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February 2020

地球を守る宇宙開発


宇宙航空研究開発機構理事の若田光一さんは、これまでに4度の宇宙飛行を果たした宇宙飛行士である。宇宙での滞在日数が計347日にも上る若田さんに、宇宙の印象や宇宙飛行士としての活動、日本の宇宙開発について話を伺った。

宇宙に興味を持つようになったきっかけをお教えください。

1969年、私が5歳の時にアポロ11号で人類が初めて月面着陸しました。その様子をテレビで見て、宇宙への憧れを抱きました。ただ、当時、宇宙飛行士といえば、アメリカ人や旧ソ連の人でしたので、日本人である自分には宇宙に行くことは難しいと感じていました。

小さい頃から、飛行機が大好きだったこともあり、大学で航空工学を学んだ後、航空会社の技術者としての仕事に毎日大きなやりがいを持って励んでいました。就職して3年目、新聞で宇宙飛行士候補者募集を知り、5歳の時の宇宙への憧れが蘇り、応募しました。合格できるとは全く考えていませんでしたが、1992年、幸運にも候補者として選ばれました。

これまでの宇宙飛行でどのようなことが印象に残っていらっしゃいますか。

1996年にスペースシャトルで初めて宇宙に行った時に見た青い地球は忘れられません。このような美しい惑星に生まれて本当に良かったと思いました。

4度目の宇宙滞在で、国際宇宙ステーション(ISS)に2013年11月から2014年5月まで滞在した時のことも印象に残っています。ISSは1日16回、地球を周回するので、半年滞在すると地球を3,000回以上周ることになります。すると、地球がいかに小さく、壊れやすいものであるかと感じるようになりました。ISSで二酸化炭素を除去する装置が故障すると、乗組員の生命に危険が及ぶように、地球環境が破壊されれば、人類は危機にさらされます。ISSでの長期滞在、月や火星での有人探査に向けて開発される技術や新たな知見は、人類の活動領域を地球外へと広げるためだけではなく、地球環境を守り、人類を存続させるためにも重要な意味を持っていると強く思うようになりました。

4度目の宇宙滞在では、日本人として初めてISSの船長(コマンダー)も務めましたが、船長として心掛けたことを教えてください。

私が船長を務めた時は、アメリカ人2人とロシア人3人が乗組員でした。それぞれの乗組員が持つ能力を引き出し、チームとして最大の成果を出すことが船長の役割です。そのために、船長として「和の心」を大切にするチーム作りを心掛けました。地上訓練の時から頻繁にコミュニケーションを取り、気兼ねなく意見を言い合えるチーム作りに努めました。

ISSの宇宙食には標準食とボーナス食がありますが、私はコミュニケーションのためにもボーナス食を活用しました。ボーナス食は自分の好みの食べ物を用意することができますが、このボーナス食に仲間の乗組員が好みなそうな食べ物を選びました。それらを彼らに振る舞うことは、彼らとのコミュニケーションをスムーズで、リラックスしたものにするきっかけにもなりました。ボーナス食として用意したカレーライスや魚料理などの日本食は、非常に好評でした。ISSのような娯楽の少ない閉鎖環境ではこうしたちょっとした気遣いも大切です。

宇宙開発における日本の強みはどのような所にあるとお考えでしょうか。

日本の宇宙技術は世界に貢献しています。小惑星「リュウグウ」に着陸した「はやぶさ2」などの探査機、打ち上げで高い信頼性を誇るロケット、ISSへの物資補給機「こうのとり」などの技術は日本の強みです。また、日本の温室効果ガス観測技術衛星は、信頼性の高いデータを提供していると国際的に評価されています。ISSの日本実験棟「きぼう」で行われている様々な実験の成果は今後、創薬や加齢研究等にもさらに大きく貢献するでしょう。また、「きぼう」からは、これまでに合計244機の超小型人工衛星が放出されています。その中にはケニア、フィリピン、コスタリカ等の国にとって初の人工衛星も含め、日本の国際協力で開発された衛星も多いのです。こうした、宇宙開発における発展途上の国々の人材育成も、日本の重要な役割です。

現在、JAXAが進めている主な計画をお教えください。

2019年10月、日本は、アメリカが主導し2024年までに着陸を目指す有人月探査に協力することを決定しました。JAXAは2021年度に、月探査に必要な高精度着陸技術を実証する「SLIM」を打ち上げる予定です。2023年度には、インドと協力して、月の南極に着陸して水資源の探査を行う無人探査機の打ち上げを計画しています。これらによって得られる成果は、有人月探査にも大きく貢献します。

また、JAXAはトヨタ自動車と燃料電池を使って月面を走る有人宇宙ローバーの共同研究を進めています。今後、これまで宇宙分野に参画していなかった企業にも仲間を増やし、宇宙と地上の両方で役立つ技術の研究開発に取り組んでいきます。