Home > Highlighting JAPAN > Highlighting Japan January 2019 > 暮らしやすい日本をつくる、NPO・NGO

Highlighting JAPAN

 

日本の動物福祉を世界トップレベルに
〜人と動物の真の共生を目指す〜

家族の一員として愛情を受け幸せに暮らす動物がいる一方、人間の都合で不幸な道をたどる動物たちがいる。動物福祉の向上を目指し、中間支援組織である公益社団法人アニマル・ドネーションを立ち上げた代表理事の西平衣里さんに設立の経緯や活動について伺う。

日本は世界第3位の経済大国だが、ドイツ、イギリス、北欧、アメリカなどの動物福祉の先進国と比較し未発展な現状があると言う。「1頭の犬を家族として迎えたことがきっかけで、動物を取り巻く様々な問題があることを知りました。2010年当時、年間28万頭(800頭/1日)もの動物が殺処分されているという事実を目の当たりにし、人生の後半をかけて社会貢献をしようと決めました」と西平さんは振り返る。

動物に関するシンポジウムやセミナーへの参加、動物愛護センターの見学など多方面から情報収集した結果、「お金に余裕があれば、もう1頭救えるのに」という保護団体の声から、寄付したい人と寄付される団体をマッチングする「動物のためのオンライン寄付サイト」を立ち上げることにした。

適切に寄付されるためにアニマル・ドネーションは、動物のために努力している団体を、活動歴・収支報告公開などの運営基準と信頼性・持続性・先駆性などの活動基準で厳正に審査し、認定した団体のみに寄付を行い、寄付をしたいがどこに寄付をしたら良いか分からないという人のために、「まとめて寄付」できる仕組みを導入している。認定団体は保護団体の他、伴侶動物の育成、啓発活動をしている団体など、現在16団体に一括分配できるようになっている。

サイトオープンの時期が東日本大震災の年と重なったが、最初はなかなか浸透しなかったものの、知人への口コミやSNSを使って地道に情報拡散した結果少しずつ寄付が増え始めた。そして震災の影響もあったのか、世界最大級の動物福祉団体である『ヒューメイン・ソサイエティー・インターナショナル』から10万ドルの寄付が届いた。「岩手に拠点を持つ保護団体へ、あたたかい支援が届けられました」と西平さんは語る。

「殺処分の問題に注目が行きますが、傾向としては減少してきました。それよりも動物に対する関わり方などの動物福祉や動物倫理観の本質を知って欲しいです。そのための正しい情報を発信するセミナー活動にも注力し、日本の動物事情の改善のためにテレビや新聞などのメディア向け勉強会や、一般向けに親子で学ぶ動物福祉、大学生向けの勉強会なども開催しています」と西平さんは続ける。

また日本の動物福祉のレベルを更に引き上げるためには国や行政の方針が関わるため、現状や今後について行政に取材した内容を記事にしてネットで掲載している。そのせいか、寄付集めに対してだけではなく幅広く情報収集・発信する活動や理念に共感が得られ、動物医療関連の企業やメディアからの寄付も集まっている。

さらに、動物に強い関心がない人にも動物の現状を知ってもらえるよう、映画や雑誌、アパレルメーカー、さまざまなWEBメディアとコラボし認知度を上げる工夫をしている。

今後は、遺産の一部または全てを、アニマル・ドネーションを通して、動物福祉団体や育成団体に寄付する遺贈寄付を本格稼働させる予定である。高齢者の万が一を考え、残されたペットのために遺贈できる仕組みも検討中で、いつかはドイツにある動物保護連盟のような中間支援組織のような役割を目指していると言う。人と動物が共に幸せに暮らせる社会作りは、真に豊かな成熟社会の象徴とも言えるかもしれない。