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  • 日本の伝統的な器
  • 黒豆や数の子などが入ったお節料理の重箱
  • 一汁三菜の例:ご飯、漬物、味噌汁、野菜、魚
  • 懐石料理の盛り付けの例
  • 和食器に盛り付けられた洋食

January 2021

料理と器で「景色」を表現

日本の伝統的な器

和食においては、「器は料理の着物」*という言葉があるくらい、料理と器とが調和した盛り付けを重んじる。最近、家庭でのテーブル・コーディネートにおいて、料理と器を調和させている美しい盛り付けを愉しむことが提唱されている。

黒豆や数の子などが入ったお節料理の重箱

伝統的な和食は、一般的に「一汁三菜」が基本とされる。例えば、家庭でも、陶磁器の茶碗に盛られたご飯、漆器の椀に注がれた汁物、陶磁器の皿に盛られた肉や魚等がメインの主菜、さらに小皿に野菜やきのこ、海藻の副菜といったメニューである。季節や行事によって食材が変わるように、食器もそれに応じて変わるのも伝統である。しかし、一貫して変わらないことは、季節に合う器を選び料理を美しく盛り付ける気遣いである。そうした料理と器に最大限気を配る典型が日本料理の専門店である料亭や名だたる旅館で饗される日本料理であろう。季節の食材を選(よ)り抜き、それを美術品とも言える陶磁器や漆器の皿に盛り付け、日本人が言う一つの「景色」を描き出して、客をもてなすことに集中する。日本では、食事の良し悪しを決めるのは、料理の味はもとより、器の選択も大きな要素である。

テーブルウェアの祭典などで多くの受賞歴がある一般社団法人「知る・愉しむ~日本の器」の代表理事、西巻顕子(にしまき・あきこ)さんは、「日本料理は季節感を表現するのが基本であり、また、年中行事、例えばお正月には、おせちと言って黒豆や数の子をお出しするといった、おおまかな決め事があります。かたや、器も四季を表現したり、行事にふさわしいデザインが表現されているものがほとんどです。正月には吉祥柄、夏であれば見た目も涼やかな青海波(せいがいは)の柄など、季節や行事に合わせて器を選びます。そうした伝統的な基本を知っておくことは食事を愉しむ上でも大切なことです」と語る。

一汁三菜の例:ご飯、漬物、味噌汁、野菜、魚

また、器を選ぶには、料理に込められた思いを知ることだと西巻さんは言う。

「『寄物陳思(きぶつちんし)』という言葉があります。これは物に思いを託し表現するということ。正月料理を例に挙げると、黒豆を食べる理由は『まめ』と言う音が『まめに暮らす』、つまり『元気に暮らす』という意味につながります。数の子は子孫繁栄を祈る意味があります。そういった料理に込められた『思い』を大切にして、それにふさわしい器を選び、その料理を器の上に盛り付けて、どう表現し、どう感じてもらえるか―。そのように考えていくと、テーブル・コーディネートが更に愉しくなるのではないでしょうか」

懐石料理の盛り付けの例

器と空間のコーディネーションを手掛ける西巻さんは、和食用の器にかぎらず、洋食器も取り混ぜてコーディネートしたり、洋食をあえて和食器に盛り付ける事も提唱している。「例えば前菜を数品程度、漆塗りの重箱に詰めたら蓋を開けた時、宝箱のように目で愉しむことができます。重箱と洋食の相性は、とても良いのですよ。お試しください」と言う。

和食器に盛り付けられた洋食

言うまでもなく料理は食べるものだが、日本料理は景色を愛(め)でるように料理を通して描き出された世界を、器とともに鑑賞する体験でもある。

* 北大路魯山人が残した言葉と言われている。