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February 2022

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海が間近の駅:予讃線「下灘駅」

  • 愛媛県伊予市双海町の下灘駅
  • 瀬戸内海の夕日を臨む下灘駅
  • 一両編成の予讃線の列車
  • 2021年に行われた「夕焼けプラットフォームコンサート」(オンライン開催)の演奏者
愛媛県伊予市双海町の下灘駅

美しい瀬戸内海の間近にある無人駅が、そこからの素晴らしい光景によって多くの人々を魅了している。

瀬戸内海の夕日を臨む下灘駅

愛媛県の下灘駅は、四国の主要都市を結ぶJR四国*・予讃線(よさんせん)の無人駅だ。伊予市(いよし)双海町(ふたみちょう)にあるこの駅には、一日18本の列車しか停まらないが、ホームからの素晴らしい景色にひかれて、これまで数多くの人々が駅に降り立っている。

下灘駅が開業したのは1935年。1981年に駅の海側の海岸線を埋め立てて国道が開通するまで、「日本で一番海に近い駅」と呼ばれていた。今も、駅のホームは展望台のように、国道より高い位置に設けられているため、海が間近に見える。潮騒を耳にホームに立てば、目の前にただただ美しい海と空が広がる。ここにしかない、そんな光景ゆえに、数多くの映画やTVドラマの舞台に選ばれてもきた。

観光地として、駅の人気に火を付けたのは、JRのポスターだった。JRグループの『青春18きっぷ』**のポスターに、下灘駅が1998年から2000年まで3年連続で取り上げられたのだった。

一両編成の予讃線の列車

「鉄道ファンの中でも特に写真撮影が好きな人たち、いわゆる“撮り鉄さん”たちがポスターの風景に憧れて下灘駅を訪れるようになったのです。彼らがソーシャルメディアで写真を次々と紹介したことで一気に有名になったのです」と、JR四国・下灘駅フィールドミュージアム運営委員会の代表を務める冨田敏(とみた さとし)さんは説明する。

しかしながら、下灘駅や予讃線の地元での利用客は年々減少していた。1986年に内陸の新路線が開通したため、運行本数の減少等により、やがて下灘駅は無人駅となった。地元の人々は駅廃止の不安を抱くようになった。そんな頃に、無人駅をステージとする“夕焼けプラットホームコンサート”のアイデアが持ち上がった。下灘駅ならではの美しさを観光資源にできないかと考えていた地元の自治体職員と青年組織の話し合いから生まれた企画だった。彼らは安全面を懸念する当時の国鉄を説得し、地域の人々にカンパを募った。

そうして、1986年に「第一回夕焼けプラットホームコンサート」が実現した。主催者の予想を大幅に上回る1000人近い聴衆が詰めかけた。翌年からはJR四国を始め地元の関係者の協力を得て、毎年開催される恒例のイベントとなった。ただ、2020年、2021年とも、新型コロナ感染症のため、無観客での配信の形で実施された。主催者によれば、多くの人々が、映像で下灘駅からの瀬戸内海の夕焼けの絶景とともにコンサートを楽しんだという。 無人駅でありながら、この場所を訪れた人々や、映像で見た人たち、それぞれの心の中に、瀬戸内海の景色、波音とともに下灘駅が刻み込まれている。

2021年に行われた「夕焼けプラットフォームコンサート」(オンライン開催)の演奏者

* JR四国は、日本国有鉄道をJRとして民営分割化された会社の一つで1987年4月に発足。
** 春・夏・冬にの期間限定で発売され、年齢にかかわらず、だれでも利用できるJRグループ全線乗り放題のお得な切符。普通列車と快速列車のみ利用ができ、新幹線や特急列車は利用できない。