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February 2023

正月飾りを燃やす

  • 大崎八幡宮の正月飾りを燃やす「どんど焼き」
  • 大崎八幡宮の「裸参り」
  • 御神火の空中写真
  • 御神火(ごじんか)
大崎八幡宮の正月飾りを燃やす「どんど焼き」

宮城県仙台市の大崎八幡宮の「松焚祭(まつたきまつり)」は、正月飾りを大規模に燃やす(お焚(た)き上げする)祭である。

御神火の空中写真

日本では、新しい年の初めを「正月」と称し、古来、五穀豊穣や子孫繁栄の兆しなどの幸せを家々にもたらす年神様(としがみさま)を家庭に迎え入れる期間である。

年神様は、正月に高い山から下りてくると考えられていることから、日本中の人々が12月下旬に家をきれいに掃除して、年神様の来訪を願う。また、新年には特別な飾り付けをする風習がある。玄関付近には、松や竹を用いた“門松(かどまつ)”や、稲わらをねじり合わせて作った“しめ縄”を飾り、年神様が訪れるのにふさわしい清らかな場所であることを示す。こうした正月飾りは、多くの地域で1月15日とされる「小正月*」に、寺社の境内や河原に集められて焼き上げられる。この時に上がる炎と煙とともに年神様をまた高い山へと送り返すとする地域もあり、地方によっては、「どんど焼き」と称して神聖な行事として催される。

大崎八幡宮は1607年に宮城県仙台市に創建され、そこで行われる「松焚祭(まつたきまつり)」は、正月飾りを燃やす神聖な行事である。地元では、この大規模な行事を「どんと祭(さい)」と呼んでいる。

御神火(ごじんか)

大崎八幡宮の松焚祭は、例年、1月14日の日没に合わせて始まる。「年神様を高所(天上あるいは高天原)へお返しするための炎を“御神火(ごじんか)”と言います。その煙に当たると、無病息災のご利益があると言われます。また、商売繁昌や家内安全なども祈願されます」と大崎八幡宮禰宜(ねぎ)の小野目稲美(おのめ いなみ)さんは言う。

夕暮れ時、5メートルほどの高さに積み上げられた、あらかじめ納められた正月飾りや飾り、お守りなどが燃え上がると、天高く煙が立ち上り、神秘的な光景となる。参拝者はその炎に近づき、持ってきた正月飾や飾り、魔除けなどを投げ入れる。年神様を送るこの神聖な送り火は2~3日、燃え続ける。この間、参拝者は、新型コロナウイルスの流行前は約10万人の参拝者があった。

大崎八幡宮の松焚祭の重要な特徴は裸に近い何千人もの男性たちが凍てつくような夜の寒さをものともせず参詣する「裸参り」である。右手に鐘、左手に提灯を持つ。この裸参りは江戸時代に、酒杜氏**(とうじ)たちが健康や商売繁盛を祈願した寒中行事がルーツとされる。

大崎八幡宮の「裸参り」

今日では、女性も、伝統的な裸装束の上に上着を羽織るなどして、誰でも裸参りに参加できる。「時代によって祭りの風景は変化しますが、参拝される方々の心や祈りの形は変わりません。参拝していただければ、燃え上がる炎に現れる神秘性とともに、炎の持つ浄化や癒しの力を感じられると思います」と禰宜の小野目さんは説明する。

* 1月15日を中心とする新年の行事。1月1日の大正月に対する呼名。
** 日本酒の醸造工程を取り仕切る責任者