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Highlighting JAPAN

外国人市民と共に

愛知県豊橋市は、外国人との共生社会の実現を目指し、全ての人が暮らしやすい地域づくりを行っている。近年は、外国人市民が地域社会で活躍できる場も増えつつある。

1990年に改正された出入国管理法により、「定住者」の在留資格が創設され日系3世まで就労可能になると、群馬県、静岡県、愛知県など自動車関連産業の集積地で日系南米人の受入れが相次いだ。1990年代後半には、定住者外国人が住民の半数に及ぶ「外国人集住地区」が登場したことで、同時に様々な課題にも直面することとなった自治体は、外国人受入れと同時に、共生社会の実現のため積極的な取組を続けてきた。愛知県豊橋市もその一つである。

2006年に総務省が「地域における多文化共生推進プラン」を策定したことを受け、豊橋市は同年「平和・交流・共生の都市宣言」を宣言し、2009年には「豊橋市多文化共生推進計画」をその具体的行動計画の一つに位置付けている。

豊橋市の市民協創部、多文化共生・国際課の主査である三輪田貴さんにお話を伺った。

「2009年に策定した多文化共生推進計画(2009-2013年度)は、今年、第3次計画となり、事業数も第1次計画の50から65に増えました。これは近年、多国籍化や在留資格の構成変化など、支援ニーズが多様化しているためです」

2019年4月1日の豊橋市の人口は376,181人で、そのうち外国人は17,601人となっている。豊橋市では、1990年から日系ブラジル人の移住が始まり、2008年には約1万3千人余りに達したが、リーマンショックのあおりで帰国したことで、一時期日系ブラジル人の移住人数は減少した。変わって2008年以降、入国者数が顕著になったのがフィリピン人だったが、2015年からは帰国していた日系ブラジル人が豊橋市に再度移住し、現在は、この2か国を中心とした移住人数が増加傾向にある。最も多いのがブラジルの7,911人、次いでフィリピンの3,685人となっている。同市によれば、2015年からの伸び率が最も高いのはベトナムで、今後はさらに、インドネシアなど東南アジアからの移住者の増加が予想される。

豊橋市はこうした状況を踏まえ、これまでの英語、ポルトガル語だけではなく、市役所にタガログ語に対応する外国人相談窓口を設けるなど多言語化を進めている。この窓口から関係各課につながれ、各課窓口にも3か国語計6人の通訳が配置されている。

教育分野では、2018年、来日して間もない中学生や外国人学校から市内の中学校に編入する外国人生徒のための初期支援校「みらい」を市立豊岡中学校内に開校した。支援校にはポルトガル語、タガログ語の相談員が配置され、2か月間集中的に日本語の読み書きと会話に加え英語や数学も学ぶことができる。また、生徒は「みらい」に通う間も週に1日はそれぞれが居住する学区の中学校に通い、その後の編入学を円滑なものにするよう取組を行っている。

豊橋市では、多文化共生事業の見直しや新規事業の立ち上げのために、市民アンケートや外国人市民会議から意見の聞き取りを行ってきた。それを反映した第3次計画には、新たな課題として、外国人市民の高齢化の問題が盛り込まれた。現状では、外国人市民の平均年齢は30代前半だが、豊橋市では将来を見据えて、乳幼児期から老年期に至るまでの各ライフステージに対応した支援の準備を始めている。

また、NPOを始め外国人市民を支援する民間団体との連携も強化していく方針である。民間の活動により、外国人市民を好意的に受け止める市民の意識も年々向上しており、近年では外国人市民が地域社会で活躍できる場も増えつつある。

「町内の自治会役員を外国人が務めるという事例もでてきました。また、外国人の赤十字の救急法指導員も誕生しましたが、これは日本初だそうです。外国人も豊橋市民の一員として、支援する側でもあるという土壌ができるのは、喜ばしいことです」と三輪田さんは話す。

豊橋市では、外国人市民が持つ、日本人とは異なる価値観、文化、個性を、既存の日本人の価値観と融合することで、地域の発展に役立て、より一層活力ある社会づくりを進めている。