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Highlighting JAPAN

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特集世界に広げる「ライフ・イノベーション」

仙台フィンランド健康福祉センター(仮訳)

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他国と連携したライフ・イノベーションの取組も進められている。仙台市とフィンランド政府の共同プロジェクトである「仙台フィンランド健康福祉センター(S-FWBC)」では、高齢者に理想的なサービスや機器の研究開発を産学官連携で行っている。エームス・パムロイが、同センター研究開発館ディレクターのユハ・テペリ博士に話を聞いた。

──このプロジェクトにおける仙台市とフィンランドの協力関係はどのようにして始まったのですか?

ユハ・テペリ博士:1997年に、その当時のフィンランド大統領と日本の首相が会談し、互いに大規模かつ急速に高齢化が進む国として、何らか一致協力して取り組むべきであるという合意に至りました。そして、日本とフィンランドの政府間の協議によりプロジェクト拠点として、いくつかの立候補地の中から、仙台市が選定され、2005年にセンターが設立されました。

仙台が選定された理由の一つは、仙台には、例えば東北大学、東北大学病院、東北福祉大学など優れた大学・研究機関が数多くあることです。フィンランド側は、これらを、利益を生み出すビジネス基盤であると考えています。さらに、仙台は、1年を通して過ごしやすく、自然も豊かというフィンランドと共通する気候や環境を持つ地域でもあります。そうしたことも、製品やサービスの開発には重要です。

  ──仙台フィンランド健康福祉センターの施設についてお教え下さい。

センターには研究開発館があります。研究開発館には、これまで様々な日本とフィンランドの大学、中小企業、NPOが入居し、研究開発を行っています。また、研究開発館に隣接して特別養護老人ホームがあります。2004年に開館したこの老人ホームは120床のベッド数を備えており、毎日40人から50人ほどの外来訪問者があります。研究開発館と老人ホームとは協力関係があり、研究開発館で開発した機器を、老人ホームで使用し、実際の使い勝手を調査するということも行われています。

──仙台フィンランド健康福祉センターでの研究開発により、どのような製品が実用化しているでしょうか?

これまで、日本とフィンランドの企業や大学がこのセンターで共同開発した製品が日本やヨーロッパで販売されています。例えば、歯外科手術後用コンピューターデータベース・ソフトウェアです。大がかりな歯の手術の後には、表情だけでなくあごや口の動きにさまざまな変化が現れます。このデータベース・ソフトウェアは、そうした変化を手術前にシミュレーションするために使われています。シミュレーションに基づき、手術前に、影響の少ない手術方法を選択することが可能になりました。

健康や福祉に関する製品だけではなく、サービスの開発もセンターで行われています。例えば、「ノルディックウォーキングの普及」です。ノルディックウォーキングは、スキー板を足に着けずにストックだけを使って歩くようなものだと考えてください。フィンランド生まれの、非常に健康によいスポーツです。高齢者にとっても、基礎体力や運動意欲の向上といった効果があります。センターは、このノルディックウォーキングの普及を、東北福祉大学と仙台市と協力して、取り組んでいます。2007年には、研究開発館に日本ノルディック・フィットネス協会が設置されました。現在では、日本でおよそ100の団体会員を有しています。

──今後に向けて、取り組んでいることはありますか?

現在、このセンターは第二次5ヵ年協定の三年目に入っていますが、センターとして提供できることはまだまだ沢山あります。今後、例えば、センサーやカメラによって人の言葉や動きに反応し、高齢者の癒しに役立つ「ソーシャルロボット」、ゲームのソフトウェアを使って認知症治療に役立てる「学習療法」などの開発を進めたいと考えています。

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