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April 2021

桜の樹の皮から作られる工芸品

角館の武家屋敷の前にあるシダレザクラ

樺細工(かばざいく)は、秋田県の角館町(かくのだてまち)だけに伝承される桜の樹皮を用いて作られる工芸品である。

茶筒

「樺細工(桜皮細工)」はヤマザクラの樹皮から作られる、秋田県仙北市の角館町の伝統工芸品である。樹皮をそのまま生かした素材が、心地よい肌触りと豊かな色彩を製品にもたらす。

樺細工の品々

角館の樺細工職人は、美しく、強く、防湿性に優れる樹皮の特徴を活かして、茶筒や盆、スマートフォンのカバーなどを作っている。長い間、大切に使い込まれるほどにヤマザクラの樹皮が持つ色素の赤みが増して、次第に飴色(あめいろ)となる。

茶筒

角館は、江戸時代(17世紀初頭~19世紀後半)には、今でも残る武家屋敷が立ち並ぶ城下町であり、春はシダレザクラが町中に咲き誇ることで有名である。18世紀、現在の秋田県を治めていた久保田藩が下級武士の副業として、樺細工作りを奨励したと言われ、今日、角館で約60人の職人がその伝統を支えている。

樺細工の原料は、樹齢30年以上のヤマザクラで、現在は秋田を含む東北6県の山々から樹皮を採取している。角館工芸協同組合事務局長の高島まち子さんは「山の厳しい環境の中で育った樹から、良質な樹皮が採れます」と話す。

名刺入れ

野生種であるヤマザクラは、生命力が強く、丁寧に樹皮を剥(は)いだ後に、樹皮は再生する。集められた樹皮は3年以上かけて乾燥させる。そうした樹皮を手で削り、磨き、そして、必要な形に切り、木地の表面に膠(にかわ)で貼る。磨いた樹皮を重ね合わせたものを、ジュエリーなどに用いる小さな形状に彫りだす「たたみもの」という技法もある。

「近年、樺細工の自然な美しさが世界でも認められるようになり、ヨーロッパを中心に販路を広げています」と高島さんは語る。

海外の人々の目に触れることで、若い職人が刺激を受ける。今も、角館の伝統がますます力強く発展しようとしている。