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August 2022

犯罪防止・犯罪者処遇のための国際貢献

  • 東京都昭島市の国連アジア極東犯罪防止研修所
  • 国際研修の風景
  • ユース国際研修のグループワークショップの風景
  • 国連アジア極東犯罪防止研修所は京都コングレスにおいてワークショップを企画・運営
東京都昭島市の国連アジア極東犯罪防止研修所

2022年、発足から60周年を迎えた東京の国連アジア極東犯罪防止研修所(UNAFEI)は、研修やセミナーなどの事業を通じて、犯罪防止に向けた国際社会の取組に貢献している。

国際研修の風景

東京都昭島市(あきしまし)に所在する国連アジア極東犯罪防止研修所(略称、アジ研)は、国連と日本政府との協定に基づき、今から60年前の1962年に設立された国連の地域研修所である。アジ研は、国連薬物・犯罪事務所(UNODC)など世界の19の機関が参加する国連の犯罪防止・刑事司法プログラム・ネットワーク機関(PNI)のメンバーの中で最も歴史のある機関である。アジ研の事業は、法務省が運営を担っている。アジ研の主要な事業は、開発途上国の刑事司法実務家を対象とする研修とセミナーであり、開所以来、研修とセミナーの参加者の累計は142の国・地域から6,200名以上にのぼる(2022年7月現在)。研修とセミナーは、新型コロナウイルス感染症流行以降はオンラインでも開催されている。

国際研修と国際高官セミナー

アジ研が実施する様々な研修やセミナーの中で最も歴史が長いのが「国際研修」と「国際高官セミナー」である。1962年に最初の国際研修を実施して以来、毎年、国際研修を年2回、国際高官セミナーを年1回開催している。春の国際研修では主に犯罪防止や犯罪対策、秋の国際研修では主に犯罪者の処遇を扱い、近年のテーマとしては「包摂的な社会に向けた刑事司法」、「女性犯罪者の処遇」などである。

国際高官セミナーでは、広く刑事司法に関する問題を取り上げている。近年のテーマは「再犯防止のための多機関連携と官民協働」、「刑事司法の各段階を通じた再犯防止及び円滑な社会復帰のための諸方策」などである。

国際研修と国際高官セミナーの期間は約5週間で、各国刑事司法の中堅幹部ないし高官を対象として実施されている。通常、海外から約15名、日本から5~10名が参加する。プログラムは、参加者による各国の犯罪情勢や刑事司法制度の発表、国内外の専門家やアジ研教官による講義、刑事司法機関の視察、グループワークショップ、全体討議などで構成されている。

2020年に日本で開催された国際高官セミナーの参加者の一人、ケニア保護局のリリアン・アキニ・オティエノ氏は、セミナー後に寄せた書面メッセージで「アジ研のセミナーは、私のキャリアに大きな影響を及ぼしました」と感謝の意を表している。特に、犯罪を犯した人の更生を支援する保護司との会合は、ケニアで保護司と仕事をする自分にとって、非常に役立つ経験になったという。「日本滞在中、私はプロフェッショナリズムの重要性について多くを学びました」とオティエノ氏は述べている。

ユース国際研修のグループワークショップの風景

他の研修及びセミナー

上記の国際研修等の他に、アジ研は2000年から毎年、公務員の汚職防止に関する法制度とその運用をテーマにした「汚職防止刑事司法支援研修」を、2007年からは毎年、東南アジア諸国における「法の支配」と「良い統治(グッドガバナンス)」の確立に向けた取組を支援するための「グッドガバナンスをテーマとする東南アジア地域セミナー」を開催している。

そして、2021年には「ユース国際研修」を開催した。これは、同年に京都で開催された第14回国連犯罪防止刑事司法会議(京都コングレス)において採択された京都宣言のフォローアップの一環でもある。2022年8月の第2回は「児童虐待のない社会に向けて~若者の討議による対応策の模索~」をテーマとして、アジ研への来場とオンラインを組み合わせたハイブリッド方式で開催され、日本国内の大学・大学院等で学ぶ日本人と外国人の学生24名が参加した。参加者の一人、トロント大学の加藤美樹さんは「この研修で児童虐待の防止について学ぶことができました。将来はできれば児童虐待を減らすことに貢献したいと思っています」と話す。

国連アジア極東犯罪防止研修所は京都コングレスにおいてワークショップを企画・運営

アジ研は上記研修やセミナーの他に、世界各国や国連からの要請による二国間支援や、国連の犯罪防止・刑事司法に関する委員会、及び国連の犯罪防止・刑事司法会議に職員を派遣し、調査研究の成果報告やワークショップの開催などの取組も行っている。

2022年10月21日には、アジ研開所60周年を祝う式典及びシンポジウムが開催される予定であり、海外の有識者3名による講演はオンラインで一般公開される。今後も、アジ研は犯罪防止、犯罪者処遇及び刑事司法の発展のため、様々な国際貢献活動に積極的に取り組んでいく。

注記: 本記事は法務省の了解の上、同省の公表資料に基づき作成している。