱根・富士山・京都・大阪」の途中にあるにもかかわらず、小田原城は、以前は外国人観光客にはさほど知られたスポットではなかった。しかし、一般社団法人小田原市観光協会の朝尾直也さんは「ここ数年で外国人の姿が目に見えて増えてきました。知られるきっかけの一つはロケーションだと思います。小田原は品川駅から東海道新幹線で約30分と近い上、駅から城まで徒歩10分程度。天守閣に登り、城址公園をゆっくり散策いただいても2時間程度で回ることができ、その後の箱根、伊豆への移動も簡単です」と話す。

戦国時代、この城の主だった北条家を支えた「風魔忍者」の歴史も活用している。ちなみに風魔一族の頭領「風魔小太郎」は現代でも多くの小説や、漫画、ゲームなどの題材に登場しており、海外でも知られた存在である。既に小田原市観光協会では2018年2月・8月に忍者体験プログラムとして、手裏剣を投げ、座禅も組み、戦国時代の日本の精神や文化も学ぶイベントや、忍者衣装の貸し出しも行っており、海外の方の人気を博してきた。「エンターテイメントの提供や展示物を見ていただくだけでなく、実体験や学びを通じてより深く理解してもらう狙いで行ってきました。来年4月下旬にはプログラムを発展させて忍者体験のテーマパークを小田原城址公園内に開館予定です。入館者には北条家の功績、風魔忍者の心得などを学んでいただいた後、窮地の小田原城を救う『忍務』が与えられ、クリアしていただく趣向です。国内はもちろん、訪日観光客の方にも楽しんでいただけると思います」と朝尾さんは期待を込める。

また、地元市民によるシニアボランティアの精力的な活動も小田原城に不可欠な要素である。現在、日本全国の城や史跡では戦国武将などにふんしたスタッフが人々をもてなしているが、北条家をしのぶ地元の歴史愛好家、甲冑好きが集まって1998年に設立された「北條手作り甲冑隊」はその草分け的な存在と言える。平均年齢およそ65歳で130名を越える隊員はプロ甲冑師の指導を受け、段ボール製とはとても思えない本物そっくりの甲冑を手作りし、完成したマイ甲冑を身に付けて観光客のおもてなしを行っている。小田原城では春と秋に広場で観光客と記念写真を撮る「門番事業」が人気である。「特にここ数年で急増した訪日観光客に好評で休日は行列ができるほどです。『エイエイオー!』と勝どきの声をあげてもらいながら撮影しており、楽しそうな笑顔の写真を持ち帰っていただいています」と代表の森田信宏さんは話す。

さらに森田さんは「戦国時代の史実に基づいて自分たちで書いたストーリーに沿って行う本格的な殺陣も好評です。また、鉄砲を手作りして演武を行ったり、居合の先生に指導を受け、居合術をお見せすることも始めており、訪日観光客の皆様に興味を持っていただいています。同じもてなしなら、リアリティーを追究して小田原城を訪れる人々にもっと楽しんでいただきたい、驚きを感じていただきたいと考えています」と話す。ゴールデンルートにおける小田原城の存在感は、より大きくなりそうである。