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August 2022

京都のタケの伝統を守る

  • 横山竹材店が手掛けた桂離宮に設けられている竹垣
  • 京都の伝統的な家屋の壁に設けられた「犬矢来」(いぬやらい)と呼ばれる竹垣
  • 京銘竹を使ったレストランの天井
  • インテリアデザインとしての竹製の格子窓
  • 竹製の照明器具
  • オーストリア・ウィーンのシェーンブルン宮殿の日本庭園の竹垣
横山竹材店が手掛けた桂離宮に設けられている竹垣

歴史的な都市である京都では、古くからタケが建材や装飾などで用いられてきた。伝統的な竹工芸技術を守りつつ、竹製品や竹材の製造に取り組み、新製品開発にも挑戦している京都の店を紹介する。

京銘竹を使ったレストランの天井

タケ(竹)は、日本で古くから生活の道具や農具、建材などとして利用されてきた。日本の中でも、8世紀後半以降、1000年以上にわたり都が置かれた京都は、タケとの縁(ゆかり)が最も深い日本の都市であろう。タケは、京都の人々の生活のみならず、文化をも支えてきた。例えば、数多くの仏教寺院は竹林を境内で手間をかけ育てている。また、16世紀以降、京都で盛んになった茶道においても、茶室の建材や茶筅(ちゃせん)や茶杓(ちゃしゃく)など茶道具にタケは欠かせないものである。

京都の伝統的な家屋の壁に設けられた「犬矢来」(いぬやらい)と呼ばれる竹垣

1919年創業の横山竹材店は、そうした京都のタケの伝統を、生かし守り続けている店の一つである。同店はタケを用いた日本の代表的な建築の仕事を数々手掛けている。例えば、日本庭園の最高峰と言われる庭園を有する桂離宮*に設けられている竹垣である。その荘厳かつ精緻な美しさは多くの人を魅了している。また、茶道の流派の一つ裏千家の茶室で、国の重要文化財に指定されている「今日庵(こんにちあん)」では、竹垣や樋(とい)などタケで作られたものの補修や交換を担っている。

インテリアデザインとしての竹製の格子窓

「タケが建築や道具の素材として様々な場所で用いられてきた京都では、竹林が多く、その維持管理に人々が尽力してきているとともに、タケに関わる技術や製品も発達しました」と横山竹材店4代目の横山裕樹(よこやま ゆうき)さんは話す。「京都産のタケはしなやかな柔軟性があり、表面もとてもきれいです。私たちはタケを育て、『京銘竹(きょうめいちく)』と呼ばれる竹材も作っています」

竹製の照明器具

京都の伝統工芸品である京銘竹は、タケの表面を火で炙(あぶ)って油を抜いた後、天日に干して作られる。光沢があり、美しく丈夫な京銘竹は、「犬矢来」(いぬやらい)と呼ばれる京都ならではの竹垣や、内装材、すだれ、花かごといった日常生活の中で用いられている。こうした従来の製品に加え、同社は京銘竹を使った照明器具や時計、カトラリー、アルコール消毒液用のスタンドといった新たな製品も開発している。

同社は、建材としてのタケの利用をさらに広げるために、2014年、世界初の燃えない竹材「ヨコタケ防炎竹」を開発した。日本では、従来の竹材は可燃性のために内装としての使用が制限されていたが、この新たな竹材は、日本政府(総務省消防庁)にも認定された高い防炎性により、これまで使用できなかった場所で材料としても使用が可能となった。京銘竹の美しさも持つこの竹材は、国内外の有名アパレルブランド店舗や飲食店、ホテルのなどの内装に利用されている。

「日本の竹文化を守ることが、横山竹材店を継ぐ私の使命です。まずは、継承すべき古いものを守る。そして新しいことにも挑戦し、それを発信していくことが、伝統を守ることにつながると考えています」と横山さんは語る。

オーストリア・ウィーンのシェーンブルン宮殿の日本庭園の竹垣

タケは建物や製品に和風の趣(おもむき)を添えることができる材料である。横山さんの意欲的な取組によって、さらに多くの人がタケの新たな魅力を発見するだろう。

* 17世紀に八条宮家の別荘として現在の姿となる。しばしば、日本建築と庭園デザインの最高峰と言われる。