1ヤングケアラーとは?
こどもが家事や家族の世話をすることは、「お手伝い」の一環であればごく普通のことと思われるかもしれません。しかし、ヤングケアラーが担っている家事や家族の世話は、お手伝いとしてこどもが行うものとは異なり、本来大人が担うと想定されている家事や家族の世話などを日常的に行うなど、その責任や負担が重いものです。それによってこども自身がやりたいことができないなど、学業や友人関係などに影響が出てしまうこともあります。
ヤングケアラーが行っている家事や家族の世話は多岐にわたりますが、一般に多いのは、食事の準備や掃除、洗濯といった家事、見守り、きょうだいの世話、目の離せない家族の励ましなどの感情面のサポートなどです。
障害や病気のある家族に代わり、買い物・料理・掃除・洗濯などの家事をしているこども
家族に代わり、幼いきょうだいの世話をしているこども
障害や病気のあるきょうだいの世話や見守りをしているこども
令和2年度(2020年度)と令和3年度(2021年度)のヤングケアラーの実態調査によると、世話をしている家族が「いる」と回答したのは小学6年生で6.5%、中学2年生で5.7%、全日制高校2年生で4.1%、定時制高校2年生相当で8.5%、通信制高校生で11.0%、大学3年生で6.2%でした。
【グラフ1】年代別の世話をしている家族の有無
資料:厚生労働省「ヤングケアラーの実態に関する調査研究」(令和3年3月、令和4年3月)」より政府広報室作成
- 令和3年3月調査では中学2年生・高校2年生・定時制高校2年生相当・通信制高校生を、令和4年3月調査では小学6年生・大学3年生を対象として調査が行われている。
- 四捨五入のため合計が100%にならない場合がある。
世話をしている家族が「いる」と回答した人に、その頻度について質問したところ、いずれの年代でも「ほぼ毎日」が最も高く、小学6年生と通信制高校生では半数以上が「ほぼ毎日」世話をしているという結果になっています。
【グラフ2】年代別の家族の世話をしている頻度
資料:厚生労働省 「ヤングケアラーの実態に関する調査研究(令和3年3月、令和4年3月)」より政府広報室作成
世話をしている家族が「いる」と回答した人に、平日1日当たり、世話に費やす時間についても質問したところ、年代ごとにバラつきがありますが、「7時間以上」世話に費やしている人が通信制高校生では24.5%、中学2年生では11.6%という結果になっています。
【グラフ3】年代別の平均1日当たり世話に費やす時間
資料:厚生労働省「ヤングケアラーの実態に関する調査研究(令和3年3月、令和4年3月)」より政府広報室作成
2ヤングケアラーが直面する問題
こどもが家事や家族のケアをすること自体は、悪いことではありません。虐待と絡むようなやむを得ない場合を除き、ヤングケアラーであることがマイナスなことばかりではない面もあります。例えば、家事や家族の世話などを若い頃に担った経験をその後の人生でいかすことができている、と話す元ヤングケアラーがいることも事実です。
しかし、もしもケアに携わるこどもが、自分の時間が取れない、勉強する時間が十分に取れない、ケアについて相談できる人がいなくて孤独を感じる、ストレスを感じる、友人と遊ぶことができない、睡眠が十分に取れないと感じているなどの場合、それはこどもの権利が守られていない状態の可能性があります。中には、そうした影響を感じながらも自分がヤングケアラーであることに気付いていなかったり、「家族のことは家族でなんとかしなければ」という思いで頑張るあまり、一人で悩みを抱えてしまったりする人がいます。そこで国・地方自治体や民間団体において、ヤングケアラーのこどもたちの声を聞き、一人にしない取組が始まっています。
3ヤングケアラー支援に向けた国や地方自治体の取組
ヤングケアラーは、家庭内のデリケートな問題であることなどから表面化しにくいといわれます。そのため福祉、介護、医療、学校など、関係機関におけるヤングケアラーに関する研修や、地方自治体での現状把握が必ずしも十分でない状況にあると考えられています。
したがって現在はまず、ヤングケアラーの社会的認知度の向上を図るほか、現状の把握、そして適切な支援につなぐための窓口の明確化などが進められています。それらの取組の一部を紹介します。
早期発見・把握の取組
ヤングケアラーを早期に発見して適切な支援につなげるため、福祉、介護、医療、教育などの関係機関が連携し、専門職やボランティアなどへのヤングケアラーに関する研修の機会の提供、そして地方自治体における現状把握が推進されています。
悩み相談、多機関連携、教育現場などへの支援策の推進
支援者団体によるピアサポートなどの悩み相談や、医療や学校などの多機関が連携することによる支援が進められています。
ヤングケアラーの支援窓口開設の事例
京都府では、「京都府ヤングケアラー総合支援センター」を開設しています。平日だけでなく土曜日も相談を受け付け、ヤングケアラー、元ヤングケアラー、ヤングケアラーの家族など誰でも相談できる体制にしています。またヤングケアラーや元ヤングケアラー同士が悩みや経験を共有できる場として「いろはのなかまたち」と呼ばれるオンラインコミュニティーも月に1回開催をしています(対面参加も可)。
福岡県福岡市では「ヤングケアラー相談窓口」を設けているほか、18歳未満のヤングケアラーがいる家庭にヘルパーを派遣し、家事・育児支援などを行う「福岡市ヤングケアラー支援ヘルパー事業」も実施しています。
SNSを使った相談窓口の事例
埼玉県では、ヤングケアラーが元ヤングケアラーに日常の悩みを相談したり、話を聞いてもらえたりする場所として、LINE相談窓口「埼玉県ヤングケアラーチャンネル」を開設しています。対象は埼玉県内のヤングケアラー及びその保護者、そして「自分がヤングケアラーなのかどうか分からない」という人など。ケアのこと、家族のこと、学校や進学のことから日常の悩みまで、慣れ親しんだLINEで気軽に、無料で相談ができるため、利用者は増えています。
社会的認知度の向上
令和4年度(2022年度)から令和6年度(2024年度)までの3年間を、「ヤングケアラー認知度向上の集中取組期間」とし、ポスター、リーフレットや動画の作成、オンラインイベントの開催などを通じて、最終的に中高生の5割がヤングケアラーを認知することを目指します。