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February 2020

地球や生命の起源を探る

小惑星探査機「はやぶさ2」は小惑星「リュウグウ」に着陸し、太陽系や地球生命の起源の解明の鍵を握るサンプルの採取に成功した。2020年1月現在、壮大なミッションを終え、地球に向けて帰還の途にある。

2014年12月に打ち上げられた小惑星探査機「はやぶさ2」は、2018年6月に地球から約3億キロメートル離れた小惑星「リュウグウ」に到達した。その後、「はやぶさ2」は直径1000メートルほどの小惑星上空に1年5ヶ月ほど滞在しながら数多くのミッションをこなし、2019年11月、リュウグウに別れを告げて地球に向けて帰途に就いた。

「私たちのプロジェクトの目的を一言で言うなら、小惑星の地表の物質を採取して地球に持ち帰る『サンプルリターン』ということになります。それは2003年に打ち上げた初代『はやぶさ』から引き継がれたものです」と宇宙航空研究開発機構(JAXA)で「はやぶさ2」ミッションマネージャを務める吉川真さんは話す。

「はやぶさ」は、地球から約3億2,000万キロメートル離れた小惑星「イトカワ」に到達した探査機で、世界で初めて、月以外の天体に着陸してサンプルを採取し地球へ持ち帰ることに成功した。ただし、その行程は非常に険しく、通信途絶やエンジンの故障といったトラブルを乗り越えた往復7年に及ぶ宇宙の旅は「奇跡の帰還」と呼ばれた。

「小惑星のサンプルを持ち帰るというプロジェクトは、それまで誰もやったことがなかっただけに、『はやぶさ』の時には想定外のトラブルが幾つも発生してしまいました。しかし、今回はそれらをしっかり検証することにより、探査機の性能も私たちの運用能力も格段に進歩したのです。これまでのところ大きなトラブルはなく、映像や画像で見る限りサンプルの採取も非常にうまくいったと思われます」と吉川さんは言う。

「はやぶさ2」が小惑星のサンプルを持ち帰る大きな目的は、サンプルを分析し、太陽系の起源や進化、地球生命の原材料物質を解き明かすことである。太陽系とともに46億年前に誕生した地球は、原材料物質が一旦溶けて固まって形成されているため、その物質がどのようなものであったのかは地球の物質を調べたのでは分からない。しかし、リュウグウのような太陽系の小惑星は、太陽系や地球が誕生した頃の状態から、ほとんど変化していないと考えられており、地球など太陽系の惑星を形成した原材料物質がそのまま残されている可能性が高い。

今回、「はやぶさ2」はリュウグウに2回タッチダウン(接地)し、サンプルを採取している。その方法は、表面に到達した瞬間に重さ5グラムの金属製弾丸を高速でリュウグウ表面に打ち込み、その衝突で表面から舞い上がった物質を採取するというものである。2回目のタッチダウンの前には、高度約300メートルから、重さ2キロの銅の塊をリュウグウに打ち込むことで、直径約10メートル、深さ2〜3メートルの人工クレーターを小惑星では世界で初めて作ることに成功している。2回目のタッチダウンは、このクレーターの近くで行われたので、太陽光や放射線などによる風化の影響を受けていない小惑星内部のサンプルを採取できたと予想されている。

サンプル採取以外にも、「はやぶさ2」はJAXAが開発した2機のローバを分離し、リュウグウに着陸させることに成功している。ローバは自律的に飛び跳ねながら移動して、画像撮影等を行なった。また、ドイツとフランスが共同開発した小型着陸機「MASCOT」の分離、着陸にも成功、MASCOTは表面の詳細な撮影や表面温度・磁場の測定を行なっている。

「私たちの組織は、予算規模ではNASA(アメリカ航空宇宙局)やESA(欧州宇宙機関)とは比べようもありません。しかし、小惑星探査分野では、誰もなしえたことのない最先端の成果を上げてきました。そのため、「はやぶさ2」には欧米の研究者たちも大きな関心を寄せています。特に、小惑星にほぼピンポイントで着陸ができる私たち独自の技術や運用能力は、今後の宇宙開発における国際協力でも大きな力を発揮するでしょう」と吉川さんは話す。

6年に及ぶ長旅を終え、「はやぶさ2」は2020年末に地球へと帰ってくる。その時回収されるサンプルの分析が進めば、太陽系や地球生命の起源などの大きな謎を解明する糸口になるかもしれない。