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December 2022

サイバー空間の安全確保の対策

  • サイバー攻撃を防ぐためには、個人と国家レベルでの対策の強化が不可欠である(イメージ画像)。
  • 10月に東京で開催された「テロ対策特殊装備展(SEECAT) ’22」で講演する公安調査庁の職員
  • 公安調査庁が発行しているパンフレット「サイバー空間における脅威の概況」の表紙
サイバー攻撃を防ぐためには、個人と国家レベルでの対策の強化が不可欠である(イメージ画像)。

サイバー空間における安全を確保するために、日本は様々な対策を実施している。

10月に東京で開催された「テロ対策特殊装備展(SEECAT) ’22」で講演する公安調査庁の職員

近年、ビジネス業務の妨害、機密情報の窃取、金銭の獲得などを目的とするサイバー攻撃が国内外で増大している。日本においても今年(2022年)、サイバー攻撃によって、大手自動車メーカーの関連会社が工場の稼働を停止せざるを得なくなったり、病院が電子カルテを使用できなくなったりといった被害が発生している。攻撃者の手口は、コンピューターシステムの弱点を突いた攻撃や、システムを利用する人間の心理を利用した攻撃など、巧妙化しており、今や、サイバー空間における悪意ある主体の活動は、経済の発展や国民生活の安全に深刻な脅威となっている。さらに、いくつかの国家が政治的、経済的、軍事的な目的で、情報の窃取やインフラの破壊などの活動を実行するサイバー戦能力を強化していると考えられており、サイバー攻撃の脅威は、国の安全保障の点においても深刻化している。

サイバー攻撃を防ぐためには、それぞれ個人がコンピュータやスマートフォンなどの機器で使用しているアプリを最新のバージョンに更新することや、不審なメール、SMS、SNSの添付ファイルやURLをクリックしないといった対策に加え、国家レベルでの対策強化も不可欠となっている。

こうした状況を踏まえ、日本政府は2021年9月に「サイバーセキュリティ戦略」(以下、「戦略」)を閣議決定した。「戦略」は、サイバーセキュリティに関する施策を総合的かつ効率的に推進するため2014年に成立した「サイバーセキュリティ基本法」に基づいて策定されるもので、今回で3回目の策定となる。

サイバーセキュリティについて「戦略」では、「国民の自由な経済社会活動を保障し国民の権利や利便性の確保を図ること、また、適時適切な法執行・制度により悪意ある者の行動を抑制することによって国民を保護することこそ、国民から期待されるサイバーセキュリティ政策のあるべき姿である」としている。「戦略」では、国によるナショナルサート(CSIRT/CERT)の枠組み強化を対策の一つとして挙げている。ナショナルサートとは、「深刻なサイバー攻撃に対し、情報収集・分析から、調査・評価、注意喚起の実施及び対処と、その後の再発防止等の政策立案・措置に至るまでの一連の取組を一体的に推進するための総合的な調整を担う機能」である。また、防衛省・自衛隊のサイバー関連部隊の体制強化やサイバー防衛能力の抜本的強化、サイバーセキュリティ分野でのアメリカ、オーストラリア、インド、ASEANなどの同志国との国際連携の強化、国際サイバー演習の主導などがサイバー攻撃への対策として挙げられている。

公安調査庁が発行しているパンフレット「サイバー空間における脅威の概況」の表紙

サイバー空間の安全確保を担当する日本の政府機関の一つが公安調査庁である。公安調査庁は、日本の公共の安全を確保するために、経済安全保障に関する情勢、国際テロリズムや日本の周辺諸国の情勢、国内諸団体の動向など、国内外の情報を収集、分析して、政府関係機関に提供する任務を担う。サイバーセキュリティに関して公安調査庁が担う役割としては、「戦略」に基づき策定された最新年次計画「サイバーセキュリティ2022」において、「サイバー関連調査の推進に向け、人的情報収集・分析体制の強化及び関係機関への適時適切な情報提供等、サイバーインテリジェンス対策に資する取組を推進する」が挙げられている。具体的には、サイバー攻撃を実行した主体の実態を解明し、その情報を政府機関に提供すること、政府機関や企業に対するサーバー攻撃の予兆を早期に把握し、その情報を関係機関に提供することなどである。こうした取組を強化するために、公安調査庁は今年4月に「サイバー特別調査室」を立ち上げている。この他にも、サイバーセキュリティに関して、経済団体、企業、大学、研究機関との意見交換や、一般に向けた講演会の開催を実施し、また、サイバーセキュリティに関するパンフレットを作成し、一般に向けて啓発を行っている。

サイバー攻撃は誰にとっても、もはや無関係ではない。その脅威が増大する中、国民、企業、政府が協力して対処する必要性がますます高まっている。

注記: 本記事は公安調査庁の了解の上、同庁の公表資料に基づき作成している。

公安調査庁の任務