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  • 「なら仏像館」には仏像が展示されている。
  • 奈良公園の鹿

December 2020

日本の古代文化の宝庫「奈良」を巡る

「なら仏像館」には仏像が展示されている。

奈良県は世界遺産や、数々の貴重な文化財を有する美術館、博物館が多く、古(いにしえ)の日本の歴史や文化を堪能することができる特別な場所である。

奈良公園の鹿

奈良県は本州の太平洋に張り出した紀伊半島の中央部に位置し、その北部は京都に接している。奈良は現在、日本で最も多い3つの世界遺産を有している県である。その3つは、「古都奈良の文化財」、「法隆寺地域の仏教建造物」、そして奈良県、東側の三重県、西側の和歌山県にも続く「紀伊山地の霊場と参詣道」である。また、これらに加え、奈良には国宝や重要文化財などの文化財も多い。県を訪れる人が、こうした豊かな奈良の文化遺産への理解を深められるように、県内6館の美術館と博物館が文化庁から文化観光拠点施設として認定されている。

6世紀に大陸から日本に仏教が伝来したことは、奈良を中心とする日本文化の発展につながった。その当時、仏教の教えに影響を受けた聖徳太子によって建てられたのが法隆寺である。法隆寺は現存する世界最古の木造建築で世界的にも大きな価値がある。

世界遺産暫定一覧表に記載されている「飛鳥・藤原の宮都とその関連資産群」は飛鳥時代に作られた主に宮殿、庭園、寺院、墳墓などの20の資産からなっており、その一つ、明日香村の高松塚古墳は、国宝の色鮮やかな壁画が有名である。

飛鳥時代の後、現在の奈良市を中心にして築かれた平城京に都が置かれた奈良時代(710-794)が始まる。この時代、仏教文化が花開いた。世界遺産「古都奈良の文化財」の8つの構成資産は全て奈良市にある。奈良市には隣接する京都からも特急電車に乗れば約30分で訪れることができる。駅から直ぐの奈良公園には神聖とされる鹿が歩いている。奈良公園周辺には、大仏で有名な東大寺、春日大社やその神域である春日山原始林、興福寺、文化観光拠点施設の一つとなっている奈良国立博物館がある。

「奈良公園は、もともと興福寺の境内で春日大社に隣接しています。その春日大社の祭神のお一方『タケミカヅチノミコト』が、茨城にある鹿島神社から鹿に乗ってこの地にやってきたと伝わるため、鹿は神の使いとして古の時代から保護され、今に至っています」と奈良国立博物館総務課の川島慧一さんは話す。「ここを訪れる人は、飛鳥・奈良時代の古都の雰囲気を感じさせる自然に魅了されるのではないでしょうか」と、川島さんはこの地域の魅力を説明する。

奈良国立博物館の「なら仏像館」に足を踏み入れれば、飛鳥時代から鎌倉時代までの700年代を中心とする100体余りの仏像を拝観できる。

「仏像には、それぞれの時代ごとに特徴があり、変遷を感じとることができますが、奈良には他の地域にはあまりない、平安時代以前の古い仏像がたくさんあり、その個性的な造形に魅力を感じています」と奈良県文化資源活用課の野中宏美さんは言う。

世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」は、奈良県、和歌山県、三重県にある3つの霊場とそれらを結ぶ道で構成される。奈良県内の資産には、吉野山や、修験道の中心寺院である金峯山寺(きんぷせんじ)がある。吉野山は、山岳信仰が仏教と習合して成立した修験道の修行の場で、山桜の名所としても知られる。

こうした歴史的な地域の保存や振興に加え、奈良県は現在、県の魅力向上のために農業分野も活用している。例えば、奈良県が2016年に、県中央部の桜井市に設立した「奈良県立なら食と農の魅力創造国際大学校」(NAFIC)は、料理人や農業分野の人材育成を目的にしている。また、学生の実践実習施設として学校に併設されている宿泊施設「オーベルジュ・ド・ぷれざんす 桜井」では、県産の野菜や肉を使ったフランス料理を楽しむことができる。

「今後、各自治体、博物館、美術館、民間企業など様々な組織との連携を強化して、奈良の幅広い文化の魅力を更に発信していきたいです」と奈良国立博物館の川島さんは話す。

数日以上滞在すれば、奈良の豊富な魅力を十分に堪能できることは間違いない。

奈良県の世界遺産の位置