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  • IoT型胎児モニター「分娩監視装置iCTG」
  • 2021年6月、ブータン王国の保健省で行われた「分娩監視装置iCTG」の引き渡し式
  • 南アフリカ共和国での実証テストで「分娩監視装置iCTG」を装着する妊婦

September 2021

妊婦のオンライン検診システムを世界へ

IoT型胎児モニター「分娩監視装置iCTG」

妊婦の安全な出産をサポートするオンライン検診システムが国内外で広がっている。

2021年6月、ブータン王国の保健省で行われた「分娩監視装置iCTG」の引き渡し式

手のひらサイズのセンサーを腹部に装着するだけで、妊婦自身が胎児の心音を聴くことができ、また、離れた場所にいる医師に胎児の状態を診てもらうことができるオンライン妊婦健診システムが開発された。

そのシステムは、ハートの形をした2つのセンサーで構成されているIoT型胎児モニター「分娩監視装置iCTG」が中核となっている。ハート形センサーはピンク色のものと青色のものがあり、ピンク色のセンサーは、妊婦の体内の胎児の心拍を測定し、青色のセンサーは妊婦の陣痛の間隔・強度を測定する。いずれもブルートゥースで接続されたタブレットで操作する。この二つのセンサーによって計測されたデータが、周産期のための遠隔医療プラットフォーム「Melody i(メロディ・アイ)」を通じて、離れた場所にいる医師にリアルタイムで送信される。さらにNICU(新生児集中治療室)のある中核病院へのデータの送信も行える。

このシステムを開発したのは、2015年設立のメロディ・インターナショナル株式会社(香川県高松市)である。

開発のきっかけについて、同社CEOの尾形優子さんは、「日本では高齢出産が増え、合併症などのリスクを抱える妊婦の割合が高くなっています。その一方で、出産を扱う医療機関は10年間で20%以上減り、特に地方では産科医が非常に不足しています。検診のために妊婦が山道を車で2時間以上かけて病院へ通うといったこともあります。医師が母体と胎児の状態をリアルタイムで把握できれば、通院の負担も減り、異常が発見されれば、スピーディに医師の判断、処置を仰ぐことができます」と言う。

南アフリカ共和国での実証テストで「分娩監視装置iCTG」を装着する妊婦

開発に当たって、さまざまな苦労があった。

病院で使用する分娩監視装置は、家庭用プリンタほどの大きさで、センサーと本体が別になっている。尾形さんは、センサーにスピーカーを内蔵させるなど、機能を損なうことなく手のひらサイズのボックスに収めることに成功した。

しかし、スピーカーを内蔵させたため、心拍音とスピーカーからの音が干渉し、ノイズが発生し、それを解消することが課題だった。尾形さんは「ノイズが混じる複雑な信号の中から、クリアで正確な心拍データを取り出すために何度も試行錯誤を重ねた」という。

センサーとスピーカーが一体であることで、妊婦自身が胎児の心音を聞くことができるので、胎児の位置を感覚的に探してセンサーを装着できる。「この一体のシステムをあきらめることはできませんでした」と尾形さんは言う。

このシステムは、2019年から本格的に国内販売が始まったが、新型コロナウイルスの感染拡大でニーズが急拡大し、全国の大学病院などの医療機関で導入が進んでいる。

産科医の確保、周産期医療の強化は、日本だけの課題ではない。iCTGは、2016年から、JICAのプロジェクトでタイ王国のチェンマイにも導入され、2020年11月には、国際協力機構(JICA)と国連開発計画(UNDP)の支援でブータン王国に提供された。

「このシステムが普及し、世界中のすべてのお母さんが、より安心・安全な出産ができるようになってほしいですね」と尾形さんは語る。

利用者からは、「通院のための経済的・時間的負担が軽減され、そのことからストレスが減った」「胎児の心音をじかに聞くことで、生まれる前から、父親や兄弟が赤ちゃんに愛着を感じてくれるようになった」、などの喜びの声が多く寄せられている。

尾形さんは、このシステムのこれからの展望について「今後は量産による低価格化や、さらなる小型化を進め、妊婦に関しての遠隔医療のプラットフォームとなることを目指したい。特に、専門医が不足している発展途上国で、私たちの技術を活かして、医療体制強化を支援したい」と強い意欲を示している。

周産期遠隔医療プラットフォーム「Melody i(メロディ・アイ)」の運用システム。オンラインで妊婦と医師、病院との連携を可能にしている。