知っていますか?無戸籍を解消するための新しいルール

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ラジオ番組「杉浦太陽・村上佳菜子「日曜まなびより」」

今回のテーマは、「知っていますか?無戸籍を解消するための新しいルール」。こどもが生まれたら出生届の提出が義務付けられていますが、なかには、様々な事情から手続きをされないかたがいます。その結果うまれる“無戸籍者”を解消するために、令和4年(2022年)に民法が改正され、令和6年(2024年)4月に施行されました。
“生まれた子の父親が誰かの推定”や“父と子の関係を否定する訴えの申立て”など、改正のポイントを学んでいきます。今なら令和6年(2024年)4月よりも前に生まれた子についても適用されます!令和7年(2025年)3月末までの期限がありますので、是非お手続きを。相談窓口もご紹介します。

杉浦太陽さん、村上佳菜子さん、法務省ゲストの3人が、「嫡出推定制度が新しくなりました」のポスターを紹介。
ゲスト

法務省 民事局
齊藤 恒久

ストリーミング(音声で聴く)

放送日
令和6年(2024年)4月28日
再生時間
17分51秒
配信終了予定日
令和7年(2025年)4月27日

文字で読む

杉浦
佳菜子ちゃんは、結婚されたばかりだよね。
村上
はい。3月15日が、一粒万倍日など2024年の中でも縁起のいいことが重なる一番いい日と言われていたので、その日に婚姻届を出しに行きました。
杉浦
やっぱり縁起のいい日に出したいよね。分かるよ。その婚姻届、提出するとその後どうなるか知っていますか?佳菜子ちゃんが婚姻届を提出すると、佳菜子ちゃんは、親御さんの戸籍から除かれて、佳菜子ちゃん夫婦の戸籍が新たに作られるんです。そして、お子さんが生まれたら出生届を出します。そうすると、佳菜子ちゃん夫婦の戸籍に入る形でお子さんの戸籍が作られます。そして、またそのお子さんが結婚すると、佳菜子ちゃん夫婦の戸籍からお子さんが除かれて、お子さん夫婦の戸籍がまた新たに作られると。代々、めぐってね。
村上
さすが、「結婚」の先輩は詳しいですね。婚姻届や出生届を提出することは知ってますけど、その先のことまで考えたことあまりなかったです。そもそも、戸籍って当たり前のようにありますけどなんのためにあるんですかね?
杉浦
なんのため、そこのところ「もっと知りたい!」ですか?では、さっそく今日の講師に伺っていきましょう。法務省民事局の齊藤 恒久さんです。
村上
齊藤さん、そもそもですが、戸籍って一体なんですか?
齊藤
戸籍とは、人がいつ誰の子として生まれて、いつ誰と結婚し、いつ亡くなったかなどの身分関係を登録し、その人が日本人であることを公的に証明する唯一の物です。住民票など様々な行政手続は、原則としてこれに基づいて行われます。赤ちゃんの予防接種や乳幼児検診のお知らせ、小学校・中学校への入学の通知、こうしたものは戸籍に基づいてその保護者へ送られるんです。
杉浦
戸籍がないとパスポートも作れないんですよね。
齊藤
はい。戸籍がないと日本人であることを証明できませんから、原則として、パスポートを作ることはできません。また、資格取得の際も、一部の資格を取得しようとする時に戸籍証明書の提出を求められることがありますし、親の遺産を相続するときは、親子の証明を求められます。戸籍がないとこうした求めに応じられず、希望する資格を取得できない場合や、相続できない場合があります。
村上
めちゃくちゃデメリットがあるんですね。
齊藤
はい。しかしながら、日本にはこの戸籍がないかたは、法務省が把握しているだけで、おおよそ800名ほどいらっしゃいます。
村上
そんなに!なぜ戸籍がないんですか?
齊藤
戸籍に関する法律では、こどもが生まれると、出生の届出をすることが義務付けられています。しかし、何らかの理由により、手続きをしないかたがいるため、戸籍に記載されないこども、いわゆる無戸籍者が存在してしまうんです。
村上
何らかの理由って、例えば、どんなことがあるんですか?
齊藤
それは、これまでの民法の規定が原因の一つと言われていました。ちょっとややこしいので、まずは、これまでの民法についてゆっくり説明します。民法には、こどもが生まれた時期によって、誰が父親かを推定する規定があります。これまでの民法では、役所で婚姻届が受理された日から200日より後に生まれた子は、その婚姻による夫の子と推定され、その夫婦の戸籍に入ることとなっていました。また、離婚などにより婚姻を解消した場合、離婚届が受理された日から300日以内に生まれた子は、離婚する前の夫の子と推定されます。そのため、戸籍には前の夫が父親として記載されることになっていました。
杉浦
つまり、結婚した日から200日以内に生まれた子は、結婚するより前にできた可能性があるため、今の夫の子とは推定されず、離婚後300日以内に生まれた子は、前に結婚していた間にできた可能性が高いということで、離婚前の夫の子と推定するということですね。
村上
へ~、そういう規定があったんですね。
齊藤
はい。子の父が確定すると、子は、例えば、父に対して養育費の支払いを求めることができますし、父の相続人になることもできます。この規定は、生まれたお子さんの父が誰であるかを法律上早く確定させ、子の利益を図るためのものなんです。ところが、この規定により、出生届を“出せない”“出したくない”女性が一定数、存在していると言われていたんです。
村上
どうして“出したくない”って思っちゃうんですかね?
杉浦
それは、この離婚後の300日ルールが関係しているんですよね、齊藤さん。
齊藤
はい。これまでの民法では、先ほどもご説明したとおり、離婚して300日以内に生まれたこどもは、前の夫の子と推定され、戸籍には前の夫が父親として記載されることになります。もっとも、離婚するまでの経緯は人それぞれです。例えば夫の暴力、いわゆるDVから逃れるために、長らく別居してから離婚するようなケースもあるかもしれません。そのような場合、その別居中に新しいパートナーとの間に身ごもったお子さんが、離婚成立から300日以内に生まれると、その子は、前の夫が父親であると戸籍に記載されることになってしまいます。このようなときに、出生届の提出をためらってしまうということです。
村上
そういう背景があるんですね。しかも、離婚がスムーズにできないケースは、DVだけじゃないと思うので、出生届を出せずに悩んでいるかたは、私が想像するよりも多いかもしれないですね。
杉浦
そうだよね。お子さんの利益を図るために作られたルールなんだけど、それが逆に足かせになってしまっているかたがいるということですよね。
齊藤
はい。そのため、2022年12月に民法の一部が改正され、誰が父親かを決めるためのルールが見直されたんです。
杉浦
民法の一部が改正され、親子関係に関するルールが見直されたということで、ここからは改正ポイントを二つに絞って学んでいきます。まず一つは、先ほどから話題になっている、生まれたお子さんについて誰が父親かを推定する規定の見直しです。どのように見直されたんでしょうか?
齊藤
はい。これまでの民法では、婚姻届が受理された日から200日経った後に生まれた子でないと、その婚姻における夫の子と推定されませんでした。つまり200日以内に生まれた子は、その夫の子とは推定されなかったんです。しかし、今回の改正により、婚姻届が受理された日から200日以内に生まれた子であっても、その婚姻における夫の子と推定されることになりました。
村上
200日以内に生まれた子も、夫の子と推定されることになったんですね。では、離婚後、300日以内に生まれたこどもは?そちらの規定は見直されましたか?
齊藤
離婚後300日以内に生まれた子は、前の夫の子とするというルール自体は、こどもの利益を図るために必要ですから、変わりがありません。ただし、離婚後300日以内に生まれた場合であっても、母親が再婚した後に生まれた子については、再婚後の夫の子と推定されることになりました。
村上
よかった。これで出生届の提出をためらうことがなくなるといいですね。ただ、再婚していない場合は、前の夫の子になるということですよね?そこはまだ、ちょっと悩ましいですね。やっと離婚できたとしても、再婚しない限りは前の夫の子って、ちょっと嫌ですよね。
齊藤
そうですよね。そのような場合には、裁判所での手続きを通じて父と子の関係を否定する、つまり、「この子の父親ではない」と申し立てることができます。ただし、これまでの民法では、そのような申立てができるのは夫側からだけでした。そのため、母親は離婚した元夫に「自分はこの子の父親ではない」という申立てを裁判所にしてほしいと頼まなければならなかったんです。
村上
それはちょっと無理がありますよね。夫の暴力による離婚だった場合、二度と会いたくないと思っているでしょうし。
齊藤
そうですね。また、離婚に至る経緯も人それぞれですので、仮に依頼できたとしても、夫が「忙しい」「めんどくさい」などと協力的でない場合もあり、この制度は利用しにくいとの指摘もあったんです。そのため、今回はこの規定も見直され、父だけでなく、母やそのこどもも、父と子の関係を否定する訴えを裁判所に申し立てることができるようになりました。
村上
よかったです!
杉浦
そうすれば、離婚後300日以内に生まれたお子さんで、前の夫の子でない場合でも、こどもが前の夫の子として扱われてしまうことが避けられますよね。そして、前の夫の子として扱われることを避けるために出生届が出されておらず、結果、無戸籍となってしまっていた、そういった方々を減らすことができますね。
齊藤
はい。ただし、この規定が適用されるのは、原則として今年の4月1日以降に生まれた子です。それより前に生まれた子には、改正前の規定が適用されます。
村上
え?でも、今、戸籍が作れずに困っているかたがいるんですよね?
齊藤
はい。そのため、法律が改正される前から存在している無戸籍者のかたのために、今年の4月1日より前に生まれたお子さんやその母であっても、今年の4月1日から1年間に限り、父と子の関係を否定する訴えを裁判所に申し立てることができることになっています。
杉浦
ここはポイントですよね。今年の4月1日以降に生まれたお子さんや、そのお母さんの場合、父と子の関係を否定する訴えの期限は出生から3年間。でも、今現在、無戸籍で生きづらい思いをしているお子さんやそのお母さんの場合は、来年の3月31日までの間に父と子の関係を否定する手続をする必要があるんですね。
村上
期間限定ってことですね。でも、そうすれば戸籍を持つことができる可能性があるんですよね。これは今すぐにでも動き出してほしいですね。ただ、法律が関わることだから、何から始めればいいのか戸惑ってしまうかたも多いんじゃないですか?
齊藤
はい。まず、出生届のことで悩んでいたり、戸籍がなく生きづらい思いをしているかたは、どうか無戸籍相談窓口や、最寄りの法務局などにご相談ください。法務局では、無戸籍のかたに寄り添った支援をしています。連絡先は法務省の「無戸籍でお困りのかたへ」のサイトでご案内しています。そして、もし友人や知人に出生届や戸籍のことで困っている人がいれば、今日の内容を是非教えてあげてください。
村上
私が今日特に注目したのは「期間限定」というところです。今年の4月1日よりも前に生まれて、無戸籍で悩んでいるかたは、来年、2025年3月31日までに裁判所で手続きすることができます。ここがポイントだと思います。
杉浦
今回は理解が難しかったので、詳しく知りたいかたは無戸籍相談窓口や最寄りの法務局へ相談してみてください。やっぱり相談が一番ですからね。

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