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  • 山形県村山市の事前キャンプで、演技を披露するブルガリア共和国の新体操チーム「ゴールデンガールズ」(2019年7月15日)
  • 東沢バラ公園内の「バラ交流館ブルガリア交流展示室」
  • 村山市で作られたブルガリアのお守り「マルテニツァ」
  • 東沢バラ公園内の「バラ交流館ブルガリア交流展示室」
  • ブルガリア新体操ナショナルチーム「ゴールデンガールズ」の写真集

June 2021

バラで結ばれる村山市とブルガリア

山形県村山市の事前キャンプで、演技を披露するブルガリア共和国の新体操チーム「ゴールデンガールズ」(2019年7月15日)

山形県村山市(むらやまし)は、日本の人々が東京オリンピック・パラリンピック競技大会に参加する国・地域の人々と交流する「ホストタウン」において、ブルガリア共和国のホストタウンに登録された。村山市は全国に先駆けて2017年6月、新体操チームの事前キャンプをはじめとするホストタウンとして、その活動を開始した。

村山市で作られたブルガリアのお守り「マルテニツァ」

全国のホストタウンを集めて2019年2月に開催された「ホストタウンサミット」において、第1回アワード3部門(ホストタウンリーダー、優良情報発信、ポスター)を全て受賞したのが、山形県中央部にある人口約2万3千人(2021年5月現在)の村山市だ。

村山市がサポートするのは、ブルガリア共和国のオリンピックの新体操チーム。村山市は、市の花をバラとしており、約2万株のバラが植えられた日本有数の「東沢(ひがしざわ)バラ公園」を有し、バラを国花とするブルガリアとの共通点がある。さらには全国レベルの新体操部を有する市立中学校もあることから、ホストタウンとして名乗りをあげ、登録された。

東京オリンピック・パラリンピック競技大会 (以下、東京大会)に出場する選手団を受け入れる事前キャンプは2017年6月から開催され、全国で最も早い事例となった。このキャンプは「ローズキャンプ」と呼ばれ、これまでに、2017年6月、2018年6月、2019年7月と、3回開催され、市民ボランティアも積極的に支援した。特に、練習場に塵一つ残さない丁寧な掃除に選手たちは感激し、練習後の黒板にブルガリア語で「ありがとう」の文字とハートマークを描いて返礼したという。こうした交流の深まりから、最初のローズキャンプにボランティアとして参加した女性6人が中心となってブルガリア新体操のチーム名「ゴールデンガールズ」にちなんだ市民応援団「ゴールデンガールズファンクラブ」が結成された。彼女たちには、ローズキャンプ時の交流の企画運営も任されてきた。みんなで食卓を囲み、各自が好みの具材を選んで海苔で巻く「手巻き寿司」など、家庭的な温かいもてなしは、「まるでふるさとに帰ったよう」と選手たちを喜ばせた。「娘というより孫ほどの年齢の選手たちですが、もう家族同然、本当に愛おしい」と、その中心人物の一人、小室けい子(こむろ・けいこ)さんは目を細める。

ブルガリア新体操ナショナルチーム「ゴールデンガールズ」の写真集

他の競技も含め、ブルガリアのホストタウンは全国に6か所ある。この6か所が連携し、ブルガリアの伝統的なお守り「マルテニツァ」を、それぞれのホストタウンの特色を入れて作ることを提案したのも村山市だ。村山市のマルテニツァには、市のマスコットであるバラの妖精「ムララ」が新体操を演じる姿が描かれている。マルテニツァは家族や友人に贈る風習があることから、絆を結び、交流の輪を広げるアイテムとして、ホストタウンからブルガリアの人々へと贈られた。「街ぐるみ、市民全員での取組が、村山市の特徴です」と、村山市の東京オリンピック・パラリンピック交流課の冨樫京太(とがし・けいた)さんは言う。

「新型コロナウィルスが世界的に流行し、東京大会の1年延期が決まっても、村山市の熱気は冷めていない。」とも言う。今では400人以上の会員を擁するゴールデンガールズファンクラブは、2か月ごとの会報で、ブルガリアの情報や、選手団の国際試合での成績を報じ続けている。また、コロナの影響でブルガリア国内でも練習がままならい状況を案じて、「ゴールデンガールズ」に向けてたくさんの市民が出演し「愛している」「がんばって」と呼びかけるビデオレターも送り、選手たちを勇気づけてきた。

こうして築いてきたブルガリアと市民の絆を持続するために、2020年10月、村山市は日本ブルガリア協会山形県村山支部を設立した。また、2021年4月、東沢バラ公園内に、東京大会の将来のレガシーとして、「バラ交流館ブルガリア交流展示室」がリニューアルオープンした。展示室には、似顔絵を通じて国内外の人々と交流する「えもてなし」プロジェクトと協力し、作成されたゴールデンガールズの選手や村山市のボランティアなど計43名の似顔絵が描かれた絵も飾られている。

東沢バラ公園内の「バラ交流館ブルガリア交流展示室」

その東沢バラ公園は、初夏を迎える今、まさに様々な色合いのバラの花が東京大会の開催を彩るように開花している。