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November 2022

倉敷の自然をガラスで表現するアーティスト

  • バーナーの炎で成形されるガラスボールペン
  • 異なった色のカエルのモチーフのペーパーウェイト
  • メキシコ出身のガラス作家のベンジャミン・サスエタ・ロドリゲスさん
  • 倉敷市の夕焼けをイメージしたピンク色のガラスの花瓶
  • 作家の故郷メキシコをイメージしたオレンジとイエローのガラスで作られたシュガーグラス
  • 瀬戸内海の穏やかな波をイメージした青色のカップ
  • ボールペン2本(手前)を含むガラスアクセサリー
メキシコ出身のガラス作家のベンジャミン・サスエタ・ロドリゲスさん

メキシコ出身のベンジャミン・サスエタ・ロドリゲスさんは、岡山県倉敷市の自然からインスピレーションを得て、色鮮やかなガラス作品を作っている。

バーナーの炎で成形されるガラスボールペン

メキシコ出身のベンジャミン・サスエタ・ロドリゲスさんは、岡山県倉敷市を拠点に活動するガラス作家である。ベンジャミンさんは、ボロシリケイトガラス*をバーナーの炎で熔かして成形するバーナーワークと呼ばれる技法で作品を作っている。ベンジャミンさんのガラスアートは、オレンジ、イエロー、ピンク、紫など、故郷メキシコを思わせる鮮やかな色合いと、ユニークなデザインが特徴的だ。作品のジャンルはガラスペンダント、ペーパーウェイト、ボールペン、コップ、花瓶、マドラーなど多岐にわたる。

異なった色のカエルのモチーフのペーパーウェイト

1979年生まれのベンジャミンさんはアメリカに渡り、ガラスアートの技術を習得した。そこで知り合った日本人女性と結婚、日本でガラス作家として生計を立てることを決意し、26歳の時に妻の故郷の倉敷市に移り住んだ。そして、ベンジャミンさんは自宅敷地内に工房を設け、作品作りに取り組んだ。その作品は次第に人気を集め、現在では、日本国内だけでなく、アメリカ、スペイン、メキシコなどの海外からも注文が届く。ベンジャミンさんは、「私は自分のインスピレーションを大切にした作品作りを心がけています。自宅からの夕焼け、海や波、そして、山や森などの自然から作品のアイデアがひらめきます」と言う。その工房は、瀬戸内海にほど近く、背後には丘陵が広がり、周囲には田畑があり小川が流れる。

倉敷市の夕焼けをイメージしたピンク色のガラスの花瓶

「私の家の近くは自然に恵まれていているので、散歩したりヨガしたり、と気分をリフレッシュできるからこそ、デザインや形状が複雑な作品であっても妥協せずに、作り続けられるのです」

作家の故郷メキシコをイメージしたオレンジとイエローのガラスで作られたシュガーグラス

こう語るベンジャミンさんは、散歩途中に見つけた小川のメダカやカエル、道端に咲く小さな花など、身の回りの自然を、作品のモチーフにすることを好む。そして、そのモチーフの自然の色合いを出すために、色付け粉を混ぜて新しい色を調合したり、また、金や銀の粉をふんだんに使ったりするなど、様々な方法で最良のモチーフを表現する。天候や気温によって見える日々景色が異なるように、ガラスアートも成形するバーナーの炎の温度やガラスの厚さによって発色も異なり、同じ作品を再現できるわけではない、そこがガラスアートの魅力だとベンジャミンさんは語る。

瀬戸内海の穏やかな波をイメージした青色のカップ

以前、作品の購入者は女性が多かったが、最近は性別や年齢を問わず、国内外の様々な人が購入している。年に数回、ベンジャミンさんの自宅で開く新作販売会には、子供から高齢者まで多くのファンが訪れるという。

「私は、いつか、どなたでも気軽に参加できるガラスアートのフリーレッスンを開き、技術と精神を皆さんに教えたいのです。作品作りを通じて、アートを生み出す幸福感や自然への畏敬を分かち合うのが私の夢です」とベンジャミンさんは言う。

ボールペン2本(手前)を含むガラスアクセサリー

倉敷の自然からヒントを得て、ベンジャミンさんは、これからも世界の人々を魅了する作品を作り続けていく。

* 別名「耐熱ガラス」とも呼ばれ、ガラスの中でも透明度が高く、熱への耐性や強度に優れた種類のガラス。