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Highlighting JAPAN

 

 

日本の児童文学・絵本について

日本の児童文学や絵本にはどのような特徴があり、世界でどのように評価されているのか。一般社団法人日本国際児童図書評議会(JBBY)の会長さくまゆみこさんに伺った。

自身も児童文学の著名な翻訳家として活躍する日本国際児童図書評議会(JBBY)の会長、さくまゆみこさんは、「一言で言うのは難しいですが」と前置きして日本の児童文学・絵本の豊かな魅力を語り始めた。

作家・画家によって作風は異なるが、日本の絵本には柔らかいタッチやユーモラスなテーマで国内外の人気を得ているものが多い。絵本は視覚的なので言語の壁を超えて評価されやすく、国際アンデルセン賞画家賞は1980年に赤羽末吉さん、1984年に安野光雅さんが受賞し、作家賞よりも早くに国際的な評価を受けた。「ヨーロッパの絵本の伝統に比べると、赤羽さんの『そら、にげろ』のようなアニメーション的な場面展開は日本的と言える。また安野さんの西洋画の影響の中に見られる日本の絵画的な踏襲にも、インターナショナルでありナショナルでもある魅力が見て取れます」とさくまさんは説明する。

他方、日本の児童文学においては「子供の心象風景を、細かい心の揺れをきちんと捉えて書く作家がたくさんいます。また、日本のノンフィクションはきめ細かなリサーチによる正確さが特徴です」とさくまさんは話す。「欲を言えば、欧米の作家のように社会問題や国際問題を扱うなど、子どもを社会的な存在と意識して未来像にも視野を広げて欲しいですね」

さくまさんは「日本語の作品には外国で読まれる価値のあるものがたくさんあるけれど、実際に翻訳出版される点数が少ないのが残念」と指摘する。だがJBBYの積極的な推薦活動が実り、1994年には詩人まど・みちおさん(代表作『どうぶつたち』)、2014年には上橋菜穂子さん(代表作『精霊の守り人』)、そして今年2018年には角野栄子さん(代表作『魔女の宅急便』)が国際アンデルセン賞作家賞を獲得した。2016年には中国の作家、曹文軒さんも受賞し、最近3回はアジア作家の受賞が続いている。

言語の壁を超え、日本の文学の面白さを世界へきちんと伝える翻訳者の存在は重要である。まど・みちおさんの『どうぶつたち』は日本の皇后美智子様が英訳をされたものだった。「詩の英訳には文の長さや韻の踏み方など、独特のセンスが必要。皇后様は以前から絵本の執筆や詩の英訳をなさっていて、詩を訳すなら皇后様しかいないと、皇后様と聖心女子大学の同窓だった当時のJBBY幹部、島多代さんが働きかけたのです」とさくまさんは語る。皇后様は内容のみならず視覚的なバランスにも配慮され、まどさんにきめ細かく確認されながらの道のりであった。「世界的にも高く評価される翻訳で、まどさんの国際アンデルセン賞受賞に大いに貢献してくださいました」とさくまさんは続けた。

今後、日本の作品が世界で更に活躍するためには何が必要かと尋ねると「創作者も翻訳者も編集者も、視野を広げて国内外の作品に共に目配りができると、日本の児童文学に良い変化が生まれる。JBBYは『おすすめ!日本の子どもの本』『おすすめ!世界の子どもの本』として国内外の良質な絵本や児童文学を紹介していいます。これからの子供たちには、多様な価値観を提供でき、生きることに肯定的な本を読んで育って欲しいですね」とさくまさんは結んだ。