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  • 矢掛町のブラックベリーの畑で、地元の生徒とカリム・ジアゥル博士
  • パパイヤ栽培について地元の生徒にレクチャーするカリムさん
  • 矢掛町で栽培されているブラックベリーの花
  • 地元で栽培されたブラックベリーとステビアを使った低糖デザート
  • 矢掛町で栽培されたパパイヤ
  • 家族と一緒のカリム・ジアゥルさんバールビン・ソニアさん

May 2021

バングラデシュ人夫妻による農業を通じた「まちおこし」

矢掛町のブラックベリーの畑で、地元の生徒とカリム・ジアゥル博士

バングラデシュ出身のカリム・ジアゥル博士と妻バールビン・ソニアさんは、2019年に岡山県矢掛町に移住し、地元の人々とともに、これまで栽培してこなかった果物作りとその加工品開発に取り組んでいる。

パパイヤ栽培について地元の生徒にレクチャーするカリムさん

岡山県は、年間を通じて晴天日が多く、モモやブドウを始めとする果物の栽培に適している。その岡山の西南部に位置する矢掛町(やかげちょう)は、米作を中心に、ブドウ、ナシ、カキ、イチジク、イチゴなどの果物の産地として知られているが、新たにブラックベリーやパパイヤなどの栽培が広がりを見せようとしている。

「あと数年もたったら、矢掛町は“パパイヤの町”と呼ばれるかもしれませんね」というのは、バングラデシュ出身のカリム・ジアゥル博士だ。

農学博士であるカリムさんは、太陽の恵み豊かな気候を活かし、矢掛町でブラックベリーやパパイヤなど、県内の人がこれまでこの地で栽培してこなかった新たな品種の果物作りに取り組み、今や、その生産は軌道に乗っている。

矢掛町で栽培されているブラックベリーの花

母国の大学で植物科学を学び、サトウキビ栽培の研究をしていたカリムさんは、バングラデシュ政府の依頼で、増加する糖尿病患者対策として低カロリーの天然甘味料「ステビア」の研究を始めた。

さらなる研究のために2003年に来日、東京農工大学大学院で学び、博士号を取得した。いったん帰国したが、2012年に再来日した。

その年の秋、カリムさんの家族は、矢掛町の秋祭りで地元の人々の歓待を受け、「人々が温かい。子供たちにも、みんなが家族のように接してくれる」と感じ、一家で矢掛町に移住することを決めた。カリムさんが矢掛町に移住したのは2019年。

地元で栽培されたブラックベリーとステビアを使った低糖デザート

バールビンさんは、地方自治体の委託を受けて地域協力活動を行う「地域おこし協力隊」(Highlighting Japan 2019年5月号参照)の隊員として矢掛町で英語を教えていたこともあり、カリムさんも2019年から農業分野の地域おこし協力隊員となり、矢掛町の新たな名産品となるような果物とその加工品の開発に携わっている。

カリムさんは、町内の畑を借り受け、まず、日当たりのよい土地を好むブラックベリーの栽培を始めた。カリムさんは、露地栽培で化学肥料を使わない植物の栽培法にこだわる。そして、パパイヤの栽培に挑戦した。しかし、北米原産のブラックベリーとは異なり、熱帯原産のパパイヤは、熱帯地域ではない矢掛町での露地栽培では黄色く熟すことはない。

矢掛町で栽培されたパパイヤ

そこで、バールビンさんは、まだ十分に熟していない緑色のままの状態の「青パパイヤ」と呼び、それを収穫して、果物としてでなく野菜として食材にすることを考えた。カレーなどに入れたレシピを考案して、町の施設で提供すると、独特の風味が好評だったため、町内の農家、食品メーカーなどとの協業が始まった。

このような挑戦の結果、ブラックベリーの甘味にステビアを利用した、砂糖を使わないジャム、ブラックベリーやパパイヤの葉の茶、さらにはパパイヤを練り込んだ麺類など、次々と美味しくて、かつ、栄養価の高い新商品を生み出した。

「農家と食品メーカーの協働が進み、地元で栽培された果物や野菜から新たな製品が生みだされるにつれて、より多くの農家がこの取組に加わるようになりました。地域おこしは、一緒に取り組む人たちの協働が大切」とカリムさんは言う。カリムさんに指導を受けてパパイヤの栽培を始める農家も増え、町内に点在していた耕作放棄地が果樹園に生まれ変わろうとしている。

家族と一緒のカリム・ジアゥルさんバールビン・ソニアさん

カリムさんは、母国バングラデシュでの近年の若者の農業離れが進んでいることを懸念している。

それゆえ、カリムさんは、環境に優しい農業を矢掛町の畑から実践して、それが日本全体に、そしてバングラデシュに、やがては世界に広まることを願ってやまない。