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Highlighting JAPAN

人をつなぐお好み焼き

中南米グアテマラ出身のフェルナンド・ロペズさんが営むお好み焼き屋には、連日、国内外から多くの人が訪れる。

「お好み焼き」は、水に溶いた小麦粉に、肉や海鮮、野菜など具材を合わせた「タネ」を、鉄板で円盤状に焼き上げ、特製のソースをかけて食べる人気の大衆料理である。野菜や果物にスパイスを加えて仕上げたソースは独特の甘味があり、これがお好み焼きには欠かせない。

日本国内でお好み焼きが有名な都市は大阪府と広島県である。大阪のお好み焼きは、水に溶いた小麦粉に具材を混ぜて焼き上げる。一方、広島のお好み焼きは、最初に生地を薄く焼き、その上にキャベツ、豚肉、卵、麺などの具材を重ね上げて焼いていく。大阪のお好み焼きは濃厚で、広島はあっさりした味わいである。

近年、広島では、チーズやキムチ等、味に変化を持たせるトッピングを乗せる店が増えており、中南米原産の唐辛子「ハラペーニョ」を乗せたお好み焼きも登場した。グアテマラ出身のフェルナンド・ロペズさんが営む広島市内のお好み焼き店「ロペズ」が最初にハラペーニョを最初に取り入れたと言う。

「以前、隣の会社で働く常連客が、『辛い物をお好み焼きに乗せて』と言われて出したハラペーニョを気に入り、その後メニューに追加しました。ハラペーニョはお好み焼きとは合わないと私は思ったのですが、他のお客さんも気に入って定着しました」とロペズさんは話す。ロペズさんのお好み焼きは、味にうるさい地元のお客さんにも認められ、17席の店内は連日のように満席となる。

ロペズさんは、内戦が続き政情が不安定だったグアテマラで生まれ育ち、学校を卒業するとともに、アメリカ在住の親類のもとへ渡米した。もともと料理好きだったロペズさんは、アメリカで料理人の見習いを始めた。たちまち、その技量と勤勉さがシェフに認められ、次々にステップアップしていった。そしてハワイのホテルで働いていた時に知り合った広島出身の日本人女性と結婚、「将来、子供を育てるなら日本が良いと思い、1995年に広島へ移住しました。グアテマラへ帰る事は選択肢にありませんでした。日本に行く、もう一つの目的として、店をするという事がありました。日本で暮らしてから4年間はその目的が実現せず、どうしようかと諦めかけていたところ、妻の叔母にお好み焼きの店を勧められました」とロペズさんは話す。

そこで広島のお好み焼きの名店に修業に入ると、ロペズさんの確かな料理の腕前を認めた店主が、お好み焼き作りの技を惜しみなく伝え、ロペズさんの店の開店にも尽力してくれた。お好み焼きを焼く鉄板は、味を左右するため、その店主にも設計に関わってもらった。鉄板は3センチもの厚さがあり、温めるのに45分、温度を安定させるのに15分、計1時間かけて毎日火加減の調整をする。厚くて大きな鉄板は、時間をかければ、満偏なく火が通るので、お好み焼きを焼く位置によって、熱が強すぎたり弱すぎたりすることがない。この鉄板でじっくり15分かけて焼くのがロペズさんのお好み焼きの味の決め手となっている。鉄板は厨房を囲むように設置され、客はその鉄板から直接お好み焼きを食べる。「鉄板は隣のお客さんと仕切りがなくつながっているので、知らないお客さん同士で会話が始まることもあります。それもお好み焼きの良い所ですね」とロペズさんは言う。

「厳島神社」「原爆ドーム」という2つの世界遺産がある広島には、たくさんの外国人旅行者が訪れ、口コミでロペズさんの店にお好み焼きを食べにくる人も多い。「『日本に住みたい』と言うお客さんも多いです。日本ほど平和で安全な国は世界中にそうないからです。日本に暮らしていると、たくさんの人たちが努力してきたからこそ、その平和が築かれ維持されていると強く感じます」とロペズさんは話す。

ロペズさんは毎日閉店後、深夜まで鉄板をきれいに磨き上げる。お好み焼きを通じて、お客様同士がつながり、笑顔あふれるお店にするために。