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Highlighting JAPAN

 

 

地域の文化・伝統を一体的に紹介して活性を図る「日本遺産」

文化財(文化遺産)保護が目的の指定文化財や世界遺産と異なり、日本遺産は地域に点在する有形・無形の文化財などを歴史に根ざすストーリーに織り込んで紹介し、新たな魅力を伝えるものである。その認定を行う文化庁に話を伺った。

文化庁では2015年から、各市町村や都道府県が提出する認定希望の申請を基に「日本遺産」の認定を行っている。これは地域が大切にしてきた文化財である遺跡、建造物、産業、習慣などの歴史的魅力や特色について、その背景にある文化・伝統を軸に総合的に紹介する取組を一定の基準で評価するものである。2018年5月には『「桃太郎伝説」の生まれたまち おかやま ~古代吉備の遺産が誘う(いざなう)鬼退治の物語~』(岡山県)、『瀬戸の夕凪が包む 国内随一の近世港町~セピア色の港町に日常が溶け込む鞆の浦~』(広島県)などを含む13件が認定を受け、総数は67件となった。

文化庁文化資源活用課文化財活用専門官の中島充伸さんは、これまで特定の建造物や美術工芸品など単体で伝えられてきた地域の魅力を、それぞれの成り立ちや周辺地域との関連性も踏まえながら面的に捉え直すことが日本遺産の狙いだと言う。

「重要文化財の美術工芸品の誕生には、少し離れた地域で作られた別の美術工芸品に刺激を受けたから、というような歴史的・文化的背景が分かると新たな楽しみが広がるでしょう。日本遺産ではこれを『日本の文化・伝統を語るストーリー』と呼び、地域の歴史・風土に根ざした伝承や風習を踏まえているか、地域の魅力として一体的に発信するテーマが明確かなど、ストーリーの適切さを認定の重要な評価基準としています」

ストーリーを通じて地域の魅力をパッケージ化することで、国内外にも分かりやすく紹介でき、戦略的・効果的な情報発信につながると中島さんは言う。例えば2015年に日本遺産に認定された『六根清浄と六感治癒の地~日本一危ない国宝鑑賞と世界屈指のラドン泉~』(鳥取県)は、国宝である投入堂(仏像を祀ったお堂)にたどり着くまでの険しい山道や崖もストーリーの一部とし、それを同町内に住む外国人の協力を得てSNSで海外向けに紹介してきた。これにより外国人観光客の数は認定前の2014年と比較し2017年には2.7倍になった。

また『一輪の綿花から始まる倉敷物語~和と洋が織りなす繊維のまち~』(岡山県)では、400年前まで海だった地域を干拓して綿花を育て、繊維産業によって発展したまちの歴史を基に、白壁の町並みが残る観光地に繊維製品のクオリティを加え、見所を盛り込んだモデルコースを紹介するなど、魅力が更に伝わるよう工夫を重ねている。

認定を受けた自治体には3年間を目処に財政支援があるほか、専門家をアドバイザーとして派遣するなどの支援も行われる。国内外に日本遺産を周知するプロモーションも継続されるため、今後も認定を希望する自治体は増えると見込まれる。

「日本遺産は、地域に点在する遺跡や建造物などを面的に紹介することで新たな魅力を掘り起こし、その地域の活性化を目指すものです。このためストーリーに加え、認定後に地域が行う取組予定も評価時の対象としています。2015年認定の『津和野今昔~百景図を歩く~』(島根県)では、認定されたストーリーを映像やパネル展示などで解説するガイダンスセンターを設立し、百景図を通じた津和野の新しい歩き方を提案しています。こうした取組により、外国人観光客を2014年と2016年で比べると1.6倍に増えたそうです」

このように日本遺産に認定された地域を観光すれば、その地域に根づく歴史や文化の大きなつながりが感じられ、様々な楽しみ方を見つけることができるだろう。