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Highlighting JAPAN

盆踊り:日本の夏の象徴

盆踊りは日本中で何世紀にもわたってあらゆる年代の人によって踊り継がれてきた。多くの人にとって盆踊りは日本の夏祭りのハイライトである。

浴衣姿の一人の女性が、東京・日比谷公園の円形大噴水を囲む細い大理石の縁石の上であでやかに舞う。縁石の下で踊る人々の歓声が上がる中、彼女は両手を頭上で優雅に揺らし踊っている。

踊り手たちは、「お盆」のハイライトである「盆踊り」のために集まってきた。何世紀にもわたって引き継がれてきたお盆は毎年日本中で行われる行事で、亡くなった人の魂を供養する仏教行事である。

厳粛な儀式が起源であるにもかかわらず、盆踊りに暗さは感じられない。

地域によって踊り方や曲は異なるものの、浴衣を身に付けた踊り手は通常、「やぐら」と呼ばれる高い台の周りを踊る。やぐらは演奏者や歌手が伝統的なお盆の曲や民謡などを披露する舞台としての役目も果たす。

道路、公園、寺の敷地など、幾列にも並んだ提灯の下で踊られる盆踊りは、比較的シンプルな動作の踊りである。あらゆる年代の参加者が輪になり、踊る。

経験豊かな踊り手たちが輪の内側の方で踊ることが多く、一方、あまり経験のない踊り手たちは飲食物を売る色とりどりの出店に近い輪の外側の方で踊ることが多いようである。

盆踊りは、地域の人々が共に飲んだりおしゃべりしたりするための場でもあるが、踊るためだけに集まる人も多くおり、時には夜明けまで踊り明かす。

「盆踊りが大好きなのです。いくら踊っても踊り足りないぐらい」と、東京の日本伝統舞踏保全グループのメンバーである山田久美子さんは言う。「東京以外の場所で開催される盆踊り行事にも行きます。活気あふれる雰囲気が大好きなのです。日本の夏の象徴です」

盆踊りの起源は「念仏踊り」であると言われている。日本の伝統舞踊の専門家である鳳蝶美成さんによると、念仏踊りは鎌倉時代(1185年~1333年)に始まった、仏教徒が念仏を唱えながら行う踊りである。鳳蝶さんは大学で日本三大盆踊りの一つである「郡上おどり」に関する論文を執筆した人物である。

「およそ500年前に日本でお盆祭りが始まると、念仏踊りは祭りに欠かすことのできないものとなったのです」と鳳蝶さんは語る。日本民謡協会の教授として活躍する彼は、盆踊り教室「鳳蝶会」も運営している。

「盆踊りは、亡くなった人の魂を迎え慰めるためのものというのが通説です。やぐらは亡くなった先祖が降り立ち、生きている人と会話しながら一緒に行事を楽しんでもらうために組みます」と鳳蝶さんは語る。

伝統的な踊りを守ろうとする地域もあるが、東京のような大都市圏では伝統曲の代わりにポピュラーソングを用いるなど進化し続けている。

また、従来の三味線や笛などの伝統楽器による生演奏の代わりに、録音された演奏が使われることも増えてきた。

昨年、鳳蝶さんは自らの活動拠点である東京・中野区の盆踊り行事に加わった。ディスコナンバーやロックを流すゲストDJも参加した。

その中の一曲が、アメリカのロックバンド、ボン・ジョヴィの『Living on a Prayer』であった。『Bon dance meets Bon Jovi』(盆踊りがボン・ジョヴィに出会う)というビデオがソーシャルメディアにアップロードされ、15万件もの「いいね!」が付けられた。バンドリーダーであるジョン・ボン・ジョヴィ自身から、感謝のメッセージも寄せられた。

「全国から集まってきた人が東京に住んでいます。だから盆踊り行事も、色々な要素が入り混じるようになってきています」と話すのは、8月に日比谷公園で開催された祭りで友人たちと踊る高橋優人さん。「東京は国際的な都市だから、外国曲を取り入れるのもごく自然な気がします」

事実日比谷の行事では、人気のJ-Pop歌手の曲や外国曲が、東京でよく知られている盆踊りの曲『東京五輪音頭』と共に使われていた。

『東京五輪音頭』はもともと、1964年に開催された前回の東京オリンピックのために作られた曲である。新しくなった歌詞とよりシンプルになった振付の新バージョンが、2020年東京オリンピック・パラリンピックへの期待を込めて最近発表された。リリース時には、初心者に振付を手ほどきするためのユーモラスなビデオも発表された。

「歌と踊りは、人種、性別、地位にかかわらず、世界中の人が一緒になって楽しめる世界共通の言語です」と鳳蝶さんは語る。これは、2020年東京オリンピック・パラリンピックが掲げる『Unity in Diversity (みんなの輝き、つなげていこう)』というメッセージを表するものと鳳蝶さんは考えている。「2020年東京オリンピックを通して、この代表的な日本文化が世界言語の一部となれば素晴らしいです」