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Highlighting JAPAN

人気高まるストリートダンス

1980年代に日本に上陸したストリートダンスは、急速に人気を集め、現在ではダンスは学校で野球やバレーボールなどのスポーツに並ぶほどの人気となっている。

周りまで元気にするようなエネルギッシュなチーム「じゃがりこ」と老練さを感じさせるチーム「三ツ矢サイダー」との緊張感あふれるバトル。それぞれのチームを構成する4人のメンバーが次々にフロアに登場し、ヒップホップ、ポップ、ロック、フリースタイルの4つのジャンルから1つ選んでスキルを披露する。コンテストのステージでは高い技術が競われ、才能、立ち振る舞い、オリジナリティが問われる。そして、どちらのチームも確実にそれらを備えている。2019年の「バトルパーク」チャンピオンとして、審査員がごくわずかの差でチームじゃがりこに軍配を上げると、東京で開催されたShibuya StreetDance Week(SSDW)の盛り上がりは最高潮に達した。チャンピオンチームのメンバーである小学5年生の高松勇太さんは「とてもわくわくしました」と語る。彼はポップカテゴリーで、ピンストライプのスーツとトリルビーハットに身を包み、様々な愉快な表情を浮かべながら、衝撃的なパフォーマンスを披露し、会場を沸かせた。

ストリートダンスをできるだけ多くの人に知ってもらうことを目的として、渋谷周辺の会場でコンテストやワークショップを開催するSSDWは、日本のストリートダンスシーンではそれほど歴史が長いわけではないが、急速にファンを増やしている。今年の来場者数は約39,000人。初年度2015年と比べて約3倍となった。

ストリートダンスは、1980年代にニューヨークのブロンクス地区から日本に持ち込まれた。同地では、1970年代からビーボーイング/ビーガーリングやヒップホップなどのジャンルが路上で発展し、地域文化に欠かせない要素となっていた。

日本でストリートダンスが広まったきっかけは、深夜に放送されたアメリカの人気音楽テレビ番組『Soul Train』だった。1980年代後半にMusic Television(MTV)が日本で初めて放送されると、その勢いは一段と強まった。

それから数年後、TRFがポップミュージック界にセンセーションを巻き起こした。DJ Kooがリフやストリート色の強いダンスの動きに影響を与え、ダンス界のレジェンドとなったSam、Etsu、Chiharuがそれを踊った。彼らはヒップホッパーを夢見る世代に刺激を与えた。

1990年代半ばには、特に高層の商業ビルや百貨店のファサードなど、自らの踊りが映る反射ガラスがある場所で、日本の若者が夜の街でポップやロック、トップロックを踊る光景も珍しくなくなった。

一見すると彼らの踊りは自己陶酔しているだけのものに見えるが、大阪や東京といった大都市圏を中心に注目を集める無数のコンテストやストリートダンスイベントに目を向けると別の側面が見えてくる。

即興に大きく依存するジャンルであることを考えれば矛盾するようだが、ストリートダンスのスクールやスタジオは続々とオープンしている。レコードレーベルとして、TRFや安室奈美恵などダンスに重点を置くアーティストをプロデュースしたエイベックスは、「エイベックス・ダンスマスター」プログラムを2001年に東京で開校し、その後全国に拡大していった。

また日本政府がフォークダンスと創作ダンス(基本的には社交ダンス)に加え、「現代的なリズムのダンス」という名称でストリートダンスを教育カリキュラムに取り入れたことで、2013年からその人気は数段アップした。文部科学省のウェブサイトによれば、「イメージをとらえた表現や踊りを通した交流を通して仲間とのコミュニケーションを豊かにする」というのが導入した根拠である。

大阪に拠点を置くストリートダンス協会によれば、現在では高等学校だけで2,000以上のストリートダンス部がある。リズムダンスを含めた、日本のストリートダンス人口は2020年には少なくとも2,000万人になると推定されている。ストリートダンスは学校で野球やバレーボールなどのスポーツに並ぶ人気となっている。

もう1つ、組織化されたイベントとして全国で徐々に支持を拡大しているのがShibuya StreetDance Weekでも中心となった多数のダンスバトルであると中西幸子さんは言う。中西さんは、渋谷に本社を置く百貨店チェーン、パルコのエンタテインメント事業部プロデューサーであり、アーツカウンシル東京が主催する渋谷ストリートダンスイベントの仕掛け人の1人である。

渋谷は誰もが認めるストリートダンスのメッカであるとし、中西さんは次のように語る。

「ストリートダンスは明らかに一時的な流行ではなく、現代の若者文化にしっかりと根を下ろしています。私が学生の頃、野球をする生徒がクラスで人気でした。その後は、サッカーになりました。それが今はストリートダンスなのです」

渋谷のイベントでは、東京の代々木公園内にある屋外ステージで行われた高校生対抗ストリートダンス選手権がもう1つのハイライトだった。優勝チームは、東京都立狛江高等学校である。同校の卒業生でプロダンサーとして活躍する矢澤明日香さんがコーチを務める。

「今の日本のストリートダンスが昔と大きく異なるのは、こうした生徒たちの一部が確実にプロとして活躍し、国際的な舞台に出ていく可能性さえあるということです。今では日本人のストリートダンサーが海外でパフォーマンスをすることも全く珍しくなくなりました」と矢澤さんは語る。

イベントのダンスバトルで音楽を担当したDJ Hirokingもこれに同意する。「2015年にSSDWが始まって以来、どの年齢層でも参加者のレベルが著しく向上しています。来年はどうなるのかと考えるとわくわくします」