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August 2023

知っていますか? 国際仲裁

  • 司法外交閣僚フォーラム特別イベント「国際仲裁・国際調停の未来と司法制度」
  • 国際仲裁の仲裁地としての日本の魅力を伝える展示
司法外交閣僚フォーラム特別イベント「国際仲裁・国際調停の未来と司法制度」

あなたは「国際仲裁」という言葉をご存じだろうか。「国際仲裁」とは、国際商取引をめぐる紛争について、各国の国内裁判所による解決、すなわち「裁判」ではなく、当事者が選任した「仲裁人」と呼ばれる第三者の判断により、紛争解決を図る手続である。詳細については次の項目で言及するが、国際仲裁にはさまざまなメリットがあることから、国際商取引上の紛争解決手法として国際仲裁がグローバル・スタンダードとなっており、ニューヨーク条約などの関連する主な国際条約に日本も加盟している。しかし、アジア地域の諸外国と比較し、日本における仲裁件数は著しく低い。

国際仲裁のメリット

国際商取引において法的紛争が生じた場合、その主な解決方法としては「裁判」と「仲裁」がある。裁判では、特定の国の裁判所を利用することになるが、一般的には、手続や言語を当事者が選択することはできず、また、裁判官がその分野の商慣習に通じていない、原則として公開審理であるため企業秘密が守られない等当事者にとってのリスクもある。

こういった裁判のデメリットを回避し、国際ビジネスに適したより迅速で自由度の高い紛争解決手続として、国際仲裁は古くから世界で利用されてきた。

国際仲裁は裁判と比べて、外国での執行が容易であること、非公開であり企業秘密が守られること、専門的・中立的な仲裁人を当事者が選ぶことができること、一般的に上訴がないため迅速に紛争解決が図られることなど、さまざまなメリットがある。

日本における国際仲裁の活性化の取組

日本においても、アジア随一の紛争解決拠点となることを目指すべく、2018年4月には国際仲裁活性化に向けた施策が政府において示された。これを踏まえ、法務省は、一般社団法人日本国際紛争解決センター(JIDRC)に委託して日本における国際仲裁の基盤整備に向けた調査事業を開始した。一般社団法人日本商事仲裁協会(JCAA)、公益社団法人日本仲裁人協会(JAA)などの仲裁振興活動を行う民間団体とも連携して、官民が連携して人材育成や国際仲裁制度の普及事業を進める一方、2023年4月には仲裁法の一部を改正して日本の仲裁手続法を最新の国際スタンダードに準拠させるなど、法整備にも取り組んでいる。もっとも、現時点ではまだまだその認知度は高まっていないため、各種研修・セミナーの実施やSNSを活用した広報等を通じて、国内の企業等に国際仲裁の有用性を理解していただくとともに、海外の企業等に仲裁地としての日本の魅力を知っていただけるよう、普及・啓発活動にも取り組んでいるところである。

例えば、同年7月に開催されたG7司法大臣会合を始めとする司法外交閣僚フォーラム*では、開催記念特別イベントとして、「国際仲裁・国際調停の未来と司法制度」をテーマに、裁判官、仲裁人、研究者らによる講演とパネルディスカッションを行った。また、国際仲裁の仲裁地としての日本の魅力を伝える展示も行い、JCAAによる仲裁の実績や、官民を挙げた基盤整備の取組について紹介した。

国際仲裁の仲裁地としての日本の魅力を伝える展示

国際的なビジネス紛争解決の新たな選択肢

では、国際仲裁を行うためには、どうすればよいのであろうか。国際仲裁を利用するためには、まずもって当事者間の合意(仲裁合意)が必要であり、それを「仲裁条項」として契約書に規定することが必要である。仲裁条項においては、仲裁を主催する「仲裁機関」や「仲裁地」を選択することになる。「仲裁機関」は、世界にあまた存在しているが、例えば、日本に拠点を置く商事仲裁機関であれば、先ほど述べたJCAAが代表的である。JCAAは70年以上、国際ビジネス紛争を継続的に取り扱っており、同機関でのJCAA仲裁を選択した場合でも多様な国籍からなる著名な仲裁人を選任でき、オンラインも活用したその迅速柔軟な手続や事務局のきめ細かいサポートが期待できる。

また、パリに本部を置く世界的に著名な仲裁機関である国際仲裁裁判所(ICC International Court of Arbitration)も、仲裁地を日本とした国際仲裁の実績を多数有している。なお、実際に仲裁が行われるプロセスの詳細については、各仲裁機関のホームページを参照いただきたい(別掲2:仲裁手続の流れ等について)。

本記事をご覧頂き少しでも興味が沸いた読者の方には、ぜひ別掲のウェブページを確認いただき、国際的なビジネス紛争の解決の選択肢として我が国における国際仲裁の活用をご検討いただきたい。

1. 多様な国内外の専門家を仲裁人に選べます
2. スピーディーに解決します
3. オンライン技術をフル活用しています

参考となる政府、関係機関のURL

1)政府の行っている施策全般について
https://www.moj.go.jp/kokusai/kokusai03_00003.html
https://www.meti.go.jp/policy/external_economy/toshi/kokusai_chusai/chusai.html

2)仲裁手続の流れ等について
仲裁手続の流れについては、各仲裁機関のホームページで確認することができる。
https://www.jcaa.or.jp/arbitration/flow.html
https://iccwbo.org/

3)仲裁振興活動・仲裁施設の紹介
JAAは、仲裁及び調停等に関連する人材養成等を行っている。また、JIDRCは、仲裁審問施設の紹介を行っている。
https://arbitrators.jp/
https://idrc.jp/


* 「HIGHLIGHTING Japan」2023年6月号「『司法外交』閣僚フォーラムの開催」参照