Home > Highlighting JAPAN > Highlighting Japan February 2019 > 活躍する外国人

Highlighting JAPAN

 

 

日本映画を心から愛するスウェーデン人研究者

スウェーデン出身で2001年に初来日したヨハン・ノルドストロムさんは、現在は都留文科大学文学部国際教育学科講師として日本映画史を教え、映画祭のキュレーターなどとしても日本近現代の映画を国外へ発信している。

ヨハン・ノルドストロムさんは、日本映画史の中でも戦前の日本の映画や大衆文化モダニズムを専門に研究している。スウェーデン ストックホルム出身だが、作家である父親の影響で幼い頃から日本の映画やアニメに触れ、志賀直哉や谷崎潤一郎、三島由紀夫の作品を翻訳で読んで育ったと言う。「映画では黒澤の時代劇、70年代のアニメでは『銀河鉄道999』や『宇宙戦艦ヤマト』を見て育ち、三島由紀夫の『金閣寺』は世界的傑作だと心酔しているような中高生でした」と笑う。

ストックホルム大学の日本学科で学び、在学中の2001年に日本へ念願の短期留学を果たした。日本映画を学ぶなら是非日本語で研究したいとの思いが募り、早稲田大学文学部演劇映像学科で博士号を取得、その後日本学術振興会の奨学金を得て明治学院大学で博士研究者となり、現在は都留文科大学で教べんを執る。2010年より国立映画アーカイブ(NFAJ)主催とコラボレーションをして、海外の映画祭を中心としたキュレーターとしても活動しており、ニューヨーク近代美術館(MoMA)を始めとする欧米の美術館で日本の無声映画や30年代の初期トーキー映画、50年代色彩映画、アニメなどの国際映画祭を行ってきた実績もある。「日本政府が映像文化を大事に考え、支援を続けてくれてとても嬉しい。文化が視覚化されている映像は、日本の理解を国際的に深める良い入り口になるのです」とノルドストロムさんは語る。

正確で流暢な日本語を話すノルドストロムさんは、「日本はみんな温かくて良い人ばかり。スウェーデンと同様に安全で、とても暮らしやすい国です。日本人と同じように振る舞い暮らせばとても温かく歓迎され、ローカルコミュニティの一部になれる。『郷に入れば郷に従え』で、スウェーデン人はもともとそういう精神の方が多いです」と語る。家族思いのノルドストロムさんにとっては、母国から離れて暮らしているため、親孝行しづらいことが悩み。「アカデミックの仕事を選んだのは、休みが長いことも理由の一つです。夏の1ヶ月は実家に帰って親孝行できるし、年末も休みが取れる」

高齢化社会という点で共通する日本とスウェーデンだが、「ケアホームの普及や介護制度では確かに高福祉国家のスウェーデン社会は優れています。でも私の考えでは、老親のケアはなるべく家族がする方が良い。祖父母と暮らして家族が温かくケアするケースを日本ではよく見ます。年長者への恩を返す美しい精神が生きているのがとても良いですね」。家族関係のみならず、日本の先輩後輩や師弟関係など、礼儀やコミュニティの絆の強さに「感動した」と語る。

現在は博士論文に初期トーキー映画と1930年代に日本の映画業界はどうやってサウンドフィルムに移行したかの研究を加え、日本語で書籍にまとめる作業をしており、「できれば日本の出版社で、良い本を出す努力をしたいと思います。これからも日本の映画文化を海外に紹介していきたいですね」と言う。日本の伝統的な家屋や自然の美しさにも魅了されており、「近いうちに東京から離れた古民家を購入し、再生して住みたいと考えています」と、日本での暮らしを心から楽しんでいる。