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August 2023

エコ/安心・安全/地産地消を具現する人と自然にやさしいクレヨン

  • お米と野菜から生まれた「おやさいクレヨン」
  • クレヨンの原料となる野菜
  • お米の油を主原料とした色鮮やかな「おこめのクレヨン」
  • 本物の花の色で描く植物性のクレヨン「おはなのクレヨン」
  • mizuiro株式会社の開発したクレヨンで描く子どもたち
お米と野菜から生まれた「おやさいクレヨン」

安心・安全にこだわるというコンセプトのもと、万が一口に入れてしまっても大丈夫な米油や野菜、果物などを主原料とする「おやさいクレヨン」。独特のやさしい色合いを持つクレヨンは、2022年度科学技術分野の文部科学大臣表彰 科学技術賞*を受賞した。

「おやさいクレヨン」は、米油や野菜、果物などを原材料とし、市場に流れない規格外品や捨てられる端材をできる限り活用することでフードロスの削減に寄与する製品だ。例えば「きゃべつ」色は、これまで土に残して堆肥にされたり廃棄されたりしていた一番外側の葉を使用。「りんご」色はりんごドライチップスの加工後に残るりんごの皮を使っており、それぞれ生産農家が集めてくれたものを原材料として生まれ変わらせている。「おやさいクレヨン」のベースとなっているのは、今まで廃棄されてきた米ぬか**から採った液体状の米油と固形のライスワックス。これまでのクレヨンと違い、ほぼすべてが自然由来の原材料でつくられている。

クレヨンの原料となる野菜

開発を手掛けたのは、青森県青森市に本社のあるmizuiro株式会社の代表取締役・木村尚子さん。「一人娘のために子どもが口に入れてしまっても安全・安心な素材でクレヨンをつくりたい」「材料を地元の青森県で採れる自然由来のものでまかないたい」という思いから、「おやさいクレヨン」が生まれた。

2014年の誕生以来、他社ブランドの製品を製造するOEM(Original Equipment Manufacturer)も手掛けており、各メーカーのナショナル・ブランドや、大手卸・小売チェーンが開発するプライベート・ブランドなどを累計すると、2023年7月現在で約数十色を展開する。それぞれの色は、「キャベツ」や「にんじん」、「ねぎ」といった名前で呼ばれている。クレヨンを使うと、素材が持つなじみのある香りがほのかに立ち上がるのが特長だ。使われている野菜や果物の大半は、青森県内でつくられたもの。青森県が日本の生産量の多くのシェアを占める「りんご」や「カシス」を用いているのは地産地消に貢献し、物流コストの低減や地元の中での循環を図ることで持続可能性に配慮したためだ。

お米の油を主原料とした色鮮やかな「おこめのクレヨン」

口に入っても安全なクレヨンというコンセプトで発売直後から反響を呼んだ「おやさいクレヨン」だが、その開発は試行錯誤の連続だった。市販の蝋に細かく刻んだ野菜を乾燥させて混ぜたところ、発色や硬さが十分でなく、手に取った時のべたつきも残った。そこで、愛知県名古屋市の老舗クレヨン工房である、株式会社東一(とういち)文具工業所に協力を依頼。一つひとつ職人の手でつくる手動成型によって、機械では使用が難しい原料を使うことができ、また、じっくり時間をかけて冷却することによって、力を込めても折れない硬さとべたつかない手触り、発色を兼ね備えたクレヨンができあがった。

本物の花の色で描く植物性のクレヨン「おはなのクレヨン」

「おやさいクレヨン」は、世界で一番厳しいといわれる欧州規格の玩具の安全性検査を2014年にクリア***。販路は国内から世界へと広がっている。さらには姉妹品として、お米の油を主原料に、万が一口に入れても安全な顔料で着色することで、「おやさいクレヨン」では表現しきれない鮮やかな発色を実現した「おこめのクレヨン」や、本物の花を用いて色味を出した「おはなのクレヨン」も製品化。他社からのコラボのリクエストも後を絶たない。

今後の事業展望を木村さんは次のように語る。

「『おやさいクレヨン』に代表されるように、私たちが提案するのは、地域に眠る未利用資源の活用法を考え、再利用も視野に入れた製品です。人と自然に優しい安心安全な製品によって、私たちはサスティナブルで豊かなライフスタイルとデザインを提案し続けていきます。」

mizuiro株式会社の開発したクレヨンで描く子どもたち

* 文部科学省が科学技術に関する研究開発、理解増進等において顕著な成果を収めた者に贈る賞。
** 米は、4層の構造からなる。収穫した米から籾殻(もみがら)を取り除くと玄米となり、玄米を削って(精米)糠層と胚芽を除いたものが白米。その糠層や胚芽を米ぬかと呼ぶ。玄米の約10%程度が米ぬかになるとされる。
*** 欧州規格の玩具の安全性「EN71-3:2013 (Safety of toys Part 3 2013)」のこと。欧州規格の玩具の安全性「EN71-3:2013 (Safety of toys Part 3 2013)」の改正に伴い改定された基準で2013年7月20日から運用を開始。