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  • 駿河竹千筋細工の製品
  • 駿河竹千筋細工の製品
  • 製品を組み上げる竹ひごを作る。
  • 竹を熱で曲げて製品の枠を形成する。その枠に竹ひごを挿入する穴を開け、製品が組み上げられる。

January 2021

竹籠の美

駿河竹千筋細工の製品

静岡県に伝わる、「駿河竹千筋細工(するがたけせんすじざいく)」は、竹を細かく割った竹ひごを組み上げて器を作る。その繊細な美は、現代の生活用品に生かされ、今新たな輝きを放つようになった。

駿河竹千筋細工の製品

竹が豊富に自生するアジア圏では、古来より竹から様々な生活道具や農作業用の道具が作られてきた。日本でも、乾燥させた竹を細く切って籠やざるなどを編み上げてきた。

しかし、駿河国(現在の静岡県)に伝わる「駿河竹千筋細工」には他の地方と大きな違いがある。竹を“編む”のではなく“組む”ことで華麗で繊細な美しい竹の製品を生み出しているのである。製品の形を決める太い竹枠に穴を開け、そこへ、わずか1ミリメートルにも満たない細く丸く整えた竹ひごを幾筋も通して、虫籠、花器、盆、行燈(あんどん)、手提げなど、美しくも実用的な製品を仕立てている。

製品を組み上げる竹ひごを作る。

一説には、こうした竹細工の起源は、夏の蛍、秋の虫の音など、季節を愛(め)で和歌に詠んできた王朝貴族を中心に、そのような季節を表す虫を入れるための洗練された籠を求めたことに遡ると言われる。その後、将軍を引退して駿河国に住んだ徳川家康が鷹狩りの餌を入れる道具として作らせて発達したと伝わっている。将軍の趣味用ゆえに、美を追求した洗練されたものが作られるようになったという。

駿河竹千筋細工は、1976年に通産省指定(現経済産業省)の伝統的工芸品の指定を受けた。現在では、安価な海外製品やプラスチック製品に押され、駿河竹千筋細工の生産者は10軒ほどに減少した。しかし、その逆境の中だからこそ、むしろ美を極めた製品作りに邁進するのが、みやび行燈製作所である。

竹を熱で曲げて製品の枠を形成する。その枠に竹ひごを挿入する穴を開け、製品が組み上げられる。

同社の3代目社長の杉山雅俊さんは「商品が売れず、このままでは生活が困窮する危機に瀕しました。そこで審美眼があり、クラフトマンシップが根付いているヨーロッパに目を向け、一生ものとして扱ってもらえるような唯一無二の製品作りにチャレンジしようと一念発起しました」と話す。製作者としてデザインを同時に考えることは非常に難しかったと言う。「やはり、作り得る物をつい頭に思い描いてしまうのです。でも作り方を知らないデザイナーと組んでみると『無理。作れない』と思うような斬新なデザインを提案されるのです。そこから、見る人が目を奪われるような作品が生まれるようになりました」と言う。

そうして誕生した作品は和洋の枠を超えて、有名ホテルのランプシェードやアフタヌーンティーの器に使われるなど世界から注目を集めている。

和の繊細な美の域を超え、駿河竹千筋細工の器が大胆に広がろうとしている。