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Highlighting JAPAN

“じょんのび”日本を旅する

生まれも育ちもアメリカであるが、ナタリー・エモンズさんは日本のテレビではお馴染みの顔である。テレビやコマーシャルに出演する女優としてよく知られるエモンズさんは、最近、「日本遺産大使」に任命され、旅番組のホストとして、日本の美しさや伝統文化を伝えている。

ナタリー・エモンズさんが、最初に出演したテレビCMで流暢な日本語を披露すると、視聴者の多くは、声は日本人の吹き替えと思ったほどであった。彼女はアメリカ・カリフォルニア州出身で、日本とアメリカで活躍する女優でありシンガー・ソング・ライターである。このCMでは、ほとんどがヨーロッパ人であるスタッフに対して、自らの日本文化の経験を踏まえ、日本の服装や仕草に関してアドバイスもした。

学生時代、ナタリーさんは、日本の友人と日本のアニメやドラマを見ることで、日本への興味を膨らませていった。特にアニメ映画「千と千尋の神隠し」に描かれた、温泉の文化や古い木造建物、全てのものに神様が宿るという世界観に強く興味を引かれた。その友人の家で食べる、日本の素朴な家庭料理も大好きであった。「今まで食べたことのない味にとても驚き、休暇の旅行で行くのではなく、日本で生活したいと思ったのです」とナタリーさんは笑う。

それが実現したのは、関西の大手テーマパークの歌手となった2010年のことである。彼女は大阪に引っ越し、エンターテイメント業界の友人との会話を通して日本語を学んだ。「言葉を覚えるには、これが一番早い方法です。じっと耳を澄まして色々な人の声を聞けば、言葉も文化も楽しく学ぶことができます」とナタリーさんは言う。

その後、CM、歌番組、テレビドラマなど活躍の場が広がっていった。2018年にはテレビ番組「じょんのび日本遺産」のホスト役となった。「じょんのび」とは新潟の方言で「ゆったり、のんびり」という意味である。番組では、ナタリーさんが、文化庁が認定する「日本遺産」を訪ねる。各地でナタリーさんは、伝統、建築、芸能、農業を知り、そして、地域の華やかな食事も度々味わっている。これまで30カ所以上の日本遺産を巡ってきたナタリーさんは、素晴らしい経験ばかりだと言う。

中でも最も印象に残っているは、島根県に伝わる伝統芸能で、日本の神話を題材とした「石見神楽」だと言う。番組ではナタリーさん自身も衣装を付け、面を被り、地域の人たちに交じって踊った。「とても緊張しましたが、このような伝統芸能に参加できて光栄でした。面を被ると神秘的な力が自分に流れ込むように感じました。終演後に面を外すと、汗と涙がこぼれ落ちました。今まで感じたことがない感動的な経験でした」と語る。

また山形県鶴岡市を流れる最上川を冬の日の午後に旅をしたことも印象深かったと言う。カリフォルニア出身のナタリーさんは、雪には慣れていなかったが、船に作り付けられたこたつで暖をとりながら山々の景色と地元の料理を楽しんだ。「日本には豊かな四季があるので、一年を通じ、移り変わる自然や季節の行事を楽しめるのです。番組では歴史的な遺産も含め、様々な日本の姿に出会うことができました。そのどれもが、私の人生にとって貴重な経験となっています」とナタリーさんは言う。

2019年5月には文化庁から「日本遺産大使」にも任命され、日本と世界の架け橋としての活躍がますます期待される。「女優としての活動も続けていく予定ですが、これからももっと色々な経験を日本で積み、二か国語で脚本を書けるように日本語のスキルを上げていきたいです」。それが、ナタリーさんが描く将来の夢である。