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Highlighting JAPAN

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日・ASEAN友好協力40周年

ジャカルタ都市高速鉄道プロジェクト(仮訳)

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インドネシアは約18000島の島々からなるASEANの大国である。人口はASEAN最多の2億3000万人を超え、現在も増加傾向にある。特にASEAN本部のある首都ジャカルタは中心部に高層ビルが建ち並ぶ世界屈指のメガシティとして、多くの外国企業が進出している。工場立地のみならず、消費財市場としても注目され、アジアにおいて最も急速に成長している国の一つと言える。この経済成長著しいジャカルタにおいても、日本の経験と技術を最大限に活用し、経済連携を強化するプロジェクトが進められている。

日本とインドネシア間の合弁事業の際立った例として、ジャカルタでは現在インドネシア初の地下鉄システムの建設が始められている。ジャカルタではインドネシア初の地下鉄システムの建設が始められている。地下鉄システムの建設はジャカルタMRT(高速大量輸送)プロジェクトの中の最も難しい部分である。清水建設をリーダーとする共同企業体(清水・大林・ウィジャカリヤ・ジャヤコンJV)はジャカルタMRTの地下鉄部分の2工区を受注し、施工に着手した。このプロジェクトはジャカルタ特別州が保有するMRTジャカルタ社が発注者であり、JICA(日本国際協力機構)が資金協力している。

このプロジェクトの目的は、インドネシアの首都における重要課題の一つである交通渋滞問題を解消することである。

この新しいMRTには、最新のスマートな設計技術のみならず、ヒューマンエラーがあった場合でも事故を防止できる自動列車防護 (ATP) システム、ホームからの乗客の転落事故を防止するホームスクリーンドア (PSD)、最新の運行管理センター、自動改札、券売機、自動料金収受システム (AFC)、自然災害時の水没防止のための出入り口のステップアップなど、日本が提供できる最大限の技術を適用する予定である。ジャカルタでは、最も優れた地下鉄システムが日本の技術によって実現されるのである。

清水建設国際支店副支店長の北直紀氏に状況をお伺いした。

――プロジェクトではどのような最先端技術を適用する計画でしょうか?

第一に、ジャカルタの地下でトンネルを掘削する時の地表への影響をできる限り小さくしていくために、日本企業が得意としている泥土圧シールド工法を提案しています。

次に、地表の構造物への影響を考え、地下鉄駅の建設のため地表から20‐30mの深度まで掘らなければなりません。通常、地下深くまで掘る場合には土砂が崩れることを防ぐ土留め壁が必要になりますが、この土留め壁は仮設の壁であることが多いです。しかし本プロジェクトでは土留め壁がそのまま駅構造物の一部となります。土留め壁に重ねて壁を造らないため、時間とコストを削減する点においても本プロジェクト遂行にメリットがあります。

技術におけるもう一つの工夫は、地下に構築する床の施工方法です。通常の工法では、最深部まで開削してから、下から上方に向かって床を作っていきます。ところが本プロジェクトでは、上部から下へ向かって床を作っていく方法が取られています。出来上がった床は土留め壁の崩壊を防ぐための押さえにもなります。この後次の層の床まで掘削し、床を構築することを繰り返します。この工法により周辺地盤沈下をより小さく抑えることができ、ジャカルタのような都会での地下鉄駅建築作業における周辺構造物への影響を抑えることを期待できます。本プロジェクトを管理するためには、細部まで行き届いた工事管理とデータ解析が必要となります。日本が提供したこうした最先端技術は、コスト面や安全面でも高い価値を提供しました。

――プロジェクトに現地従業員を採用するためにどのような協調組織を作りましたか?

本プロジェクト参加条件の一つは、地元企業を使って建設工事を進めることです。これら地元企業にとってインドネシアでの地下鉄建設は初めての経験となるため、地下鉄建設に必要な技術を彼らに移転することが私たちの仕事の一つです。このプロジェクトは企業共同体で施工します。現地企業の自立が最終的な目的です。従ってこの企業体では、すべての企業体の構成企業が大きなファミリーの一員であると考えています。現地従業員への教育体制を整備し、特に安全面での教育を行いました。事故発生ゼロを目指し、作業における工程や手順を確立し、現地の建設作業員も日本人スタッフも同じようにそれらの遵守に細心の注意を払っています。なお、現地従業員との間には言語の問題もあるので、通訳の配置を行いました。日本企業が地元企業を請負業者として使ってプロジェクトを進める難しさはありますが、将来的には現地の建設会社自身がプロジェクト管理能力を持てるようになります。

――北さんご自身、この仕事に対して最も充実感を感じることは何ですか?

今回の地下鉄建設もそうですが、土木技術者の使命は必要な施設を提供することにより地元住民の方々の生活の改善を行うことであると思います。私はそれを達成した時に土木技術者になってよかったと感じます。たとえば、電気がなかったラオスの山間地で日本の援助により発電施設を建設したことがあります。この仕事が完成し、地元の子供たちのうれしそうな顔を見たときに大きな喜びと幸せを感じたことを忘れません。

ジャカルタ都市高速鉄道プロジェクトのようなこうした経済連携を強化することは、インドネシアのインフラ整備や技術力の向上につながる。つまり、日本の海外進出は日本のためだけではなく、ともに繁栄するアジアに向けての強力なパートナーシップをも生みだすこととなるのである。



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