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February 2023

「和食」の保護・継承

  • 一汁三菜の例
  • 食育ティーチャー(中央)が宮崎県の郷土料理を若い世代に伝える講座
  • 揚げた鶏肉に甘酢を浸した宮崎県の郷土料理「チキン南蛮」
  • 栄養豊富な冷えた汁を麦飯にかけた宮崎県の郷土料理「冷や汁」
一汁三菜の例

日本では、ユネスコ無形文化遺産に登録されている「和食」を保護・継承するために、様々な取組を行っています。それらの取組とともに、今年(2023年)4月に予定されるG7農業大臣会合の開催地・宮崎県の郷土料理を紹介します。

食育ティーチャー(中央)が宮崎県の郷土料理を若い世代に伝える講座

今から約10年前の2013年12月に、「和食;日本人の伝統的な食文化」がユネスコ無形文化遺産に登録されました。ユネスコに提出した提案書では、「和食」は「自然の尊重」という日本人の精神に基づいた食に関する社会的慣習としています。その特徴は大きく次の四つに分けられます。

(1) 多様で新鮮な食材とその持ち味の尊重
南北に長く、海、山、里と表情豊かな自然が広がる日本の国土。各地で地域に根ざした多様な食材が用いられ、素材の味わいを活かす調理技術・調理道具が発達しています。

(2) 健康的な食生活を支える栄養バランス
一汁三菜(いちじゅうさんさい)*を基本とする食生活は栄養バランスがとりやすく、だしの「うま味」**や発酵食品をうまく使い、動物性油脂の少ない食生活を実現しており、日本人の長寿や肥満防止に役立っています。

(3) 自然の美しさや季節の移ろいの表現
季節の花や葉などで料理を飾りつけたり、季節に合った調度品や器を利用するなど、自然の美しさや四季の移ろいを表現することも和食文化の特徴の一つとなっています。

(4) 正月などの年中行事との密接な関わり
日本の食文化は、年中行事と密接に関わって育まれてきました。自然の恵みである「食」を分け合い、食の時間を共にすることで、家族や地域の絆を深めてきました。

「和食」の保護・継承

農林水産省が実施した「国民の食生活における和食文化の実態調査」(2020年)では、和食に関するイメージについて、「健康に良い」(48.9%)や「季節を感じられる」(44.9%)といったイメージを持つ人が多い一方、「調理が難しい」(21.4%)や「準備や片付けに手間がかかる」(19.5%)というイメージを持つ人もいます。

農林水産省では、「和食」の保護・継承に向けた取組を推進させるため、関係省庁、関係団体などとともに、様々な取組を実施しています。

例えば、国内では子育て・若者世代に和食文化を伝える活動を行う中核的な人材(和食文化継承リーダー)の育成を目指し、幼稚園や小学校等に勤務する教諭・保育士・栄養士・栄養職員などを対象として、和食文化への理解を深める研修会を毎年開催しています。

また、今年(2023年)は、「和食」のユネスコ無形文化遺産登録10周年を記念したイベントなども開催予定としています。

この他、農林水産省は全国47都道府県の郷土料理を紹介するウェブサイト「うちの郷土料理~次世代に伝えたい大切な味~」***を2020年に立ち上げました。同サイトには、各都道府県で選定された約1300種類の郷土料理の歴史やレシピなどの情報をデータベース化し、掲載しています。

また、2022年には、海外向けにも郷土料理を紹介するウェブサイト「Our Regional Cuisines (Beloved tastes and flavors we want to pass on to the next generation)」****を立ち上げました。同サイトは5か国語(英語、簡体字、繁体字、スペイン語、タイ語)で閲覧可能となっており、国内外で情報発信の強化を行っています。

2023年G7農業大臣会合開催地・宮崎の郷土料理

太平洋に面した九州の宮崎県は、自然が豊かで魚介類や農産物が豊富なことから食料供給基地として重要な役割を担っています。そのような中、今年4月22日、23日には同県宮崎市でG7農業大臣会合が開催され、食料安全保障など、世界の農業の諸課題についての議論が行われます。

その宮崎の郷土料理として有名なものが、「チキン南蛮」です。1950年代に延岡(のべおか)市内の洋食店でつくられたのが始まりとされています。1960年代には、時折家族で出かける外食のごちそうメニューとして浸透し、やがて学校給食や家庭料理、県内全域で飲食店のメニューとして普通に見られるようになりました。鶏肉に小麦粉(薄力粉)を振り卵液を絡めたものを揚げ、甘酢に浸します。小麦粉を振った後で卵液を絡めることで甘酢を吸い込みやすくし、口当たりも良くなります。

揚げた鶏肉に甘酢を浸した宮崎県の郷土料理「チキン南蛮」

また、「冷や汁」も県民に愛されてきた郷土料理の一つです。かつて農民が夏の重労働をおこなう際、時間や食欲のない時でも充分な栄養補給や体力回復のために、簡単に食べられる生活の知恵として伝承されてきた料理です。すった煎り子と味噌を合わせて焼いたものを出汁でのばし、大葉やきゅうり、豆腐などを加えた汁を冷たい麦飯にかけて食べます。

栄養豊富な冷えた汁を麦飯にかけた宮崎県の郷土料理「冷や汁」

こうした郷土料理を保護・継承するために、県内では様々な取組が実施されています。

例えば、農業・漁業従事者、栄養士、調理師などの「食育*****ティーチャー」が、地域食材を生かした郷土料理や伝統料理に関する知識や調理方法を県民に教える講座が開かれています。

* 一汁三菜(いちじゅうさんさい)は、ご飯を主食として、魚介・肉類等動物性食品を中心とする主菜、野菜・いも・豆類等の副菜、汁物、漬物という構成の食事
** Highlighting Japan 2022年6月号「「うま味」が生み出す和食の魅力」参照 https://www.gov-online.go.jp/eng/publicity/book/hlj/html/202206/202206_01_jp.html
*** https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/k_ryouri/
**** https://local-cuisine.maff.go.jp/en/
***** 食育基本法によると、食育は、生きる上での基本であって、知育・徳育・体育の基礎となるものであり 、様々な経験を通じて「食」に関する知識と「食」を選択する力を習得し、健全な食生活を実現することができる人間を育てること。

注記: 本記事は農林水産省と宮崎県の了解の上、同省と同県の公表資料に基づき作成しています。