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  • 徳川美術館の外観
  • 国宝「源氏物語絵巻」(部分)
  • 貴重な甲冑と刀剣が美術館に展示されている。
  • 国宝「初音の調度」(一部)
  • 名古屋城の天守閣

December 2020

大名文化の栄華を今に伝える徳川美術館

徳川美術館の外観

「尾張名古屋は城でもつ」という表現がある。徳川家康の命で築城した名古屋城を自慢した江戸時代の言葉である。その城の持ち主であった尾張徳川家に受け継がれた数々の美術品を所蔵する徳川美術館もまた名古屋自慢である。

貴重な甲冑と刀剣が美術館に展示されている。

徳川家康(1543-1616)は、1603年、幕府を開いて以来、自分の息子を大名として尾張、紀州、水戸の三つの藩を置いた。後に「徳川御三家」と呼ばれた三藩である。尾張藩(現在の愛知県等)は、その筆頭格であり、尾張徳川家の居城「名古屋城」は、その威光を今に伝える。

家康の命で1612年に建造された名古屋城は、石垣や庭園などの一部が現存している。1959年に復元された天守は、今では愛知県名古屋市のシンボルとなっている。その3キロメートルほど東、尾張徳川家の別邸が置かれた地に、徳川美術館がある。

徳川美術館は、尾張徳川家19代当主の徳川義親(よしちか)が、先祖代々受け継いできた大名の文化と伝統を後世に伝える目的で財団を設立して伝来品を寄付し、1935年に開館した。その所蔵品は、家康の膨大な遺品を受け継いだもの、歴代当主の愛用品などで、国宝9件、重要文化財59 件、重要美術品46 件を含む1万件余りにのぼる。

国宝「初音の調度」(一部)

副館長の市橋康吉さんは「当館所蔵品は、その多くが名古屋城内で家宝として大切にされてきたために保存状態が良く、それぞれの来歴の記録が残されていることが特徴です。大名文化を総覧できる美術館としては国内随一でしょう」と語る。

工芸の贅(ぜい)を尽くした刀剣や甲冑(かっちゅう)、茶器などの中にあっても、三代将軍家光の娘・千代姫が尾張徳川家2代の光友に嫁ぐ際に持参した婚礼調度品である国宝「初音の調度」は一際華やかさを放つ。手箱や化粧道具など総計70件余りの品は、約400年前の漆工技術の粋を集めた華麗かつ繊細なものばかりである。また、世界最古の長編小説の一つとも言われる『源氏物語』を12世紀前半に絵画化した『源氏物語絵巻』は、絵巻物の傑作であり国宝に指定されている。

国宝「源氏物語絵巻」(部分)

徳川美術館は、こうした貴重な宝物を度々入れ替えながら数多く展示しているほか、レプリカの刀剣や甲冑の試着体験、香の違いを聞き分ける「聞香」や、内側に彩色された蛤の貝殻の対になるものを選ぶ「貝合せ」といった日本の古来の遊びなどを体験できるイベントも、定期的に開催している。

「尾張徳川家当主が居住していた名古屋城の二之丸御殿の内部を、文献考証に基づいて一部再現した展示室も見所の一つです。名古屋城の方では、将軍の宿泊に供せられた本丸御殿が当時の図面を忠実に復元して、2018年に完成していますから、併せて観覧すれば大名文化の理解を更に深めてもらえると思います」と市橋さんは語る。

名古屋城の天守閣

現在の名古屋市の骨格は名古屋城を中心にした江戸時代の町割りがもととなっている。白壁、主税町(ちからまち)、橦木町(しゅもくちょう)などかつて武家屋敷が並んだ区画もその地名や街並みに江戸時代の面影を残すほか、尾張徳川家の菩提寺の「建中寺」や、歴代の名だたる武将たちから信仰を集めた「熱田神宮」も名古屋の歴史を物語る場所である。名古屋城では、名古屋市の楽しく、フレンドリーなおもてなし武将隊がサムライ装束で出迎えてくれる。名古屋は今も武将が遺(のこ)した伝統の魅力にあふれている。