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Highlighting JAPAN

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日・ASEAN友好協力40周年

政策研究大学院大学 白石学長インタビュー 



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日本とASEANが対等なパートナーとして新しい歴史を刻むには、時代の変化を見据えた新たな関係性を築いていくことが重要な鍵となる。日本とASEANが共に成長していくために、今、日本に求められていることは何だろうか。アジアの政治、政治史、国際関係における第一人者であり政策研究大学大学院の白石隆学長に、日本とASEANが歩んできた歴史とともに、さらなる関係強化に向けて日本が力を入れて取り組むべきことについてお話をお伺いした。

白石氏は日本とASEANの関係は日本にとって、日米関係に次いで重要だと言う。

1977年、当時の福田赳夫総理は、日・ASEAN関係の基盤として、心の通う対話を推進する、いわゆる福田ドクトリンを示した。この福田ドクトリンは、現在でも重要な位置を占めており、今年1月に安倍総理がASEANとの外交関係において、今後も福田ドクトリンを継承するとの声明を発表している。

1990年代には、大きな変化がいくつかあったと白石氏は述べる。一つ目は、ベトナムのカンボジア撤退とカンボジア和平であった。このとき日本はカンボジアで戦後初めて国際平和維持活動を行った。二つ目は、当時6ヵ国であったASEANへのインドシナ諸国の加盟を日本が支援したこと。三つ目は、タイ、インドネシア、マレーシア各国に重大な影響を与えた1997~98年にかけての経済危機である。実現はしなかったものの、この壊滅的状況に呼応して、通貨安定による東アジア経済の監視と経済危機支援のため、日本政府はアジア各国が拠出する基金であるアジア通貨基金を非公式に提案した。しかしながら、その後10年の歳月をかけ、事実上同じシステムの、今で言うチェンマイ・イニシアティブ(CMI)が設立された。これにより、この地域が二度と同じような経済危機が起こらないよう仕組みが作られたという。

今後10年、20年の日・ASEANの関係について白石氏に尋ねると、日本はこの10年、ASEANの安定はもちろん東アジアの安定にも貢献してきた。成長を遂げたASEANの経済規模は2030年までに日本とほぼ同等になるとのIMFの見通しもあると述べた上で、「ASEANは間違いなく強力な経済圏になる」と断言する。「日本とASEANの間で実施すべき重要な議論もいくつかあります。真っ先に取り組むべきは、ASEAN各国が、貿易自由化が進む中でどのようにしてそれぞれの国の発展を進めていくかという点です。次に、中間層の収入にある状態からどうやって一歩踏み出すかという点が挙げられます。アジアのさらなる繁栄と安定には、日本とASEANが共に協力していくことが重要な課題です」。

白石氏は、「今最も重要なのは、他の国と同様、ASEANから世界的に活躍できる人材をどんどん受け入れること。そのために日本は、日本語が堪能でない人であっても快適に過ごせる環境を創り出す努力をすべきです」と付け加えた。

さらに、「次に日本が行なうべきことは、ASEAN諸国同士の結束強化と、ASEANそれぞれの国のキャパシティを向上させるための協力に尽力すること。具体的には、経済協力の点でASEAN各国の経済的な協同、人材の開発、インフラ(社会基盤)の整備とレベルアップなどが挙げられます」と言う。

タイ、マレーシア、ベトナム、フィリピン、インドネシアで入国査証が免除または緩和となり、ASEAN諸国からの入国が明らかに増加している。そんな中、白石氏はこう予測する。「日本の企業が幹部職としてASEANをはじめとするアジア諸国の人材を採用し始めるでしょう。10年も経てば、日本企業の中から日本人以外の最高経営責任者が出ることも珍しくなくなるかもしれません。つまりそれは、日本企業にとって海外で成功するスタートにもなります」

「ASEAN諸国が成長する中で役割を果たし続けるには、人材を育てていくことがやはり日本にとって最も重要な目標となる」と白石氏は力強く語る。



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