Home > Highlighting JAPAN > Highlighting Japan September 2019 > 多様な日本文化の世界

Highlighting JAPAN

新たな次元のエンターテーメント

日本の2次元のマンガ・アニメ・ゲームの世界を3次元に舞台化した日本発の「2.5次元ミュージカル」が国内外で人気を集めている。

世界中で人気の日本発の舞台エンターテインメント「2.5次元ミュージカル」。その特色は、日本の漫画やアニメ、ゲームを原作とし、その世界観を忠実に舞台化していることにある。端緒となったのは、2003年に初演されたミュージカル『テニスの王子様』だった。中学校の強豪テニス部を舞台にしたこの作品では、原作漫画に登場するキャラクターの再現性や、テニスの試合を照明と音で再現した演出などが口コミで話題を呼び、原作ファンでもある若い女性を中心に多くの観客を魅了した。2014年には、2.5次元ミュージカルを、一過性の人気に終わらせず演劇ジャンルとして確立するために、一般社団法人 日本2.5次元ミュージカル協会が設立された。2003年当時、年間上演作品数17作品、年間観客動員数12万人だった市場は、2018年には197作品、278万人にまで成長した。

日本では「2.5次元ミュージカル」と呼ばれ始める以前から、漫画やアニメ、ゲームの舞台は実施されている。1974年には、100年を超える歴史がある宝塚歌劇団が「ベルサイユのばら」を初演、その後、現在まで人気演目として再演を繰り返している。また、2015年には漫画「ワンピース」が歌舞伎の演目にもなっている。

日本2.5次元ミュージカル協会広報担当の遠田尚美さんは、「2.5次元ミュージカルという言葉は2次元の原作の世界観を忠実に3次元の舞台にしているという意味で、ファンの間で自然発生的に呼ばれるようになりました。人気の理由は好きな原作のキャラクターやその世界観が壊されることなく3次元の舞台に再現されていることです」と話す。

今も上演が続くロングランとなったミュージカル『テニスの王子様』を始め、日本の戦国時代をアレンジしたゲームが原作の斬劇「戦国BASARA」、女の子たちが戦士に変身して悪と戦う少女漫画が原作のミュージカル「美少女戦士セーラームーン」、死神が人間界に落とした一冊のノートをめぐる頭脳戦を描いた漫画が原作の『デスノート THE MUSICAL』など演目も多彩で、それぞれが原作に忠実な世界観や個性的なキャラクターに彩られている。

2.5次元独特の演出もその魅力の1つである。高校生の自転車レースを描いた漫画が原作の舞台『弱虫ペダル』では、自転車そのものは舞台上に登場せずハンドルとキャラクターを演じる役者の激しい運動量で、迫真の自転車レースを表現した。また、忍者同士の友情、裏切りと復讐、師弟や家族の絆を描いた漫画が原作であるライブ・スペクタクル「NARUTO-ナルト-」では、LEDライトを仕込んだ衣裳などで忍術を再現、高校のバレーボール部を描いた漫画が原作のハイパープロジェクション演劇「ハイキュー!!」では、プロジェクションマッピングを多用し、登場キャラクターの心理や試合シーンの臨場感を表現するなど、最新技術も取り入れながら様々な演出により進化を続けている。「表現の自由度の高い2次元の原作を、物理的制約のある舞台で表現することは難しい。観ているお客様に脳内補完していただくことで、初めて舞台作品が完成するんです」と遠田さんは言う。

最近では原作の漫画が、アニメ化、ゲーム化、小説化、実写ドラマ化、実写映画化などと同時に舞台化が進行することも多くなった。以前はほとんどの作品の観客は原作ファンが中心であったが最近では、舞台を観て原作のファンになるなど、ファン層も広がった。原作が日本が誇る漫画・アニメ・ゲームであることから、日本2.5次元ミュージカル協会では、海外からもチケットが購入できるサイトを開設するなど、海外への発信にも力を入れている。海外での公演は中国などのアジアを中心とする公演や、昨年はフランス・パリ、今年3月にはアメリカのワシントンD.C.、NYのブロードウェイでの公演もチケットがSOLD OUTとなるなど実績を残している。

「日本の漫画原作は海外のファンの方に本当にリスペクトされていて、日本人が演じることで、『ホンモノが来た』と言っていただけます。今後は2.5次元ミュージカルの認知をもっと上げることで、演目を観劇することを目的に来日される海外のお客様ももっと増やしたいですね」と遠田さんは今後の目標を語る。